東日本大震災と、その影響について
本当に悔しいのですが、直ぐに被災地に対して何か効力を発揮するような行動は僕には全く思い付きませんでした。せいぜい、募金をしたり、節電に協力をするくらいで。
初めは体験談もこの文章に添えようと思ったのですが、あまり意義を見出せず、というか、書けば書くほど上っ面しか書いてないような気になり、ある程度書いたところで、全て消してしまいました。
僕の能力を考えた場合、こういう状況下で一番役に立つのは、やはり感情面を排除して、現実的にどんな影響が考えられどんな対策が有効なのか、理屈でそれを述べる事だと思います。
小説なんかを常日頃、書いていながら、恥ずかしい限りなのですが、今の自分とこの主題に対しては、どうやらそれが精一杯のようです。
さて。では、語り始めますが、前もってこれだけは、断っておきます。当然の事ながら、僕の能力には限界があり、更に言うなら、今の状況には予測不能な要素が多く含まれています。短期的な動きでは、それはより顕著になるでしょう。
だから、僕の全ての説明をそのまま信じたりしないでください。僕の分析や判断が間違いだったという可能性は多いにあります。そもそも僕が判断材料にした情報自体が間違いだった、という可能性もある。飽くまで、参考程度という認識でお願いします。また、僕はできる限り公平に世の中を見ようと努力しているつもりですが、それでも僕の目を通して歪められた現実を捉えているだろう点は否めません。その点にも留意してください。
僕が今回の震災での、中・長期的な影響としてまず真っ先に心配したのは、財政問題でした。よく知られた話ですが、日本の財政状況は非常に厳しく、特に2012年以降は、それまでの日本の借金の財源であった貯蓄が減り始め、借金が難しくなるのではないかと予想されています。
2012年以降、「団塊の世代」が退職すれば、その世代は貯蓄を取り崩して生活をし始め(つまり、借金の財源である“貯蓄”が減る)、更にその世代への医療費や年金などの社会保障費が膨らむと予想できるからですね。
地震が起こる前の状況で、IMF(国際通貨基金)は、2019年には国債(国の借金ですね)の国内消化はできなくなるリスクが高いと警告を発しています。日本が今まで国家破産して来なかったのは、国内で借金を賄えていたからですから、これはそのまま、「国家破産の危機」を警告しています。
そして、このただでさえ危機的な状況下に今回の大規模地震です。当然、復興に要する費用を捻出する為に、財政は更に悪化を強いられます(復興にかかる費用は、約14兆6800億円という試算が、ロイターに載っていました)。
また、海外の要因も見逃せません。中国のバブル経済がいつ崩壊するか分からないし、輸出が好調の韓国は実は借金が多く、その通貨、ウォンの安値がそれに拍車をかけているという皮肉な構造に陥っています。ウォン安だと、輸出が強くなるのですが、その反面、韓国の借金は実質増えてしまうのですね(断っておきますが、僕は批判をしているのではなく、むしろ心配をしています)。その他、ヨーロッパの経済や、アメリカだってまだ安心できるとは言い難い状態。中東情勢も非常に不安定。もし、このどこかが崩れたら、更なる財政出動が要請される可能性は大いにある。
これらの条件から、財政が更なる窮地に立たされるだろう事は簡単に予想が付きます。
と、すると増税か節税がより必要になって来るのは目に見えています。実際、早くから「復興税」の案が出されました。どんな税制になるのかは未知で、そもそも協議が進むのかどうかすら分かりませんが(2011年3月16日現在)、この危機を政治家(案を出したのは自民党でしたが)が認識しているのは確かでしょう。
ただし、ではただちにこの「復興税」を認めるべきかと言えば、僕はそれも違うと考えます。もっと状況を見極めて、慎重に決断を下さなくてはならない。
(実を言うなら、僕も一時は、直ぐにでも必要だと考えたのですが。少し時間が経って、反省しました)
何故なら、地震による経済的な打撃が、どれほどになるのかの予測が困難だからです。ここで増税して、経済を更に悪化させれば、日本全体の経済がどうなってしまうのか分からない。もっとも、経済に影響の少ない場所から、徴収できるような理想的な税制を組めれば別ですが(例えば、高額所得者で、タンス貯金も含めた貯金が膨大にあり、かつ消費活動が低い人からだけ取る、なんて条件を満たしていればベストですが……、はっきり言って無理がありますね)、短期間でそれを判断し、更に抵抗を押し切って税を執行するのは、かなり難しいと考えざるを得ません。
もちろん、財政の悪化を考慮するのなら、いずれは増税は避けられないでしょうが(もし、拒否すれば恐らく、日本の財政は破綻します)、日本の経済が安定化する前の増税は、慎重に行うべきです。
ただし、増税しない場合、懸念すべき点があります。これから税収は大きく減り、支出は拡大するというのは、前に書いた通りです。それが予測の範囲内で収まれば、(短期間では)大きな問題はないと考えられます。ですが、それが予測を大きく超えた場合、予算不足という事態に陥りかねません。すると、優先させるべき事に金を回し、他の行政サービスが滞るという事態に陥る可能性もある。
もっとも、これはかなり可能性の低い話です。杞憂かもしれません。予測を超えて資金が足らなくなれば、補正予算が組まれるのは当たり前の話ですし、そういった事態に備えた財源を日本は確保していますから。
ただし、補正予算が組まれた場合、国債が更に発行される事になるでしょう。そして、安定的に国債を消化する為に、日銀が動くだろう点は、まず間違いありません(場合によっては、直接買取も有り得るのでしょうか?)。この震災対策の為に、既に一日で15兆円という、凄まじい資金注入を日銀は行っています。この日銀の介入が、通貨の増刷に近いものになるだろう不安は、拭い去れません(それが、仕方ないのだとしても)。
すると、それが物資の不足(これは心配しなくても良いかもしれませんが)に伴って、悪性のインフレ… 物価上昇を引き起こすだろう心配があります。何らかの更なるアクシデントが重ならなければ、ここまでは心配し過ぎなのかもしれませんが。
この流れを少しでも緩和する為には、やはり経済的な影響が少ないだろうと思われる点への“節約”しか(少なくとも僕には)考えられません。
よく指摘されている医療に関する無駄や、規制に関する無駄……、巷でよく議論されている内容ですが、早急にそれらを進める必要があると考えます。また、個人レベルでも節税に繋がるような事を自主的に行えるなら、行うべきです。
公務員の高額所得者が、その負担を引き受けるという話も進めるべきでしょう。僕は個人的には、公務員の人件費の増大は、人口比の遷移により、若い世代が減り、高齢者が増えた事による影響、いわゆる「高齢化社会」の影響が強いと考えています。高齢者の方が、支払われる給与が多く、その割合が多くなってしまったが為に、構造的に、無理が出てきてしまった(その他の要因も、もちろん、あるのでしょうが)。
つまり、年功序列の「罪」ですね。
民間では、比較的対応が早いですが(まだ、残ってはいますが)、性質上、国は対応が遅い。
断っておきますが、一部の人に観られるように、僕は公務員を一方的に悪者にするつもりはありません。実際、地方自治体の中には、公務員が給与を自らカットし、地域の活性化に当てている場合もあると聞きます(それにより、増えた税収を自らの給与に当てるのなら、何の文句もない…… というか、むしろ貰ってください)。
が、憲法で定められている通り、公務員は国民の「奉仕者」としての役割を担う立場である事に間違いはありません。その職を自ら選んだ以上、国難と呼ぶべき事態に際して、その負担を引き受けるのは当然でしょう(被災地の職員の方々は、既にその職責を担っているとも思いますが)。そもそも、公務員の給与は民間の納めた税ですから、民間を元気にしなければ支えられません。少なくとも、少しの給与カットにもヒステリックに反応し、議論すらしようとしない態度は、改めなければならないはずです。
また、増税には慎重に検討する必要があると述べましたが、一部、例えば宗教法人への課税などは行うべきかもしれません。期間限定でも構いませんが、課税基準を欧米並みにすれば、その税収規模は4兆円だとも言われています(本当かどうかは、確かめる術がないのですが)。これは、充分議論に値する額です。
人を救うという題目のある宗教。この事態に対して、協力をしないというのはないと思います。これも、ヒステリックに反応するのではなく、まずは議論の場に上げる事が望ましいはずです。
更に、経済への影響が少なく、被災地の復興に予想以上に予算が必要ならば、「復興税」の早期導入も検討するべきだと僕は考えます。復興の為のインフラ設備などは、無駄な公共事業とは違ってプラスの経済効果です。また、復興によって生じた需要が、経済全体に効果的に働くのなら、その可能性は更に大きくなるかもしれません。
今回の大震災の影響で、「原子力発電所問題」は無視できません。エネルギー問題に大きな影響を与える上、直近の電力不足問題にも関わってきます。これは、震災によって発生する問題への対策にも直結する話題なので、まず先に説明しておきたいと思います。
実は近年まで、原子力発電所の建設は下火になっていました。チェルノブイリ大事故を初めとする様々な重大な事故により、各国は手を引いていたのです。ところが、発展途上国のエネルギー需要増や、資源の枯渇が叫ばれ、エネルギー危機が深刻になって来ると、その事情が変化してきました。
CO2問題対策、とよく言われますが、確かにそれもあるにしても、主因はエネルギー危機対策と観た方が良いと僕は考えています。実際、「シェールガス」や「オイルサンド」、「オリコノタール」といった新資源が注目を浴びるようになると、多少その動きが弱まったという事実があります。これらは、今までは利用が難しかったエネルギー資源なのですが、技術の発展や原油価格の高騰で、採算が合い、採掘が可能になったものです。
とにかく、近年になって原子力発電所は注目を浴びるようになりました。そして、日本の原子力発電所技術は、世界でもトップクラスと言われています。何しろ、業界をリードする3トップは、
“東芝とアメリカのウエスチングハウス社”
“三菱重工とフランスのアレバ”
“日立とアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社”
と、単独ではありませんが、事業提携や技術提携でいずれも日本が関わっています(2011年3月現在)。その為、日本の原子力発電所は世界でも安全性が高いと言われていたのです。しかし、だからこそ、今回の福島第一原子力発電所の事故は世界から大きな注目を集める事になりました。安全性の高い日本でも、事故が起きてしまった。原子力発電所の復興の後退要因になる事は、まず間違いありません。
ただし、福島第一原子力発電所が比較的古い年代に建設されたものであったという点、想定外の未曾有の大地震という外部の影響によって引き起こされた事故であった点を考慮するのであれば、決定的な要因にはならないかもしれません。実際、震災地にあるものでも、年代の新しい原子力発電所では、大きな問題は発生していません(もっとも、これが単純に“新しさ”という要因だけなのかは分かりませんが)。
先に述べたように技術でリードしており、ビジネスとしても価値があるので、日本も原発を失いたくないと考えるでしょう。つまり、その動きが多少は鈍化するにしても、このままでは原子力発電所の、その多くがこれからも建設され続ける可能性が高い。また、大きく後退したら後退したで、エネルギー危機が解決できないという問題があります。
エネルギー危機が解決できない事は、様々な問題を引き起こします。今でも、エネルギー資源は、多くの地で紛争の火種になっているのですが、それが激化する事は、まず間違いありません。スプラトリー諸島には、石油と天然ガスが埋まっているのですが、ここを各国が奪い合っています。他にも、インドネシアのパプア州や、東ティモール、中国のウイグル自治区、ナイジェリア、ロシアのチェチェン、もちろん周知の事実の中東、などがあり、日本の尖閣諸島問題にも、エネルギー資源が関わっている事は、よく知られた事実です。
紛争の激化により、多くの人が犠牲になるだろう事は、当たり前に予測できます。また、エネルギー資源が枯渇すれば、当然、生活も苦しくなっていきます。日本のような豊かな国(今の段階では、ですが)は、まだ影響が少ないかもしれませんが、貧困地帯に住む人は命を奪われる事態に陥ります。
僕は原子力発電所の安全性を、長い間疑問に思っていました。どれだけ大事故の確率が低くても、建設数を増やしていけば、それが上がる事は当たり前です。どんな計算なのか根拠は不明ですが、以前に大事故の確率は2000年に1回だという内容を読みました。これが、原子力発電所一基に対してのものなのかどうかは分かりませんが、この確率は決して低いものではありません。
確率の計算では、数を増やしていけば、一度でもそれが起こる確率は、急速に増していくからです。計算式は、
(全ての事象)―(事故が起こらない確率)=一度でも事故が起こる確率
になる訳ですが、これで値を求めると、6まで数を増やした場合(数の単位は不明)約334年に1回と、一気に上昇します。もちろん、これ以上、数を増やしていけば、更に確率は上昇していく事になります。
数の単位が不明ですし、そもそも単純な確率計算が当て嵌められるのか?といった問題はありますが(元にしたのが、根拠不明のデータですし)、それでも僕は、これを脅威と考えます。何故なら、日本だけでの問題ではなく、世界各国が建設を進めれば、より杜撰な管理体制が現れるだろう事は目に見えているからです。そして、一つでも大爆発を起こせば大惨事に至る。更に、仮に大惨事にならなくても事故が起これば、原発は稼動停止状態に陥り、一気に発電量は低下、エネルギー不足の状態になるというハイリスクを抱えます。
これらの理由から、僕は原子力発電所のこれ以上の普及には反対なのですが、それでも思いは複雑です。何故なら、先にも述べた通り、エネルギー危機を野放しにしておけば、その影で紛争の激化や、貧困層の生活苦が引き起こされるからです。だから僕は、エネルギー不足を解決する為の、代替案を提示してきたつもりです。代替案が採用されさえすれば、その必要性がなくなり、原発建設は自ずから減っていくと考えるからです。僕が提示してきた案は、主には、自然エネルギーの普及ですが(特に太陽光発電は、単位面積辺りのエネルギー効率が高く、太陽の光さえあればどこでも発電が可能で、ランニングコストが低く、原材料の枯渇がそれほど心配ない、などの利点があります)、世間一般のものと違っているのは、通貨の循環を考えた上で、それを成立させるプランがある事です。これは、実は経済政策及びに、財政立て直しの策にも関係しています。ただし、自然エネルギーの普及による発電は、普通、即効性がありません。それには長い時間がかかる。この大震災によるエネルギー・電力不足を緩和する為には、即効性のある策が必要でしょう。ですから、まずはその策から述べたいと思います。
実はエネルギー不足を補うには、増産以外にも方法があります。単純な話ですが、「節約」です。節電ももちろん含まれます。これらは既に世間で実施されていますが、まだ実施されていない試みもあるはずです。
そして、僕が考えているのは、「予約注文販売の推奨」です。
何か買い物をする際、できる限り「予約注文」によって、行う。これが、どうしてエネルギーの節約に繋がるのかといえば、無駄な生産や物流、在庫管理、廃棄物処分にかかるエネルギーを抑制する効果があるからです。
普通、製造元は需要が不明で生産を行います。流通・仲介業者もこれは同様で需要不明のまま発注を、更に小売店でも同じです。
各企業は、これまでの販売実績などから、予測で生産量を見極める訳ですが、この予測は非常に難しいというのが実態です。需要に関する情報は、普通、小売店→流通・仲介業者→製造元と伝播していくのですが(インターネットの登場により、そうでない場合も増えていますが)、この伝言ゲームにより更に需要予測が難しくなるという現象が、起きているそうです。そして、需要を見誤ってしまったが為に、過剰に生産してしまう事が多々ある。過剰生産は、無駄な物流を生み、無駄な在庫管理、無駄な廃棄物処理を生む。つまり、無駄なエネルギー消費を生んでしまうのです。
ですが、予約注文によって、初めから需要が分かっていれば、無駄な生産をしなくて済みます。すると、当然、無駄な物流、無駄な在庫管理、無駄な廃棄物処理が減り、それぞれでエネルギー節約になります。企業にとっても、無駄な在庫を抱えるリスクが減るので、これは喜ばしい事です(商品によっては、予約特典があるのは、だからなのですが)。
新製品以外では、予約注文は今はあまり意味がない状況ですが(そもそも、店に在庫がある場合がほとんどですし)、消耗品など、常に需要情報が欲しい製品に関しては、有効であるかもしれません。
この方法の注目すべきメリットは、恐らくはほとんど政府側のコストがかからない点です。つまり、財政負担になりません。「クールビズ」の成功のように、ただ単に政府が「予約注文販売を推奨する」と宣言すれば、各業界がそれに応えてくれる可能性が高い(生活者側が、自主的に動いても効果はあります)。
しかも、マンパワーだけでの対応でも効果が望めますし、何かしらのシステムを構築すれば、コストはかかりますが、更に大きな効果を生む可能性があります(エクセルとマクロで簡単な管理ツールを作るくらいなら、大きなコストはかかりません)。
もっとも、その効果がどの程度の規模になるのかは分からないのですが。
欠点として考えられるのは、新製品以外にもこれを適応すると、注文してから手元にそれが届くまでにタイムラグがある、といった点でしょうか。しかも、予約注文する手間がかかるので不便になります。
また、無駄な生産をしない、とは実質、生産効率の向上を意味します。生産性が上がると労働力の必要性が減るので、例えば、部品製造会社の仕事が減る、といったような影響が考えられます。つまり、失業者を発生させてしまうかもしれないのです。ただし、その反面、無理な値引き交渉は減ると考えられますし、ワークシェアリングを実施してもらえば、失業者の発生を防げます。
これら以外にも「予約注文販売の推奨」には、欠点があるかもしれませんがしかし、それを超える利点があると、少なくとも僕は判断しています。
ここで話を戻しますが、先に述べた通り、太陽光発電やその他の自然エネルギーでの拡充は即効性がありません。「エネルギーの節約」を行っても、緩和させるくらいの効果しかないでしょう。つまり、自然エネルギーを原子力発電所の代わりにするには、長い期間がかかると考えられます。だから、少なくとも、その間は頼らざるを得ないでしょう。そして、その期間を少しでも短くする為には、自然エネルギーの促進が必要になります。
が、それには様々な障壁があります。そもそも、このままでは、充分な普及ができない可能性すらもある。
そこで、その為の方法を述べたいと思いますが(僕が他でも書いている方法と同じなのですが)、その前に、今の自然エネルギー促進政策の問題点について述べておきたいと思います。それが分からなければ、僕の主張にどんな利点があるのか分からないだろうと思いますから。
まず、太陽光発電の補助金制度に関して。これは各家庭への太陽電池の設置を促すものですが、これではスケールメリットを活かせません。発電というのは、各発電機を同期させなくてはならなかったりと、実は通常で考えられているよりもデリケートな技術なのですが、その為に太陽光発電は通常の送電網に加えるのに手間がかかるのです。通常の発電は、交流電流なのに対し、太陽光発電は直流電流なので変換が必要だったり、送電網を整備しなくてはならなかったり、と。
その経費を考えるのなら、まずはある程度の面積を持つ場所へ、まとまった量の太陽電池を設置していくのが得策だと僕は考えます。
例えば、規模のある工場や、大きな公共施設に設置する方が、経費が浮きます(対象となる施設が大きければ、変換なしで太陽光発電の直流電流をそのまま使えるというメリットも)。各家庭が判断して購入する分には、一向に構いませんが、一部とはいえ、国の税金を用いるのなら、社会全体の利益を考え、できるだけ効率が良い設置を行なうべきでしょう(各家庭への普及促進は、その後にするべき)。
また、太陽電池を購入できるという、既に裕福な家庭を優遇する政策は、格差を広げる要因にもなりかねません。今はまだ電力価格は低いですが、これから原油価格が高騰していけば、上昇する懸念があります。すると、太陽光発電の利回りは上昇し、前もって太陽電池を購入していた家庭は、実質、更に優遇を受けるのと同じになります。
と、実はこの説明は、僕の論にはあまり関係ないのですが(しかも、各論です)、一応気になったので書いておきました。
自然エネルギーの促進でなくても、他のリサイクルなどでも同じなのですが、高いコストに対して収入が少ない、つまり、採算性が合わずに普及していない技術というのは、実は多くあります。それが、資源高によってもたらされるコスト高ならば、資源供給量を増やす以外に解決のしようがありませんが、それが“人件費”によってもたらされるものならば、実は解決方法があります。そして、その点こそが、自然エネルギー促進政策の最大の問題点だと僕は考えています。僕が考えるその解決方法は、原理的には、税金で警察や消防を運営しているのとほぼ同じです。つまり、税金か公共料金で金を徴収し、それを人件費に当て、人件費問題を解決するのです。
人件費分、コストが安くなるので、電気代などのエネルギー費用は高くする必要がなく、採算性も合うようになります。
一見、国民の支出が増え、生活が苦しくなるように思えますが、通貨は循環しているので、その分の収入増が起こり、生活者の実質的な負担にはなりません(低所得者への配慮は必要になります)。このように通貨の循環が増える事は、通常の経済発展でも常に起きてきた現象です(つまり、これは経済発展です)。もちろん、国内で人を雇う事が前提になります。この説明だけだと「均衡予算乗数の定理」と呼ばれるものと同じですが、僕の考えは少し違っています。
自然エネルギー設置に関する新たな通貨循環を作ると、その分、通貨需要が増えます。すると、その増えた分の通貨需要に関しては通貨の供給が可能になります。その為、最初の1回に関しては、通貨を増刷してその分を当てる事が可能になる訳です(ただし、労働力が余っていなければ、この方法は使えない)。
これに外部機関などの評価による市場原理を導入すれば、致命的な欠陥はないのではないかと、僕は考えています。間違いなく、短期間では効果を上げると思います。ただし、長期間続けていけば、それを悪用する人達が現れるだろう点も確かなので、それを防ぐ努力は全力で行なわなければいけません。
もちろん、実際に行なう際には、その他の様々な問題点が浮上するでしょうから(上手く通貨循環が起こらない、等)、まずは実験的にそれを行い、トライ&エラーでベストな制度を創っていく姿勢が望まれるでしょう。
人によっては、この方法を“最終手段”と評価するかもしれませんが(制度を悪用される危険性は高い、と僕も考えています)、実験的に行なう事すらも否定する理由にはならないでしょう。また、実は社会は既にその“最終手段”を執るべき状態に陥っている可能性もあります。
財政難解消と経済成長を同時に行い、環境問題対策とそれを結び付け、更に資源問題を解決しなければいけない。日本だけでなく、既に全世界がそんな窮地に陥っています。はっきり言って、今まで執られて来た“常識的な”政策では、この窮地を脱する事はできません。
勇気ある決断をするべきです。
また、制度が例え失敗したとしても、その後には“自然エネルギー”という、プラスの財産が残る点も考慮するべきです。特に太陽電池は半導体で、半永久的に残ります。その為に再利用効率が高い(半導体以外での、銀などの元素不足は多少、心配ですが)。ランニングコストも低いですから、制度が失敗しても活用し続けられます。その試みは無駄にはなりません。
最後に補足ですが、自然エネルギー利用に即効性はないと書きましたが、バイオマス活用、廃棄物の焼却による発電(三重の大事故を切っ掛けに安全対策からコストがかかり、下火になっていたのですが、上記の方法を利用して人件費問題を解消すれば実施可能です)や洋上設置の大型風力発電の建設ならば、ある程度の即効性は、あるかもしれません(すいません。これは、多少、知識不足で書いています)。
今回は、以上で終わりにしたいと思います。
これだけ書いて、個人にも可能な対策が「予約注文販売」だけですね。
一般の人にもできるって意味でネット上で公開する価値があると思いますので、この「予約注文販売」の話は、別作品として独立で上げるつもりでいます。