表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブガタリ  作者: 釣居 螺夢
0:それぞれの物語は自分たちに関係のないところで完結する
4/24

【学生:D 尋常なヤンキー】 その男の顔も声も、俺はあまりよく知らない。見えていたのは、大きすぎる背中だけ。

今回は、映画のような喧嘩を望むヤンキー 藤崎 武人たけと視点のお話です。

よろしくお願いします。

 結論から言うと、入学当初たった一人で暴れていた喧嘩しか取り柄の無かった男は、幾多の衝突を乗り越え絆を築き上げてきた仲間ダチと共に、不良の蔓延るこの町で史上初の頂点テッペンを獲った。


 ーー俺の、関係のないところで。


 その男がチームの仲間たちの中でも特に信頼を置いている数人の幹部に見守られながらライバルと繰り広げた最後のタイマンの結果を、その翌日の学校で喜びはしゃぎ立てる仲間たちに教えられることで、俺は自分の所属するチームの頭がこの町の頂点に君臨することになったのだということを知った。


 素直に、嬉しかった。

 勝ってほしいと、願っていた。

 ずっと、背中を見てきたから。

 ーーでも、俺が見ていたのは背中だけで。

 顔も面と向かって合わしたことはそれほどなくて。


 あの人はきっと、俺の名前も覚えてない。

 ”藤崎武人”という人間が自分のチームに存在していることを、認識こそしていたとしても、意識なんかはしていない。

 そりゃあそうだろう。だって俺は、頭とタイマンを張りその強さに惚れ込んで仲間となった幹部がそれまで作っていたチームに居ただけの奴なんだから。

 それでも、俺は頭のことを心から尊敬し、信頼していた。いつか絶対、頂点テッペンを獲る男だと信じていた。


 頭は強くて、仲間想いで、なにより、すげえ格好良かった。

 俺もそんな男になりたいと思っていた。

 けど、俺なんかがなれないこともわかっていた。


 そして今は、なりたいとも思っていない。


 俺みたいな半端な奴は、放課後喧嘩に明け暮れたり、抗争を起こしたりするよりも、適当な奴らと、適当にハンバーガーでも食べながら、適当な話でもして。

 背中なんかじゃなくて、面を合わせて、名前を呼びあい、笑いあって。

 互いの存在を意識して。

 何事もない平穏な日々を過ごす方が合ってるんだって、気づいたから。

 そういうしょうもねえ日常の居心地の良さを、知っちまったから。

 ーーかけがえのないものって奴は、案外そういうところにあんじゃねえかって、感じちまったから。


 俺がもし頭みてえなすげえ男だったとしたら多分、俺はあの日のあの時、一人で校舎裏なんかに行かなかっただろう。

 そこに居たあいつの言葉に、苛立つようなこともなかっただろう。

 あいつらと関わることなんて、永遠になかっただろう。


 だったら、俺は強さも名誉も何もいらない。

 このどうでもいい日常だけで充分だ。

ヤンキーキャラということで、セリフ回しなど、いつもよりも少し難しかったのですが、違和感など感じましたらご指摘いただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ