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DIVINE

作者: あいみ


――青年よ、そなたはどこから来た。この村では見ない顔だ。

――特にそれほどまでに活きた眼はこの村の、いいやこの世界にはもう


――この砂の海に点々と存在する村を3つ越えてここまでやってきました

――あなたがいつもおっしゃっているという話を私にもどうかお聞かせ下さい。


――この余命幾何もない老人の言葉を笑わずに聞いてくれるというか


――もちろんです。そのためにここまで来ました。危険な砂漠を越えて…


=====================================


 信じられないだろうが、人類は日常的に空を飛んでいた。

もちろん翼が生えていたなどということではない。

「科学技術」の力で空を飛ぶ乗り物に乗っていたのだ。


空を飛び越え「宇宙」へと飛び出すものさえいた。

人はこの世界のどこへだって行けると謳われていた。

空を越えた宇宙と同じぐらい人びとの関心が集まっていたのは

「星の中心」だった。


そしてついに人類は星の中心へと到達した。

いや、到達してしまった。


「ヒト」だ。ひとりのヒトがいたのだ。

地球の中核の内部。空洞となったその場所にひとりのヒトが住んでいた。

無論人類ではないヒトと同じ形をした「何か別のモノ」だ。

こんな環境に人が裸で生きていられるわけがない。


女児にも男児にも見て取れる姿のヒトの発見は

それはもう世紀の大発見として世界に取りざたされた。

『神は地中に存在した』などとニュースが報じた。


『神』は地上に招待され丁重にもてなされた。

姿形こそ幼げだが、ただただ天使のように美しく。

だれよりも高い知能があった。

統一される前の言語を多数操り、

著名な科学者たちと対等に話すほどだった。


いや、おそらく『神』はそんなことは知っていた。

当たり前にだ。

まるで子どもが今日学校で学んできたことを

得意げに話すのを見守る親のように

ただ話のレベルを合わせていたのだと

今になっては思う。


世界を統べていた王が会いに来る頃には

ほとんどの人が『神』を『神』と疑わなくなっていた。


王もまたその存在を『神』とあがめ

丁重にもてなした。




しかし神は激怒した。

海は荒れ、山が火を噴き、雷鳴が鳴りやまない。

地獄のような夜が続いた。


科学が生み出した数々の兵器は何の役にも立たなかった。

たった1人に何十億の人類が殺されていった。

神に祈る者も、女子供さえ平等にあっけなく殺されていった。



どれくらい時が経っただろうか。

確認する術はもうなくなっていた。

数日のうちに、地上に栄えた人間の叡智の結晶たちは滅ぼされ、

明日の命さえ保障はなくなった。


死んでしまった方が楽だった。

そう嘆く者もいた。

実のところその通りだった。

人間はあまりに脆く弱く、苦しい日々が続いた。


『神』はもう姿を見せることはなかった。

なぜ神が怒り、地上を焼き払ったのかはわからない。

しかし、神と並び立ったかのように錯覚し、

驕り昂って生きていたことへの罰があたったのだと

私はそう思っている。


=====================================


――神……ですか


――信じられなくてもよい、しかし私は恐ろしいのだ

――そなたは砂の海を越えて来たと言ったな

――それは今まで誰も成し遂げられなかったことだ

――その人類の探求心がまた『神』の元までたどり着くことが……


【END】









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