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ハーンのミサイル  作者: 有嶺 哲史
第六章 第二次戦役
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戦略の破綻

 ミサイル攻撃はC国最奥地から撃ってきた一発が最後となって休止している。

まだ我が国土とその近海の戦いが終わる気配が無い。

陸上での戦闘は通常兵器のみで、互角の戦いだったが我が軍の弾薬が不足してきた。

共通の武器を使っているのでA国が援助しようとしたが我が国兵士の体格と弾薬量が合わず使えないものがあった。

戦場となった我が国の地上軍は頑張っているが海外からの補給速度が追いつかずじり貧になり、いずれ総力を使い果たしそうだ。

一方海上封鎖をしているC国もその外側にA国海軍がいるため食品、武器消耗品の渡海補給が困難になって来た。

主力海軍ははるか遠方にいる。

飛行機はミサイルで落とされ、船で運ぶしかないが周辺海域には敵の潜水艦がうじゃうじゃいる。

他にも多数の第三国の艦が紛れ込んで邪魔になっていた。

C国が潜水艦の天敵である対潜哨戒機らしきものを出してくればおれたちに発見されて連絡を受けた地上軍、海上軍のミサイルが撃墜した。



 戦線の膠着はC国にとって予想外だった。

ジパング全体が先の大戦におけるガダルカナルのように見え始めた。

まだC国もやめる気配がないので、おれは地上に或る提案をした。

しかし地上からの返事はいつまで経っても〝検討中〟だった。

地上軍もA国海軍もC国内を攻撃可能なミサイルを持っていたが未だにそれを使わない。

現実に多数の核ミサイルが飛来していたことを国民は全く知らないので国内からの突き上げもなかった。

後で判明したが、実はA国大統領が裏で如何なる国もC国内部を攻撃することを強く禁止していた。

小さな同盟国の気づかぬところで大国同士は気を遣いあっていた。

小さな同盟国の行動が大国同士を核戦争に引きずりこむことを極度に恐れていた。



 だがそんな大統領の禁止命令はおれには無関係だ。

おれは口の中でジパングに独立宣言してミヤコに独断命令を下した。



「全エネルギーを集中しろ! そして」


主コンピュータは従うだろうか、それは杞憂だった。

あの魔神アバターが勝手にモニターに少し顔を見せてニヤッと笑った。

おれの考えをいつも先読みするのはこいつか、と思ったが


「まず初めに彼らの首都の宮城の庭を焼け! 焼け野原にしろ!」


魔人は喜んだ。

おれが出来る攻撃命令は二つのボタンを押すことだけではなかった。

おれの言葉による命令に我が宇宙軍団は驚きもせず忠実に従った。

まもなく十匹のステゴちゃんが最大出力の赤外線で一点集中照射をした。

おれは次々照射目標を指示していった。



 首都のかなりの面積を占める広大な宮城の庭園の複数カ所から発火し山火事のようになった。

強風に煽られ宮殿は真っ赤な炎に囲まれた。

ついでなんでこんな場所に作ったのか、と思われるような内陸奥深くの軍事基地らしきものが次々燃え始めた。


上都の仮離宮まで燃えた。

相次ぐ知らせに皇帝(ハーン)は一時、肝をつぶし錯乱した。



「バイズめ、地獄から戻って来おったか!」


「陛下、国内に敵の軍隊はおりません」


「見えぬか! 敵はおる。ジパング方面軍を全て引き揚げろ。急ぐのだ!」


狂ったように叫ぶハーンは誰にも止められなかった。

この間丞相バヤンは


〝陛下は変わりつつある〟


そう見ていた。これから不穏分子の平定戦争だ、と思う彼は若やいできた。



C国を燃やした一連の火事の原因は園丁のタバコだろう、と海外紙は書いた。

だがハーンはジパングの謎の衛星兵器がC国内戦略爆撃を開始したことを直感した。

攻撃は国内のあらゆる所に及び始めた。

せいぜい火事を起こすくらいだ、と軍人の言うように実際の被害は軽い。

しかし長引く戦争に宮廷人の多くは最初に思っていたような勝利はもう望めないだろうと感じるようになった。

このころ再びC国内部とA国間の衛星通信量が急速に増えていた。

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