1.【学生A:凡庸な帰宅部】 そのチームに俺はいない……いらない
結論から言うと、新しく入ってきたスーパー1年生のダブルエースの活躍によって、去年まで弱小だったうちのサッカー部は見事今年、念願だった全国制覇を成し遂げる。
そして、去年サッカー部をやめて現在帰宅部の選手として日々部活動に精を出している俺ーー浦澤 佑磨は、それをサッカーコートの上などではなく、ましてや全国大会決勝の観客席などでも当然なく、担任から配られた学校新聞によって知ることとなる。
まあ、別に大して関係もない話だ。
いや、ここで勘違いしてもらっては困るが、別にこの件に関して、何も感じないというわけではない。まがりなりにも中学から四年間、サッカーをやってきた身として、練習の辛さや試合の過酷さはわかるし、そうでなくても、日本一などという快挙が誰にでも成し遂げられるような簡単なものではないということも充分わかっている。
それに費やした時間も苦労も、どれほどの覚悟を持っていたかもわかっているつもりだ。
俺のような人間では想像することもできないようなものなのだろう、ということをわかっているつもりだ。
だけどだからといって、去年サッカー部をやめたことについて、後悔などはしていない。 むしろ、あの時のうちに辞めておいて良かったとさえ思っている。日本一になるような練習などついていける自信がないし、まずその前にそんな周りのモチベーションにすらついていくことはできなかっただろう。
それにーーもし、俺があのままサッカー部を続けていたら。練習に出ていたせいで、あの日のあの時間、教室に戻ることがなかったら。
俺はあいつと、あいつらと、出会えていなかっただろうから。