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REトモコパラドクス  作者: 大橋むつお
15/88

15『調子に乗り過ぎた』

RE・友子パラドクス


15『調子に乗り過ぎた』 






「いやあ、すみませーん。九州で事故っちゃって。とりあえず、あたしたちだけでも間に合わせました(^◇^;)」


 小野寺潤のスガタカタチでディレクターにあいさつする紀香。


「スタッフの人たちは、事故処理で、まだ宮崎です(^△^;)」


 矢頭萌に化けた友子もかました。




「よかったぁ! とにかく衣装つけてメイク。済んだら、すぐに舞台ソデ!」




 ディレクターと入れ違いに、総監督の服部八重がやってきた。


「心配したよ~(৹˃ᗝ˂৹)!」


 半泣きで二人をハグしたが2秒後には総監督の顔に戻って指示をする。


「10分はMCで持たしとくから、曲には遅れないでね。ヨロシク!!」


 まなじりあげて舞台に戻る八重。仲間への愛情とプロ根性がバランス良く同居している。さすがはAKRの総監督ではある。


 感心している間もあらばこそ、衣装さんが魔法のように二人を裸にして衣装をつけさせる。これに一分。


 すかさずメイクさんとヘアーメイクさんが取り付いた。普段なら、潤も萌もほとんど自分でやる。紀香と友子にも同じスキルがあるが、それではとても間に合わず。急いでプロがでっち上げる。これに五分、そして、6分30秒後には舞台に立っていた。


「すみませーん、ちょっと衣装破けちゃって、直してました~」


「ちょっと、最近食べ過ぎなのよ。サイズ合わなくなってきたんでしょ」


「そんなことありませ~ん。その証拠に体重計持ってきましたあ」


 萌(友子)が楽屋にあった体重計を舞台に置いた。


「ちょっと潤、乗ってみそ」


「はいはい……先週と同じ○○キロで~すv(´∀`)v」


 ピースサインの潤。


「ちょっとぉ、壊れてんじゃないの」


「じゃ、ヤエさん、乗ってみ」


「いいよ」


 ヤエが乗ると、なんと体重計は八十キロを指した。


「ええ、ウソでしょ!」


 観客席に笑いが満ちる。


 ヤエが乗ると同時に、潤と萌が、片脚を乗せて踏ん張っている。気づいていないのはヤエ一人。やがてそれに気づいて追っかけになるというアドリブをかまして、曲に入った。



《出撃 レイブン少女隊!》 


 GO A HED!  GO A HED! For The People! For The World! みんなのために!


 アフタースクール校舎の陰で、構えるスマホは正義のシルシ、#を押したらレイブンさ!


 世界中が見放した 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート!


 わたし達は ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊


 GO A HED!  GO A HED!  For The People!  For The World!  For The Love!


 ああ~ ああ~ レイブン レイブン レイブン少女隊……ただ今参上(^^ゞ!



 無事に最初の曲の一番を終わると、あとは、スムーズに流れた。


「ねえ、みんな今日の萌ちゃん、すごいんだよぉ。この子が歌もフリもノーミスでやったのはじめてだよ。これは記念になにかやらなきゃね」


 ヤエが、さっきの復讐。


「みんなで、萌を胴上げしよう!」


 あっと言う間に、みんなに胴上げされてしまう。


「イヤー、おパンツ見えちゃうよ!」


 そう叫びながら、萌は本物の萌が瀕死の重傷で意識が戻ったことに気づいた。


――やばいよ、紀香。二人宮崎で事故って、瀕死の重傷。まだ発見されてない―― 


――今すぐ行こう!――


「じゃ、あたしたちオフなんで、これでお疲れ様で~す」


「なによ、カラオケ付き合うっていったじゃんよ!」


「ワリーワリー(^_^;)」「また今度ね~(^。^;)」




 二人は屋上に上ると、ステンレスのダクトカバーを外して、ロケット状に加工して、屋上を飛び立った。


 ビューーーーーーン




 現場は空港に近道するための林道だった。


 潤と萌とスタッフの三人は、林道から落ちた谷川で横転した四駆の中にいた。三人ともあちこち骨折の重症、萌だけが意識があった。


 二人は天使の姿に擬態して、三人の怪我をチェックした。


「……天使さん?」


 苦しい息の下から、萌が声をかけた。


「そう、わたしがミカエル。あっちのヒネたのがガブリエル」


――友子、治せそう?――


――全員あちこち骨折。今からナノリペアー注入。萌ちゃんは、肋骨が折れて肺に刺さってる。しゃべらせないで――


 友子は、ハンドパワーで萌の肋骨を元に戻し、車のパーツでギブスを作り、三人にあてがった。


――どうする、今から救急車呼ぶ?――


――だめだよ、ライブにも出ちゃったし治療もしちゃったし――


 仕方なく、二人は車をソロリともとにもどし、ボディーを加工して上空の低温や、空気摩擦に絶えられるようにした。


「いくよ」


「うん」


 怪我人を後部座席に固定して、元四駆の車を空中に浮揚させると、亜音速で東京を目指した。



 当然、自衛隊やら米軍やらのレーダーに映り、自衛隊にはスクランブルまでかけられた。


 仕方なく海面スレスレまで降りてレーダーを躱したが、その分人目に触れて、あちこちで写真に撮られてしまった。


 ようやく相模湾上空でステルス化に成功。三人をそれぞれのマンションやら、アパートに運んだ。




「へえ、太平洋側のあちこちでUFO出現……それにしても妙なカタチだな。ねえ、ねえちゃん」


 妻の春奈がいないので、一郎は新聞を見ながら、やっと起きてきた姉に声をかけた。


「UFOはね、焼きそばもピンクレディーも苦労したらしいわよ……」


「なんだか、めずらしくくたびれてるね?」


「うん、ああ……明日から中間テストだからね……」


 そうごまかして、友子は自分の部屋に戻った。


 このあたりが限界なのか、力の配分なのか、身体にぜんぜん力が入らない。


 少し調子に乗り過ぎた。


 布団をかぶりながら、友子は自分の取説が欲しいと思った……。





☆彡 主な登場人物


鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女

鈴木 一郎        友子の弟で父親

鈴木 春奈        一郎の妻

白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵

大佛  聡        クラスの委員長

王  梨香        クラスメート

長峰 純子        クラスメート

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