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冥条琉詩葉、颯爽登場

「やばーい、あと五分!間に合うか!?」


 冬の朝だ。聖痕十文字学園中等部2年、冥条琉詩葉(めいじょう るしは)がショートにまとめた紅髪を揺らしながら、紺碧のブレザーをパタパタさせて坂道を疾走する。

いつも通り遅刻ギリギリの琉詩葉、校門が閉まるまでもう時間がない。


 ごごごごごご。

『冥府門』の異名をとる目の前の校門が、土埃をたてて閉まり始めた。

 じゃきん!

校門の周りに飛び出す何本もの鋭い槍。


―――そんなカマシでビビルかっての!

 スタン!次の瞬間、琉詩葉が跳んだ。

門の隙間と体をサジタル面にシフトさせ、何とか校内に飛び込んだのだ。

「セーーーフ!胸無くてよかった~~!」

 大口を開け琉詩葉が笑う。だがその時だ。


ひゅるん!空を裂いて飛んできた何かが彼女の細い足首に巻き付いた。

「どぎゃ~~~~!」

 悲鳴をあげて校庭に転がる琉詩葉。足に巻きついていたのは革製の鞭だった。

「鞭使い!しまった!今日はあいつの当番!」

 琉詩葉の顔が蒼ざめる。


校門で彼女を待ち受けていたのは片手に鞭を撓らせて、テンガロンハットを目深にかぶった厳めしい一人の教師。

学年の生徒指導主事、轟龍寺電磁郎ごうりゅうじでんじろうだ。

「冥条!一週間連続の校門違法突破!もう見過ごせん!ギルティ!」

 怒りの電磁郎が鞭の取手のスイッチを入れた。

 バリバリバリ!

鞭から放たれたショックウェーブが琉詩葉のしなやかな脚を撃つ。


「ぎゃ~~!ちょっと電ちゃん、やりすぎじゃん!」

 琉詩葉が右足を押さえながら電磁郎に叫ぶ。

「冥条……この際はっきり言っておく。俺が赴任して十年、この『裁きの教鞭』の聖痕を体に刻まなかった不良は一人としていない!今日がお前の番だ!」

 教師が帽子のつばを回しながらニタリと笑う。


「え~!あたし不良ちがうし!でも分かったわ、電ちゃん、目には目を……そっちがその気ならこっちも考えがあるから!」


 琉詩葉がスクールバッグから、アメジストをあしらった錫杖を取り出した。

「来たれ、風雷!エアリアルサーバント!」

天から響くドラムの異音。晴天が俄かにかき曇った。


 #


「……轟龍寺先生、今日は本気みたいね。」

 図書室の窓から校庭を見つめる少女が、静かに呟いた。


「ああ……いい機会だ、『冥条琉詩葉』、お前の『実力』、この目で確かめさせてもらう。我ら『聖魔の円卓』に列なる資格があるのかどうか!」

 書架の陰に立つ燃える眼をした少年が、そう言って妖しく笑った。


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