産まれた子
プロットでございます。
相変わらず序章だけは書ける謎の技術です。
数々のモンスターが住む王国から離れた渓谷
そこに生活しているオーク族
今日そんな渓谷にて一つの産声が声を上げた。
「ふぎゃぁあ!ふぎゃぁあ!」
「……え?」
産まれてきた子に対し産婆は思わず驚愕の顔を表してしまう。
「産婆さん?」
周囲のお手伝いさんたちが様子のおかしい産婆を気にする。
「奥さんや、人間と会ったことは?」
出産中に聞かされた謎の質問に出産主の表情は曇っていく。
「え……無い……ですけど……」
出産の影響で途切れ途切れの回答になりながら返答しているとふと嫌な予感が出産主に宿る。
「え……?産婆さん……私の子に何か……?」
産婆は渋い表情をしながら更に出産主に聞く。
「赤ちゃん……見るかい?」
どんな姿でも私が産んだのだからそれは私の赤ちゃんで間違いはない。
そう心に決め静かに頷いた。
そして赤ちゃんの姿を見た瞬間表情が凍りついた。
「私も何十年と産婆をやったが、こんなことは初めてだよ……」
出産主が抱いた赤ちゃん、その姿はまるで人間そのものであった。
産んだ主はオークで産まれたのは人間、普通に考えて人間と会いそこで何かがあったとしか思えない。
「本当に……人間と会ってないんだね?」
産婆が更に問い詰めていく。
「もちろんです、産まれてこのかたこの里から出たことはありません」
「夫は?」
産婆は奥さんに原因が無いなら夫しかないと踏んで聞くが、その可能性も消えてしまう。
「私と同じく里から出たことはありません」
「産婆さん、これは一体?」
周囲のお手伝いさんたちが不安げに産婆に聞く。
すると産婆は呼吸を整え昔話を話始めた。
「一応話では聞いたことがあったんだが、本当に起きるとは……」
「何のことですか?」
「遺伝子の突然変異だよ」
「と、いうことは……」
「悪く言えば奇形児だね」
「き、奇形……」
その言葉に全員が固まる。
しかし産婆はそれでも話を進めていく。
「でも、歴史上オークから人間が産まれた例には悪いことは起こっていないのよ」
「と、いうと?」
「大昔に一度人間が産まれた時はモンスター族と人間の戦争があったときなんだけど、その時一番活躍したのがその突然変異で産まれた人間だったのよ」
「そんな昔話が……」
「私も初めて聞いたときは全く信じなかったわ、人間に一度も会わなかったオークに人間の子が産まれるなんてあり得ないからね」
昔のことを話終えた産婆は改めて出産主の傍らへと寄っていった。
「奥さん、この子、どうする?」
「どうする?って、どういうこと、ですか?」
「将来的に容姿の関係と種族の関係で孤立するかもしれない運命にある子だ、今この子を処理すれば……」
産婆の言葉を最後まで聞く前に出産主は返答をした。
「例え将来この子の身に何があろうとも私はこの子を守り抜きます。この子は私が産んだ紛れもない私の子なんですから」
産婆は出産主の力強い返答と目に育てる覚悟があることを悟った。
「そう、私も何かあったら精一杯お手伝いさせてもらうわ」
「ありがとう、ございます……」
産婆がお手伝いさんたちを帰らせた後再び出産主の元へ戻ると、微かに出産主のすすり泣きが聞こえてきた。
何と言って泣いているのかは分からなかったが、産婆は聞こうと思わなかった。
オークとはいえ一人になって初めて感情は表れるもの。
心の整理がつくまで産婆は赤ちゃんの幸せをずっと祈り続けた。
今後もまだまだ作品を増やしていきます(プロットですが)