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第1章 はじめに――「人間」とは記憶領域かという問い
「人間とは何か」という根源的な問題は、古代ギリシアの哲学者たちから始まり、近現代の科学者・思想家に至るまで数多くの考察を呼んできた。一般には、「物質的身体」「意識」「社会的存在」「言語運用者」など様々な定義が試みられるが、近年は脳科学や情報理論、コンピュータ技術の進展を背景に、「人間とは記憶を保持し、運用する“記憶領域”ではないか」とする見方も注目されつつある。
この問いは、人間のアイデンティティにまつわる問題や、身体・意識・記憶の関係、さらには情報理論的に見た「記憶」と「自己」の同一性に深く関わる。本稿では、まず「人間を記憶領域と見なす」という思想の由来や、脳科学や認知科学が示す知見を概観しつつ、哲学や宗教の観点との接合点を探る。さらにAI・情報理論との融合や、仮想現実説なども視野に入れ、「そもそも人間が持つ記憶とは何か」「それを単なる領域と呼んでよいのか」という問題を総合的に検討し、最終的に「人間」をどう捉え得るかのヒントを提示したい。




