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1話「下山道を行く」

 ゲートを抜けた先は千年前の古道が下までずっと続いている。

 アスケイア王国の財を運搬するためにあらゆる工夫をされて作られたとはいえ既に朽ちた機構も多い。

 もう使うことはないので鉱山として再利用されている部分もある。

 再利用鉱山には研究員と労働者が研究許可を貰い採掘業務で慌ただしく行き来していた。

 私はその横をそろーっと通り抜ける。老朽化で歩行者用の階段もこわれやすいときいているから邪魔にならないように慎重に降りていこう。


 「おい!嬢ちゃん!」


 ごついおじさんに話しかけられちゃった――?

 

 「ふぃっ!?なんでしょう?」

 

 「研究員バッジかそんな荷物持ってどこに行くんだ?鉱山工学者では知らない顔だが?」


 「私はシェリアといいます。霧観測が専門でして……」


 「俺はギラン鉱山工学者だ。霧の定点観測なら街でもできるだろう?何か開発したのか?」


 研究員バッジが光る、ごついけど研究員だった。


 「いえ、私は山の中腹に行くんです」


 「何?それは本当か?あれか耐性持ちか?」

  

 「はい、耐性持ちです。これから観測基地に向かいます」


 「そうか、俺たちは全く耐性が無いから下に行くことはできない、この都市はもはや鉱山としては使い物にならない、開拓地も限られた山頂であっていつかは資源は枯渇することになる。だからこうやって鉄くずを再利用しているんだが……シェリアが見る世界の報告はきっと多くの市民が注目することになる。頑張れよ」

  ギランさんに激励されて少しへこんでいた私の心は少しスッキリした。


 「だけどあんた一人なのかよ。ひでえな」


 「あう」

 

 「それじゃあな。観測班のねーちゃんに少し文句いってやるわ。ガッハッハ!」

 

 「やめてくださいお願いします!!!」


  涙目で訴える私を置いて、ギランさんは去っていった。


 「帰った時が怖いよ」


------

 

 私は下山道を進む

 空を見てしまうとうっかり階段を踏み外してしまいそうになる

 労働者とすれ違うことも少なくなってきた。

 足が痛くなってきた。

 まあ私はアウドドア派だから平気なんだけど。



 下山道にはところどころ休憩できる施設がある

 ほどんど扉も無くなってもちろんボッロボロだけどね。

 千年前の小屋とかもう遺跡でしょう。

 小屋の中は意外と綺麗だった。労働者が使っているのかな。

 さてご飯を食べて休憩休憩。

 

 「ふっふっふー最下層街でご飯を買っていたのだよ」


 そう独り言を呟きリュックの中から袋を取り出す。汁こぼれてないかな。うん大丈夫。


 「じゃじゃーん!揚げ代用肉~これ美味しいのよね!」


 ニオ・アスケイアで本物の肉を食べることはなかなか無い。高級料理店にいけばあるみたいだけど。私は行ったことないんだなあ。

 最下層街は代用肉の産地であり屋台で様々な代用肉料理店がある。

 高級料理店の本物の肉は開拓地から生きたまま送られてくる。たまーに港でグウグウ声がするのよね。

 でも私はこの代用肉も負けてないと思う。だって美味しいじゃない。

 

 もぐもぐ――


------

 

 お腹がいっぱいになり、小屋を出てしばらく歩いていると。

 

「うわあ…」

 

 なんということだ……山道が完全に森と化していた。

 さっきまでの荒涼として風景と大きく変わっていたのである。

 確かに上から見たときに草木があるのは知っていたけど道が塞がっているのは想定外だ

 80年前に通ったルートがあるのかな…。

 草むらをかき分けて進む。

 アウトドア派の私では余裕である。…ある!

 変な生き物いないよね…。

 階段は既にボロボロで役目を果たしていない。

 長い年月を得て森に戻ってしまったのである。

 

 森を進んでいると

 『ザアアアア』と水の音が聞こえてきた。

 音の方に向かってみると大きな滝が見えてきた。

 なんて凄い景色だろう。

 日光に反射して黄金色にキラキラと光るシャワーのようだ。

 近づくと顔に水しぶきがかかる。


 「キャッ」

 

 ふと疑問に思う。

 しかしこの水はどこから出てきているのかな。 

 遠く上を見るとうっすらと見えるニオアスケイアの最下層のあたりから滝が発生していた。

 顔から血の気が引く。

 知らなかったほうが良かったこともあったのだ。

 私は涙目で顔を拭いた。

 すぐに着替えたい。


 

 「もう!」

 プンプンして森の中を歩いていると完全に道が崩れていた。

 一難去ってまた一難である。

 向こう側に気をつけて進まないと

 

 ジャンプ――

 よし!着地でき― 

 

 ツルッ

 

 「あっ!やだ!」



------



 森を抜けその先にあった休憩所で体力を温存しながら

 無事?中腹まで降りてきた。

 この先には放棄された霧の観測基地があるはずだ。今日はそこで睡眠を取ろう。



 私は人間の生活圏の最果てに来ているのだ。



 私の研究生活は今始まった!



------


 

 そろそろ基地が見えるはず…


「えっ!?」


 驚きのあまり叫んでしまった。  


 霧が迫るギリギリの地点の中腹から見えたものは、観測基地でも、遺跡でもない『生きた町』だった。


 もう少しで霧に飲まれてしまうそのぐらい近い距離に町があるのである。


 レンガの美しい町並み。手入れされた公園のような広場。あれは人だろうか。


 そこには私たちが捨て去ったかつての世界があった。


 本でしか見たことがないかつての旧世界だ。


 観測基地はどこに…


 おかしいよねこれ?


 謎だらけだった。私の脳に霧の影響は無いのだろうか。


 幻覚…そんなまさか


 呆然と町を眺めてると誰かが話しかけてきた。



「ねぇ、あんた大丈夫?血が出てるけど…」


「えっ、そうですか…え?血…」


 あれ?眩暈がする……



「あう…」



 バタン


「ええっ~!?ちょっと大丈夫?」


 私のことを心配してくれるのか彼女は揺さぶってきた。



「……」



 私はそこで意識を失った。


 ------


 一つ私は嘘をついた。私は本当はインドア派。

 寮でゴロゴロして書庫が大好きな子だったんだ。

 でも夢を成し遂げてみたかったんだ。これはホント。

 自分の耐性をいかして偉業を成し遂げてみたかったのだ。これもホント。

 ドジをして私は下山中に滑り、そこで怪我をしてしまったのだ。

 出血を誤魔化して強がっていたのだ。

 やっぱり一人で旅って難しかったよね。

 先輩ごめんなさい…


 でも私は後悔していない。

 研究棟から出なければこの不思議な町で彼女と出会えなかったのだから。






 初投稿です。

 妄想した物語をようやく文に書き始めました。

 お見苦しい点もあるかと思いますが、これからも少しずつ書いていきたいと思います。

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