4 ミッション(お掃除)終了!
シーガルさんに遅れる事10分、
俺はミッションをきっちりこなしてダイニングでランチにありついた。
ん〜、働いたあとのメシって、最高だね!
俺がランチを全部平らげた時、
シーガルさんはのファンティス家・オリジナルブレンドの紅茶に、シュガーを軽くひとさじ入れようとしている所だった。
かあさんは奥でハミングしながら洗い物をしている。
俺はシーガルさんの横に、つつっと椅子を移動させて、かあさんに聞こえないようささやいた。
「ねぇねぇ、俺の部屋に来てよ。じいちゃんの話、もっと聞きたいんだ」
シーガルさんは紅茶をひと口飲むと、おなじくらいのささやき声で答えてくれた。
「ああ、いいぞ」
そして今度は大きな声で言った。
「ハミル、今日のブレンドなかなかいいぞ。上で持ってって飲みたいんだが」
かあさんが泡だらけの手のままこっちを向いて言った。
「まぁ嬉しいですわ!喜んでいただけて。子供部屋ですかぁ? すっごくちらかってると思いますよぉ」
「いやいや、構わんさ。あそこは眺めがいいからな」
シーガルさんはカップを置いて席を立った。
「リベラル、ほらそこのトレーに乗せてお持ちしな! そこの戸棚のクッキーもねっ!」
急に声色を変えたかあさんの指示が飛ぶ。
「……へいへい」
俺はしぶしぶ戸棚へと足を向けた。
シーガルさんは途中、例の書庫に寄って、俺が見つけてしまったあのマジカル・オーブが入っていた本を持ち出してきた。
「いいんっすか?持ってきたりして」
と俺が聞くとシーガルさんはいたずらっこのように笑って言った。
「別に構わんさ。俺とあいつの仲だからな。」
2階の子供部屋。
俺と弟が一緒に使っているから狭いし、いつもちらかってて足の踏み場もない。
たまに、かあさんが「掃除」という名目で入ってきたがるが俺たちは一致団結して排除している。
でもさ、ちらかってて、どこに何があるのかが分かるなんて、俺って天才?!
かあさんが入りたがるもうひとつの理由。
それはここからの眺めの良さなんだ。
この村の特産品は、麦とガーデニング用の花。
今は麦の成長期だから、グリーンと色とりどりの花が道に仕切られて、かあさんお得意のパッチワークみたいなんだ。
その向こうには、まだ山頂にうっすら雪の残った山並みが村を抱くようにしてそびえている。そしてその山に沿って、ノア河がゆったりと流れている。
この河を下ると大きな海辺の町に行けるらしいんだけれど、俺はまだ行った事がないんだ。
じいちゃんとばあちゃんは、新婚旅行で行ったらしいんだけどね。