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2話「出逢い」

 「は!」



 私が目を覚ますとそこは死後の世界だった。

 だって私は探検に出たのになんでベットで寝ているの?

 たぶん私は山道で足を踏み外して死んだらしい。

 怪我をしていたもの。最後に美味しい料理が食べたかった…

 ん?怪我?



「…そうだ!怪我っ!」



 おかしい…包帯が巻いてある。私は生きているらしい。


「ここは…」


 ここは観測基地だろうか?

 しかしさっき私が見た光景は明らかに観測基地などではなかった。


「幻覚だったのかな…」


 人間は極限状態に陥ると昔のことを思い出すという。しかし私はあの光景に見覚えはない。

 うーん…


 ガタ


「元気そうね。」


 !?


「きゃああああああああああああ!!!!」


「ちょっ」


「きゃあああああああああああ!!!」


「うるさーい!」


 ぎゅむう


「ん~~~~!」


 誰かが私の口をふさいだ。怖いよう!


「落ち着け」


「ん~~~~ん…?」



「深呼吸」


「ん~んん!!(塞がってて無理!!)」



「あ、ごめん」


 ぷふぅ


「すーーーーぅ…」



 解放されて深呼吸をする。


「…あの、あなたは?」


「その前に言うことあるんじゃない?」


「あ…助けてくれてありがとうございます?」


「なんで疑問形なのよ。まああんた勝手に倒れただけだから運んだだけよ」


「でも包帯が…」


「それはサービスよ。今度から有料だからね」


 彼女は『にっ』と笑った。

 素敵な笑顔だった。


「…そういえば…あなたは…?」


「名前?レンよ。って自分から名乗ってよ」


「ご…ごめん」


「シェリア、シェリア·アーケイです」


「しぇりあ・あーけい…珍しい名前ね…」


「レンさんの方が不思議です、レン…」


「あ、フルネームはイチマル・レンっていうわ」


「イチマル…聞いたことないです。」


「そうでしょうね。私もアーケイって生まれて初めて聞くわ」


「わりと多いんですけど…」


 アーケイはかなり多い家名だ。

 知らないはずはないんだけど。



「それに珍しい髪」


 レンさんが髪を触ってきた。少し恥ずかしい。

 そして私の髪をじーっと見ている。


「髪が水色って何?」


「えっ?」


 私からしたら黒色のレンさんの髪の方がずっと珍しいと思う。やっぱり死後の世界かな?


「私はあなたの様な髪の色を見たことないですよ」

「えっ!?その辺うろうろしてるわよ!?」


 あっ…そうだった!


「ここは一体?」


「病院よ?」


 病院…病院?


「いや…そうじゃなくって!」


「ん?」



「ここはどこですか?」



「ありゃ記憶喪失かしら?」


「ちがいますっ!!! ここは観測基地ですか?」



「何それ?あなたまだ混乱してるんじゃないの?というかどこから来たのよ」


「どこから?決まってるよ!ニオ・アスケイアですよ!」


「どこかできいたような…?どこの村だっけ…」


「ニオ・アスケイアは大都市です!わりと近いのに何で知らないの!?」


「近くってポートロイヤルとエイド村しか知らないわよ。あんまり他には行ったことないわ。遠いところから来たのね」


 私はやっぱり死後の世界にいるのではないだろうか?


「レンさん、この町の名前は何ですか?」


「ウラオモテ町よ」


「知らないよ。」


「えっ?わりと有名だと思ってた。ちょっとショック」


 初めて聞いたよ。オモテウラなんて…


「シェリアは家族と来たの?」


「違います…」


 あれ?おかしいな…涙が出てきた。


「えっと…大丈夫?」


「よくわかんない、私はを霧の下の大地を知るために探検に出たのに何で変な町にいるの?なんでここに人がいるの?」


 ああ駄目だ泣いてしまう…


 ぎゅ


 レンさんが抱きしめてきた。


「落ち着いてシェリア…きっと怖い思いをしたのね。でも大丈夫、私が一緒にいてあげるわ」


「レン…さん」


「レンでいいよ。私もシェリアって呼んでるもの」


「…レン…ありがとう」


「休んで怪我を癒しなさい」


「はい…」


「治ったら町を案内してあげるわ、何か食べるもの持ってきてあげる」


 レンはそういうと部屋から出て行った。


「ウラオモテ…」


 私は今いるこの聞き覚えのない町の名をつぶやいてみた。


「ここは死後の世界なのかな…夢の世界?それとも異世界なのかな…」


 レン…あの子はいったい…私たちとはずいぶんと違った容姿をしていた。黒い髪、黒い目

 でも優しかったな…お姉さんみたいだったな。

 彼女のぬくもりを思い出していたら少し泣いたことが恥ずかしくなってきた。


 ふと窓を見てみると建物が見えた。

 ここからは町が見えるようだ。


「えっ…」


 私は目が点になった。なぜなら町の向こうには『霧』があったからだ。


「やっぱりここは…」


 ここは私の世界だった。



------


 レンの世話になって傷も癒えてきた。

 浅い切り傷だったようで出血のわりには酷い怪我じゃなかったらしい。

 もうすぐ退院できるという事だ。

 ちなみにレンの作ってくれた料理は、具がいっぱい入った甘辛い味のスープだった。個人的にはアリ。

 作り方を訊かなくては!


 病院の職員とも顔を合わすことがあったけど、皆が黒髪だった。青い髪や緑の髪の人は見当たらない。

 みんな私の髪の色が綺麗綺麗と言ってくる。普通に恥ずかしい。

 医師は年配の男性の方だったが、若い職員の女性が代わりに私に怪我の説明をしてくれた。

 どういうことだろう?

 

 やることもなく、窓の外の町並みを見ているとレンがやってきた。


「こんにちは。もう怪我は大丈夫?」


「レン!うん!もうすぐ退院できるんだって!」


「そう、よかったわね…でも」


「でも?」


 何かあったのだろうか?


「シェリアお金持ってるの?」


 ガクっ、そんな事だったのか。


「あるよっ!!」

「ほんと?見せて」


「ほら!」

ジャーン!!!


ほとんどお母さんからの仕送りの所持金をレンに見せつけた。

私は研究員になってからのお給料はまだ銀行の中である

どうだ。結構あるだろう!


「あんた…」

「へ?」


「そのコイン何?」

「アスケイ鉄貨だけど?」


「んーと、その硬貨この町では使えないわよ。鉄なのそれ?」


 そう鉄貨だ。希少金属や紙は貴重なのだ。殆どが建設用、日用品、研究用に使われる。

 使わなくなった武器防具、鉄くずをコインにしたものそれが鉄貨だ。

 それに色を加えて鉄貨の単位を分けている。

 まさか使えないなんて事態になるなんて…

 そもそもお金を使う考えは一切なかったわけで


「そんなどうしよう……」


 私は顔が真っ青になってしまった。


「心配しない。私が貸すわ」 


 レンは何故か嬉しそうに言った。


「貸してくれるの?ありがとう!レン!」


 レンは凄くいい人なんだ!


「でーも、私のお店手伝ってもらうけどね」 


 レンは凄くニヤニヤしていた。うう。


「お店?」

「私の家は雑貨屋なんだ」


「そうなんだ。でも私、お店で働いたことないよ」

「私が教えるわ。ビッシリいくわよ!」


「ふふ、レンってお姉さんみたい」

「あんたが子供っぽいんでしょ。泣くし、身長も下だし?」


「うっ…ごもっとも……」


 私はレンの年齢を訊いてみた。

 何と私の方がひとつ年上だった。

 なので私は年齢をレンのひとつ下に誤魔化した。今の私はこの子に甘えたかったらしい。

 

「レン…」


「何?」


「ふふ、呼んだだけー」


「イラッ、あんた退院したらこき使うわよ」


「うそうそ!!ありがとね。初対面の私を助けてくれて」


「シェリア…何か事情があって家出でもしてきたんでしょ?大きな荷物背負ってあんなにボロボロで」


「家出?違うよ。私は研究員なんだ」


「研究員?何を研究するの?」


「霧だよ。あの霧を研究する事が私に与えられた仕事」


 もっともこの町という大いなる謎をいきなり発見しちゃったんだけど!


「霧…ああ雲海?」


 雲海?この辺ではそういうのかな。雲と色は違えどそうも見えるのかな。


「雲海の下なら私が案内できそうなのはポートロイヤルとエイド村ぐらいね」


 !?


「レン?もう一度…」


「案内できそうなのはポートロイヤルとエイド村ぐらいよ?」


「そこじゃないよ!」


「雲海の下なら?あんたもそっちから来たんじゃないの?」


 ええ嘘でしょう?レンは霧の中に入る事ができるの?耐性があるの?

 しかも案内って町や村があるの?

 私の常識が次々と崩れ去っていく。


「レン、『耐性』って知ってる?」


「何それ?」


「うふふふふ…」


「何よ気持ち悪い」


 私はなんてちっぽけな世界に生きていたんだろう。

 授業や本の中の世界しか知らなかった。

 山を下りてよかった!

 私が知らない世界をレンは知っているんだ!

 私は怪我をして運ばれたこの町では無一文だ。でもそのおかげでレンとこれからも一緒にいられる。

 新しい事をいっぱい研究できる気がする。


「うんうん!!」


「シェリア~自己完結しないで!頭打ってるの?」


 うん、レンとこの世界を一緒に見て回りたい!


「レン、これからよろしくおねがいします!仲良くしようね!」


「仕事の事よね?」


「あ、そうだった…」


「……ま~よろしくねシェリア」



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