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旋律は、ただ儚く空を舞う。

作者: 寧祈

子供達に遊ばれる、おもちゃ。そのおもちゃ―人形の視点で書いた小説です。へなちょこですが、読んでやってください。



 狂おしい程綺麗な旋律 透き通ったガラス玉想像させる 消えてしまいそうに儚い歌声。


 


††††††††††††††††††††



 その旋律はひどく綺麗で、また哀しみを帯びていた。何処ともつかない外国語の言葉、歌。白い顔を目立たせる赤と黒のドレス。自分の名前も知らず、ただ歌い、踊るためだけに生まれた。彼女は『からくり人形』と呼ばれる、ただ1つの歌を歌う歌姫だった。

 


 キリキリ…背中のねじが、子供の手によって巻かれる。


【嗚呼、歌わなければ。踊らなければ】


 手が離された瞬間、彼女は口を開き、全身を使い、歌い、踊りだした。歌うのは、彼女が生まれた遠い外国の歌。踊るのは、彼女の生まれた遠い外国の踊り。

 ただ1つの歌を歌うためだけに生まれた。ただ1つの踊りを踊るためだけに生まれた。ただ1人の人間を喜ばせるためだけに生まれた。そんなからくり人形。


【嗚呼、私は歌うため踊るためだけに存在する】


 歌い続けた、踊り続けた彼女は、いつの日か飽きられ、おもちゃ箱の中へと投げ込まれた。そのうち彼女は、おもちゃ箱の1番下で、使われるのを待つようになった。

 上から、新しいおもちゃが投げ込まれる。その分の重さが、彼女にもかかった。


【嗚呼、誰か私を助け出して】


 彼女の叫びは、ある日皮肉な形で子供達に届く。

 すっかり成長した子供達は、おもちゃ箱の処分を決めたのだ。そして、彼女を手に取った。彼女はなおも訴えた。


【嗚呼、私は歌うため踊るためだけに生まれた。歌わせて躍らせて】


 しかし、その願いが叶うはずもなかった。

「この人形、からくり人形? もう使えないわね」


【嗚呼、待って、私はまだ歌える踊れる】


 成長した子供達は、おもちゃ箱をある丘の大木の近くに捨てた。

 上に積み重ねられたおもちゃ達は、やって来る子供に拾われ、新しいおもちゃ生を踏み出していた。


【嗚呼、私はもう歌えないの? 踊れないの?】


 1番下に詰め込まれた彼女が人の手に渡ることは無かった。

 それでも彼女は、来る日も来る日も待ち続けた。歌わせてくれる人間を。踊らせてくれる人間を。


【嗚呼、歌わせて踊らせて】


 彼女の身体が風化し、そこから消えても―彼女の想いはそこに留まり続けた。

 彼女の願いは、捨てられた場所、大木へと託された。



††††††††††††††††††††



 大木は―彼女は今日も歌っている。

 

 哀しい程綺麗な旋律。何処ともつかない外国の言葉、歌。彼女が生まれた遠い外国の歌。彼女しか知らない遠い外国の歌。


 誰かに届くように。誰かが気付くように。彼女の歌声は舞い、儚く響いていった。


このような小説は初挑戦でした。どうでしたでしょうか?もしよければ、小説評価の方でアドバイスをくださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんというか…すごく、儚い気持ちになるような作品でした。 でも、内容てきにもとても素晴らしい作品だと感じます!!
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