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REトモコパラドクス  作者: 大橋むつお
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49『友子の夏休み 軽井沢・1』

RE・友子パラドクス


49『友子の夏休み 軽井沢・1』 





 駅の改札を出たとたんに少女たちは興奮した。なんたって、ここは軽井沢なのだ!



 友子のクラスメート王梨花の突然のメールで決まってしまった。梨花のお父さんは四代続いた華僑で、よく分からないが、大変なお金持ちなんだろうけど、そんな感じは普段ぜんぜんさせない本物のセレブ。


 そのお父さんが気を遣った提案をしてくれた。


「八月の半ばに、仕事仲間を連れて避暑にいくので、それまで別荘の掃除とかしてくれたら、食料付きで使ってもいいよ」


 娘が学校でうまく溶け込み始めているので、二学期を見据え、もっと友だちとの関係を良くしてやろうという親心であることは、解析しなくても友子には察せられた。見かけは十六歳の女子高生であるが、感性の奥には四十六歳のオバサンが潜んでいる。


 で、けっきょくクラスの仲良し女子、麻子、妙子、純子、そこに友子と紀香が加わった。紀香と妙子は演劇部員でもあるので、梨花のお父さんが趣味で敷地の中に作ったダンスのレッスン用の別棟を借りて、コンクール用のお芝居の稽古をするという、もっともらしい理由もねじこんである。




「うわー、山が近ーい!」




 麻子が無邪気に感動。妙子がその横に並んだ。


「あれは離山、向こうに見えるのがもっと大きくて浅間山」


 純子の父も軽井沢に別荘を持っているので、つい解説してしまう。家の事情があったとはいえ、引きこもっていたころの陰は微塵も無い。梨花は、それを後ろでニコニコ聞いている。人柄の良い子だ。


 紀香と友子は、駅前の国道26号線、すなわち旧中山道に気を取られた。


 明治に外国人達が、ここに別荘を構え始める前や後の土地の情報がいっぺんに飛び込んできた。中には皇女和宮が、十四代将軍家茂に嫁いだとき、ここを通ったときの覚悟や寂しさなども混じっていた。


「お気軽そうだけど、ここもいろいろあったところなんだよね……」


「ま、しばらくシャットダウンする、バカンスにならないものね」


 六人は、タクシー二台に分乗して別荘に向かった。




 気づくと、後ろからつかず離れずで、一台のワゴンが着いてきている。




「ちょっと後ろの車まきますね」


 運転手さんは気楽そうに言ったが、緊張はダイレクトに伝わってきた。


「竹内興産のセガレとその取り巻きですね」


 紀香が振り向きもせずに答えたので運転手さんはびっくりしていた。


「え、知っているの!?」


「ちょっと、そこの脇道に入ってもらえます?」


「え、この道は林への一本道で、行き止まりだよ」


「ちょうどいいわ」


 友子と紀香は平気な顔をしていたが、四人は顔色もなかった。


「大丈夫、同じ人間、コミニケーションすれば分かるわよ、ね?」




 タクシーを停めて、紀香は友子といっしょにワゴン車に近づいた。




「ちょっと秀哉くん。顔かしてくれないかなぁ(^▽^)」


 男達は、秀哉の名前を知っているので驚いたようだが、ニヤニヤ笑いながら、二人のあとを付いてくる。


――いい、ケガさせちゃだめよ――


――うん、ちょっと、あそこの神経刺激しておわりにしよう――




 そのあと、林の奥で男達の大笑いする声がしはじめた。


 ガハハハハꉂꉂ(ᵔᗜᵔ* ) ギャハハハꉂꉂ◟(˃᷄ꇴ˂᷅ ૂ๑) グハハハハꉂꉂ◟(˃᷄ꇴ˂᷅ ૂ๑) 




 気になった運転手さんたちが駆けつけると、男達は笑いながら地面をのたうち回っていた。


「ちょっとギャグが効き過ぎたみたい」


「もう、大丈夫だからいきましょう」




 その後、男達は、気絶するまで笑い続け、六人は無事に別荘に到着した……。




☆彡 主な登場人物


鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女

鈴木 一郎        友子の弟で父親

鈴木 春奈        一郎の妻

鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘

白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵

大佛  聡        クラスの委員長

王  梨香        クラスメート

長峰 純子        クラスメート

麻子           クラスメート

妙子           クラスメート 演劇部

水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル

滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

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