【学生E:月並な中二病少女】 緋く揺らめくその炎は、いつまでも私の脳裏に灼きついていて
今回は、ファンタジーアニメのような異能を夢見る中二病少女、山田 桜視点の話です。
結論から言うと、世界は五人の異能力者の活躍によって、世間にその危機が認知される前に救われた。
その最終決戦は、私が宿敵である〈数学〉と超絶対回避スキル『お昼寝』を駆使して戦っている間についたらしい。
ふむ。さすがは我が恩人といったところか。
我が名はアレクサンダー・パンプキン。
炎と闇と光と、えーと……そう、時を操る者だ。
今はこの地球という星で、山田桜とかいう普通すぎる名前の人間に寄生している。
そして、やがて来る人類滅亡の危機に……うぅ、ごめんなさい、ちょっともう限界です……。
正直に言うと、私は普通の人間です。
特別な異能も使命もない、至極月並な人間です。
ただ一つだけ、「普通じゃない」経験をしたことがあります。
それは、忘れられない大切な思い出です。
その日から山田桜は、アレクサンダーになりました。
でも、誰も信じてくれませんでした。
ーー怪物に襲われた私を助けてくれた、炎使いの英雄のことなんて。
でも、"あの人達"は違いました。
たしかに、私の話は意味不明だし、普段があんなだから、にわかには信じてもらえるはずもなく、また、否定されると思いました。
ただ笑われて終わると思いました。
でも、違いました。
きっとみんな、私と同じだったのです。
なんの能力にも目覚めることもなく、自分の設定したキャラにも恥ずかしがって徹しきれることもなく、ただ物語の端っこの方で「主人公が助けた女の子」の一人になってしまってる私と。
けれど今なら、胸を張って私は普通だと言いきることができます。
私はヒーローを夢見ていただけの、なんの個性もない普通の女の子、山田桜なのだと。
……でも、それだとやっぱり面白味に欠けるので、みんなの前ではもう少し、アレクサンダーを名乗らせてもらいましょう。
そう、私は人類を守る使命を与えられた最強の戦士、炎と闇と光と時を司る混沌の騎士、アレクサンダー・パプリカだ!……あれ、パイナップルだっけ?