ニーズを制する者はなろうを制す---「嫌なら見るな!」がダメな理由
読者の獲得は大事です。
でも---待って下さい。
折角得た読者を失うリスク、考えてみた事はありますか?
ニーズの賢い使い方と、少しコワい批判意見との御付き合いについて、図解付きで提案致します。
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※より素敵な作者様と読者との御付き合いが出来ればと願い書かせて頂きました。
あくまで個人の参考意見であり、下記が絶対に正しいという主張ではございませんので、その点につきましてはご了承くださいませ。
あちこちの感想欄などで見かける、「自分の見たかった展開と違う!」と、「嫌なら見るな、見たなら言うな」の対決風景。
一見「嫌なら見るな」と言うのが作者様を擁護しているかのように見えますが、実は作者様の利益を損じてしまっているかもしれません。
【批判はニーズのバロメーター】
「好きな物を好きなように書く事」
それが一番楽しい事なのは事実です。
のびのびと自分に適した内容で自分らしい文字を書く。
それで成功すれば一番素晴らしい---のですが、現実問題としてなかなかそうは行きません。
漫画商業誌等で、なぜアンケートが設置されるのでしょうか。
ランキングがどうして重視されるのでしょうか?
物語の行方は、作者様が全て決める事ではあります。
ですが、読者も読む物については自分の意思で決める物です。
耳に痛い意見が頻出するという事は、その背後に大量の同意見の読者が居る---つまり、大量の読者を失ったという証拠でもあるのです。
【ニーズを制する者はなろうを制す】
読者を獲得する事は大切ですが、読者を減らさない事も同じ位大切な事です。
例>
ほのぼの作品が、突然鬱展開に入りBADENDになった。
---作品の完成度は素晴らしかったが、なぜかランキングは低下した。
これは典型的な「ふるい」を読者にかけてしまった結果です。
※図解「ふるい」の構造
「ほのぼの・ハッピーエンド」を好む人は、「殺伐・バッドエンド」を好まないでしょう。
内容が良い作品であれば、ゆっくりと「殺伐・バッドエンド」が好きな読者が増える筈ですが--そうした層の大半は、前半の「ほのぼの」部分が肌に合わないかもしれません。
結果として作者としては素晴らしい話を書き上げたのに、思うより読んでもらえないと言う残念な結果になりえます。
「作品のポテンシャルを最大限利用するために、ターゲット層のニーズを意識しましょう」
コンビニが、買った商品と性別・年齢をチェックしているのは有名ですよね。
こうして集められたデータは、ターゲットのニーズの分析に重用されています。
出版やゲームなどのコンテンツ産業でも、これらは活発に行われています。
時々ランキングもさほどではない作品がひょっこり書籍化しますが、それらもこうしたニーズに即した内容が、より求められた結果だと言えるでしょう。
自分の作品がどんな相手をターゲットにしているのか、きちんとイメージして作った作品とそうでない作品は、同じ筆力、同じ完成度であったとしても、レスポンスに大きな違いが出てきます。
【ランキングからニーズを探る】
なろうで一番簡単な方法は、ランキング作品の傾向を読み解く事です。
その際、総合ランキングからざっくりと傾向を絞るよりも、自分が書こうとしている年齢・性別を意識して作品を見る方が、より正確なデータを得られるでしょう。
作品を見る際は、スタート直後のシリーズなら紹介文や全体の流れを、連載でランクインしてきた場合は最近の展開を注視します。
何が原因でランクアップしたのかを特定し、複数のデータから共通するポイントを抽出しましょう。
「他人の作品を調べるなんて卑怯?」
盗作するのではありません。
目的はあくまで「どの要素が受けたのか」を知る事ですから、展開までそっくりにする必要はないのです。
逆に、似通った作品を乱発する人は、ニーズをつかんでいないからこそ手さぐりで、二匹目のドジョウを狙う羽目になるのです。
きちんと何が求められているか理解していれば、自分なりの展開に求められる要素を含める事も可能でしょう。
【登録キーワードを活用する】
小説を読もう>分類検索>登録キーワード
こちらで、最近の人気キーワードを見る事が出来ます。
単純に人気があるものは登録数が増えますので、作品登録数が多いキーワードを意識する事でニーズを把握できます。
所謂「一般受け」しやすい内容は、タグの登録数も増える傾向があります。
【地雷に対するリスク管理をする】
読者に好まれる傾向とは逆に、あまり好まれない傾向と言う物があります。
王道に走り過ぎれば、話はテンプレ化して、盛り上がりにも欠ける物になってしまいます。
また、一定以上の盛り上がりを作る為には、展開に意図的な「谷」を作る必要が出てくるでしょう。
逆境展開は地雷原です。
物語に欠かすことが出来ない、主人公が不利な展開。
所で、ここまでにタグの傾向を見てみれば、その逆境に関連する負のタグがあまり見当たらない事に気が付かれたでしょう。
主人公が不利になる展開は、読者に大きなストレスを与えます。
だからこそ、それが解消された際にカタルシスが得られるのですが……
人によって、そのストレスが耐えられる限界には色々と個人差が存在します。
「作品の盛り上がりに、逆境は必要だ」
それは事実でしょう。
「文句をつけるのは我儘だ」
気持ちはわかります。
「アンチ行為は最低だ、するべきではない」
もっともです。批判をするのは良いですが、限度はあります。節度は大事ですね。
正論です。もっともです。
でも……「だから?」
正論を言って、何かが変わるのでしょうか。
よしんば、抗議をしている誰かを論破したとして、地雷原を放置しては次の攻撃者を産むか、敵愾心をむやみに煽る結果になります。
多勢に無勢と言う言葉がありますが、作者が多勢になる事は決してありません。
ファンがどれだけ擁護しようと、対処するのも事務的な手続きを行うのも作者一人(精々が運営)です。
結果として、アンチや荒らし行為については、作者は常に消耗戦を強いられます。
アンチを警戒して、作品を妥協するのは問題ですが、逆にそれ以外で妥協して、リスクを下げられる手段があれば検討すべきです。
とる事が出来る中、タグ警告はもっとも手軽な手段です。
裂ける時間的・精神的リソースが心配な場合は、地雷とする人が多い内容は一考すべきかもしれません。
※図解 得る物と失う物
アンチ問題だけではなく、読者にストレスを与える選択肢の前には、よく考える事が必要です。
「それは本当に必要な表現なのか?」
「フォローまでに読者に「切られる」リスクが高い表現ではないのか?」
その表現を行う前に、今一度確認してみてください。
必然性が薄く、リスクが高い選択は---あまりよい選択肢ではないかもしれません。
批判が大量にわくような内容は、物語の盛り上がりでも取り返しがつかない(まにあわない)事があります。
盛り上がりの前に、作品を殺すような劇薬ではないのか、批判が噴出した際にはよくよく考えましょう。
場合によっては、より後で回収する予定のフラグを前倒しして応急処置する必要があります。
モノには限度が必要で、先を見通せる作者は全体の総和で読者のストレス限界を図りがちですが、読者は現在までの総和でしか大抵は計ってくれません。
読解力に過度に期待する事は止めましょう。
多くの人間は他者の意図についてシンプルにしか受け止められません。
貴方がよほどの大御所で、展開に定評があるならば別ですが、初見の作者の展開に信頼を置いて安心している読者は思ったより少ない筈です。
【批判意見との付き合い方】
プロ作家を目指される場合、読者の反応やブックマークの推移など、反応を確認しながらよりニーズを捕らえる事も必要になってくるかと思います。
批判意見は、こうしたニーズを見極める為の大切な目安となる、作者様の財産です。
小説家になろうは批評を通してより高いレベルに至ろうとする為の発表サイトで、読者はお客様ではなく作家様への愛情を持って忌憚ない意見を届けるのが役割です。
応援をするのはもちろん素晴らしいですが、批判意見を封殺するような事をしてしまっては、折角のなろうの良い所の半分を失ってしまうでしょう。
但し、批判は自由ですが、そこからどこをくみ取り選択するかは作家様の采配です。
その選択に対して意見を述べる事もある程度はありかと思いますが、限度を超えてバッシングのようになってしまうのは問題です。
批判をする際には、あくまでも作品と作家様への愛情を忘れないように心掛けたいものです。
受け止める側は、意見との距離感を意識しましょう。
「批判意見は大切な物ですが、作者本人の精神力や時間も重要なリソースです」
---批判で過度なストレスをためては本末転倒です。
受け入れる事が出来ないと感じた場合、背伸びはせず一定の距離をとる事も一つの方法です。
自分の限界をよく知って、自衛を行いましょう。
また、自衛が必要な状況にならない為にも、前述の「不用意な選択」を行わないよう心がける事が、むやみな精神的・時間的リソースの浪費を避ける良い方法になるでしょう。
また、批判が湧きそうだけれども、読者を得られそうななネタを思いついた時は、それによって消費する精神的・時間的リソースが自分にあるのかを考えます。
「どれだけ素晴らしい思い付きも、キャパシティオーバーを招けばアウト」です!
【タグ付けと棲み分けのススメ】
警告やタグ付けなどは、批判(読者の不満足)の発生を減らすための安全策になりえます。
ネタバレによる盛り上がりの減少分と比較して、タグの不利益が許容範囲である場合は、これらの利用で一定のトラブルを減じる事も出来ます。
---小説家になろうは多種多様な利用者が利用しているサイトです。
現実の本であれば、少年雑誌や少女誌、ホラー雑誌やコメディ誌など、あらかじめ内容・傾向の予測が出来、棲み分けも行われています。
ネット小説ではそうは行かない為、作者自らがどうした傾向であるのかを宣言しなければ、読者は判断が付きにくい状況に置かれます。
※図解 安心感のアドバンテージ
商業においても新人作家や新規シリーズは、その傾向が未知数であるが故に、手に取ってもらうまでが大変だそうです。
タグをうまく利用する事で、この問題を軽減する事が可能でしょう。
内容に相応しい物を正確につけましょう。
マイナス検索されたくないからと、省いてしまうのはあまり良い選択ではないかもしれません。
貴方の作品に目を止めた読者を不愉快にしてしまうのは、今作以降、未来に至るまで永遠にその読者を失ってしまう可能性があります。
物語の核心をネタバレしてしまうようなタグであれば、控えなくてはならないでしょう。
しかし、読者に悪印象を持たれるリスクは、あまり軽い物だと見積もらない方が無難かもしれません。
自分のポリシーと他人の気持ちや時間と。
その重さをよくよく考えてから選択をして下さい。
作品だけではなく、その振る舞いでファンが付いていける作者様に出会える事は、とても素敵な経験です。
書き手と読者が相手の立場をよく思いやり、互いに大切にしあう関係を築ければ素晴らしいなと自分は考えます。
貴重なお時間を裂いてお目に止めて頂き、ありがとうございました。