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ハーンのミサイル  作者: 有嶺 哲史
第二章 諸国のうごめき
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標的の国

 ここはジパング。

先の大戦が終ってから八十余年が経っていた。

聖上のご退位に伴いこの年改元された。

新元号を高靂(こうりゃく)と言う。

高い雷の意味だそうだが


「読めないわよねえ、誰も。それに好きになれないわ、この画数の多い字は」


「〝コウリャク〟って読むらしいぜ。戦って占領する意味だ、景気がいいな。さてと……あれ、書けねえじゃあねえか」


これほど世間から好かれなかった年号はなかったが、字の感じが好まれたか幟旗(のぼりばた)がたまに見られた。



 高靂元年の夏、ここは危機管理の時に使われる総理官邸の地下。

地味な老人が二人いた。

総理とあと一人の、他に立会人も誰もいない会議は極めて異例だった。

額の光は老人特有の皮膚のテカリか油汗か判らなかった。

総理は言った。


「そうか……やっぱり。では、やろう。進めてくれ」


「承知しました」


ハーンが夏離宮で重大な決断をしたという極秘情報が飛び込んできた。

C国に遠大で不穏な秘密戦略があることは以前から政府内で推測されていた。

ついにそれが始動したのだろう。

その戦略では我が国も直接の標的の一つだということも判っていた。

それで以前から対策が練られていた。

一部に憲法違反と疑われるものがあるため極秘の作業であり、今回も秘密の決断だった。



 相手の人物はc.c.s (チーフ・キャビネット・セクレタリー)だった。

スキャンダルのように危ない時でものらりくらりと捕まらないので、あだ名は〝ナマコ爺〟だった。

脊骨のあるナマコはそれからあちこちに連絡しまくった。

数日後c.c.sは我が国を代表する製造業やIT企業のトップ達と個別に密談していた。

最後の決断を待っていた秘密の対策についての話だった。


「例の事業、ついに決定しました。これからは特に秘密漏洩にご注意を……」


前任のc.c.s.は知ろうともしなかったようだ。

閣僚でもこの事業の真の意味を知っている者はほとんどいない。

内容は分散され、ごく一部の大企業だけが全体の秘密を知り得るまとめ役になっていた。

c.c.sと密談していたのはそのような社長達だった。

昔から秘密厳守の事業をしていた彼等にその後一般の耳目を引く変化はなかった。

政府内では宇宙関係と軍備の増強の秘密指示が出されたが、総理をはじめ皆表向き特別なことをしていないふりをしていた。



 ここはA国、我が国の総理とc.c.s.が密談をしていたころだった。

大統領は執務室で情報機関から一人で重大報告を聞いていた。

世界はまだほとんど気づいていない。

初当選して二年目なのにぼーっとした風貌の高齢大統領は大好物のハンバーガーを頬張る手を止めなかった。

そのうち全く反応しないと思ったら大統領は食べている途中で寝ていた。

腹を立てた報告者は思いっきり大統領の悪口を言った。

大統領は歳の割に耳が良かったがしばしば聞こえていないフリをした。

寝ているフリをすることもあった。

そして突然眼をパチッと開けて周囲を驚かすことをよくやった。

このときも報告者は飛び上がった。

彼がそのあと解任されたのは言うまでもない。

人事がよく分からない、とマスコミに言われる大統領だった。


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