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REトモコパラドクス  作者: 大橋むつお
35/88

35・樹海戦争・2

RE・友子パラドクス


35『樹海戦争・2』 



 


 けして歴史には残らない樹海戦争が始まった……。




 セイ! 


 ジュワ!


 100体の栞が4体の友子に襲いかかった。瞬時に4体の友子はテレポートしようとしたが、4体目が間に合わず、スペシウムソードで真っ二つにされた。


 3体の友子は、すぐに義体を合成し30体に増殖。さらに放射状にテレポート、そこで20体の友子が倒されたが、義体は、さらに合成され、栞と同じ100体になった。


「どう、これで同じ数ね。栞の義体は合成に0・01秒、わたしより時間がかかる。これ以上義体を増やそうとしたら、その瞬間に100体のわたしに破壊されるわよ」


 2回のテレポートで、友子と栞は半径2キロの円の中に散らばってしまった。


「100体同士のタイマンね!」「受けて立つわ!」


 セイ! ズシ! ベシ! ブシュ! ギシ! ズビュン! ドゲシ! ズビ! ドシ! ビシ! バシ! ズビビ!


 最初の5分は友子が有利だった。スペシウム光線、スペシウムソードが、あちこちで閃き、火花を散らし、栞は80体に減った。


「力の差よ。このままでいくと、あと3分で栞は全滅するわ。もう、戦いは止めて話をしようよ。なにが、わたしたちを戦わせているか、互いが戦うことによって得をするのは誰か。こう見えても、お互い親子なんだからさ」


「喋りすぎたわね、お母さんの弱点が分かった」


「え……」


「お母さんの義体は自律していない。千分の一秒で、100体の義体とエンゲージし続けている。だから、お母さんの意識は、100体の義体にエンゲージするために、千分の一秒のタイムラグができる。それが弱点よ!」


 ビシュ!


 一体の友子の首が飛んだ。


「そうよ、栞は、それぞれが自律しているようだけど、スペックが違う!」


 ピッシャーーーー!!


 2体の栞が蒸発した。友子はスペシウム光線を破動砲に切り替えていた。


 それからは乱闘になった、あちこちで、母子の体が両断され、首が飛び、あるいは蒸発した。


「わかった、エンゲージの乱数!」


 栞は、仲間20体を犠牲にすることによって、友子のエンゲージ順の乱数を解析してしまった。


 あとは、早かった。


 ズシ! ベシ! ブシュ! ギシ! ズビュン! ドゲシ! ズビ! ドシ! ビシ! バシ! ズビビ!


 栞は残った義体全てで、エンゲージ順位の最後の友子を次々に倒していった。友子も死力を尽くしたが、最後は三対一で囲まれてしまった。


「チェックメイトよ、お母さん」


 背後の栞は、大胆にも友子にケーブルを伸ばしプラグインしてきた。


 カチ


「ウ……」


「これで、もうお母さんは指一本動かせないわ……捕獲して、最終処分は特務に任せる」


「……その仏心は……命取りに……」


「命令なの、最善の場合は捕獲して連行するようにって。悪いけど、わたしの電脳の支配に従ってもらうわ」




 ピューン




 一瞬、高圧電流が走ったような衝撃があって意識が飛んだ。




「わたしのスペックは、まだまだブラックボックスがあるのよ、ごめんね、栞……」


 栞はマネキンのようにフリーズしてしまった。


 前後の栞は、瞬間のうちに友子の義体に再合成されてしまった。


 栞の後ろの友子は、右手で栞の首を掴まえプラグインしていた。


「この状況を利用して敵討ちしに行こう。このままじゃ栞がかわいそう。わたしも平穏な高校生活を送りたいしね」


 一体の呟きに二体の友子が頷いた。


 はるか後年、樹海インシデントという不明事件にカテゴライズされる母子の戦いは、朱に染まった富士の樹海で幕を閉じた……。




☆彡 主な登場人物


鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女

鈴木 一郎        友子の弟で父親

鈴木 春奈        一郎の妻

鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘

白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵

大佛  聡        クラスの委員長

王  梨香        クラスメート

長峰 純子        クラスメート

麻子           クラスメート

妙子           クラスメート 演劇部

水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル

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