黒炎龍VS巨大ロボ、叫べウェルブレイバー!!⑥
「ようやく追い詰めたぜバルハムート!」
「ギャオォォォォ!!」
アニメやゲームで馴染みのドラゴンが目の前にいるオレを敵と認識して吠え叫ぶ。
日本じゃ味わえない肌に伝わる殺意。恐怖を軽く通り越して興奮すら思える。
だけどなんか拍子抜けでもある。
「気のせいか、近くで見るとあれだな…」
「そうね。私もそう思った」
「バルハムートって思ったより小さいんだな」
「ウェルがデカ過ぎるのよ」
あんなにアニメじゃ巨大で迫力があったのに、今じゃオレがヤツを見下ろしてる。
殺意丸出しの叫び声も野良犬の遠吠えのようだ。
これじゃ怖いものも怖くない。
「でも有難い。これならやれそうだ」
オレはセレンティーヌを少し離れた物陰に降ろす。
「セレンティーヌはここで待っててくれ」
「分かったわ」
「絶対動くなよ。下手に歩いて踏み潰されたくないだろ」
「自分の身くらい自分で守れるわ。その代わり必ず勝ちなさい。負けたら許さないから」
「負けるかよ。絶対に」
奴の強さをアニメを見たオレは誰よりも知ってる。
奴がどんな動きをしてどんな攻撃が強力なのか。
予習はバッチリ。後はオレがどれだけ動けるかだ。
最初のゴブリンやオークはほぼまぐれで倒したようなもの。
その次がいきなりドラゴンだなんて、これがプロレスならデビュー二戦目の選手がチャンピオンとシングルマッチをやるようなもの。
結果などやる前から分かってる。
だとしても勝たなきゃならない。
男にはやらなきゃいけない時があるのだから。
「行くぞバルハムート!!」
「ギャオオオオオオ!!」
戦いのゴングは打ち鳴らされると、我先にと前へと駆け出す。
喧嘩すらままならないオレの出来ること。
それは、
「殴るだけだ!!」
意を決して放たれた拳骨パンチはバルハムートの顔面に直撃した。
「ギャアァァァ!」
「(や、柔らかい…)」
それがオレの初めてドラゴンを殴った感想だった。
思春期時代、枕を相手に日頃の言葉に出来ない鬱憤を思いっきりぶつけていた時を思い出した。
想像してたよりは気持ちいいかも。
「このまま押し切る!」
だが相手は腐っても災厄の異名を欲しいままにするドラゴン。
たかが数発殴った程度で大人しくなる訳もなく……
「ギャオオオオオオッ!!」
バルハムートは大きな翼をはためかせ宙へ飛び上がる。
「やっぱそう来るか」
問題はここからだ。
原作でもバルハムートは地上戦より上空戦を得意としていた。
安全な場所から一歩的に攻撃を繰り出し続けるのだ。
ラスボスなだけあって本当嫌な性格してるよ。
怒りを露わにしたバルハムートは「さっきのお返しだ!」とばかりに複数の黒き火球がオレに降り注ぐ。
「いった!あっつ!!……あれ、熱くない?それに痛くもない…」
反射的にリアクションはしたものの、感じたのは多少の衝撃程度でこれといった痛みは何も感じなかった。
だが、視界の上に表示されている数値が93%に減っている。
痛みは感じずともちゃんとダメージは受けてるってことか。
これがゼロになったら……そういうことだよな。
「その前になんとかしなきゃな」
しかし、バルハムートの勢いは止まることを知らず次から次へと攻撃が繰り出され続ける。
反撃をしようにも残念ながらこちらは空を飛べそうにない。
だったらせめてミサイルとかビームでも撃てればいいのだが、今の所それも期待出来そうにない。
その間もジリジリと%を示す数字は減っていく。
この野郎いい気になりやがって…空も飛べず、ビームも撃てない。それでどうしろって言うんだよ!
「ギャオオオオ!!」
呆然一方のオレを見てドラゴンは嘲笑うように更に攻撃の勢いを増していく。
「ヤベぇ……」
このままじゃこっちが押し切られるのも時間の問題だ。
まだ生のユナにも会ってないってのにここで終わりなんて流石にごめんだぞ。
「キャーー!!」
「なっ、」
柄にも無いセレンティーヌの甲高い叫び声。
火球は狙いを定めず無闇矢鱈に発射され続けた挙句、今にもセレンティーヌの下に降り注ごうとしている。
「チッ!アイツが死ぬのはまだ先なんだよ!!」
恐怖の余りセレンティーヌは咄嗟に目を瞑ってしまう。
複数の火球が何かに直撃する鈍い音がすぐ側で聴こえる。
ゆっくりと目を開けると、目に前にはセレンティーヌを庇うように覆い被さるウェルブレイザーの姿があった。
「…ウェル!」
どうやら間に合ったみたいだ。
セレンティーヌもこんな顔するんだな……。
「……無事か?」
「うん。ウェルのお陰でね。でもそっちは大丈夫なの?…」
「今のお前と同じだよ」
「え?」
「この程度擦り傷ってことだ」
「よく言うわ…。結構ボロボロな癖に」
「そうか?オレはまだまだやれるぜ」
「生意気な子…。いいわ。だったらさっさと勝ちなさい!私の部下なんでしょ!」
もういつものセレンティーヌの顔に元通りかよ。
あんな顔も悪くは無かったが、こっちの方がセレンティーヌらしい。
「言われなくてもそのつもりだ!」
だけどもう油断は出来ねぇ。なんだかんだ言ってゲージも50%を切ろうとしてる。
序盤にしてはちょっと喰らいすぎたかな…ダメージのせいか最初より体の反応が遅くなってる気がする。
「さて、どうしたもんかな〜……」
「ちょっと、さっきの威勢はどうしたのよ!!」
「しょうがないだろ!やろうにも攻撃のしようが無いんだから!」
「何よそれ!」
「グアァァァァァ……」
揉めるオレ達を見て勝負有りと見たのかバルハムートはトドメを刺すべく力を溜め始める。
「あの動き……ブレスが来るぞ!」
「あっちは終わらせる気みたいよ。何とかしなさい!!」
「おま、何とかって、無茶言うなよ!やれるならとっくにやってるって!」
「それを何とかするのがアナタの役目でしょ!炎なんて弾き飛ばしちゃえばいいでしょ!」
これだから悪役令嬢は……。
「炎なんて喰らったら燃えてしまいますー!!大体それが出来ればもうやってるって。武器も無いのにどうしろって…いや、待てよ」
空は飛べない。ビームやミサイルも撃てない。
だけどスーパーロボットに武器が全く無いとはとても考え難い。
遠距離武器が無いなら近距離武器ならどうだ?
例えば……剣!
――WEL BRAVER STANDBY――
突如として目の前に浮かぶ英文字の横にはご丁寧に剣のようなマークも見える。
「おっ!」
ウェルブレイバーっていうのか。
「で、どこだウェルブレイバー!これか、いや、こっちか!?」
身体中を手探りで探してみるが、それらしき物は見つけられない。
「無いじゃん!」
流暢にしてる暇なんか無いってのに、一体どこにあるんだよ!
ん?……
目の前に見える英文字の横には剣のマーク。
そしてよく見るとその隣にはマイクのようなマークもあるぞ。
剣のマークは多分そのままの意味。
じゃあマイクのマークから考えられる意味は…
恥ずかしがってる時間は無い。これに賭けるしかない!
「来いウェルブレイバー!!」
オレはヒーロのように大声で叫びながら空高く天に手を掲げた。
――OK!!――
すると何処からともなく時代設定ガン無視の近未来感極まりない大剣が地面に突き刺さる。
「あっぶねぇ!…ちょっと擦ったぞ今!」
これがオレの武器。ウェルブレイバーか!
いいね、男の子なら一度は憧れる愛してやまない巨大武器。
デザイン性重視で利便性皆無の何に使うか分からない謎機構も付いてるしで、控えめに言ってもいいセンスしてるよ。
「ギャオオオオオオ!!」
ここで時間切れ。とうとう力を溜め終えたバルハムートが一気にそれを解き放つ。
「ウェル!!」
ウェルブレイバーを手にした途端、自然と使い方が頭に入ってくる。
読むのも億劫になりそうな文字の羅列や何百パターンに予測された戦闘時のシミュレーションなど戦うために必要な情報が全て頭に叩き込まれていく。
「ぶっつけ本番!やるしかねぇ!!」
放たれた黒き炎を一本の大剣が真っ二つに切り裂いた。
「チャージアップ!」
ウェルブレイザーの掛け声を合図に大剣が展開。
切り裂かれた黒き炎はウェルブレイバーの核に吸収されていく。
ウェルブレイバーはただの大剣じゃない。敵の力を自らの力に変える事が出来るんだ。
原理は知らん!
「ギャオオオオ!?」
自らの炎が吸収されていく様子にバルハムートも動揺を隠せない。
「さっきは好き勝手やられたからなぁ。借りはキッチリと返させて貰うぜ」
――READY――
やられたらやり返す。全部まとめて、
「倍返しだぁ!」
刀身は真っ赤に輝き灼熱を帯びていく。
「ウェルブレイバースト!!」
災厄と謳われた黒き炎を眩き閃光が包み込む。
レールガンの如く発射された斬撃はバルハムートの体を貫いた。
バルハムート。お前を倒した奴が聖女じゃなくて悪かったな。
「グアアァァァ!!!」
黒炎龍は断末魔の叫びを上げながら爆発した。
「討伐完了」
爆破を背にして堂々たるVサインと共に勝ち名乗りを上げる。
…決まったぜ。スゲェ…めちゃくちゃ気持ちいい!!。
子供の頃から一度でいいから、こういうのやってみたいってずっと思ってたんだよな〜。
「ちょっと!!」
調子に乗って浮かれるウェルブレイザーを叱りつけるセレンティーヌの怒鳴り声が聞こえる。
「ん?」
気分はヒーロー。最高に気持ちいい瞬間だってのにこれじゃ台無しだ。
「どうすんのよこれ!!めちゃくちゃじゃない!!」
倒したまでは良かったのだが、さっきの爆発によって街は見るに耐えない程に被害は拡大。
倒された奴より倒した奴の方がタチが悪かったという奇妙な結果となってしまった。
終わってみて分かった。
どうやらバルハムートよりオレの方がラスボスの才能があるのかもしれない。
「あ、悪い…やり過ぎたなこりゃ……」
全然嬉しくない。
これが特撮なら良かったのにな…
◇◇◇◇◇◇
ウェルブレイザーがバルハムートとの戦いを繰り広げている頃。
「ここまで来れば大丈夫だろう。ユナ怪我はないかい?」
「うん。ありがとう…」
バルハムートの襲撃から見事に逃れた王子と聖女達。
王子はユナの身を第一に無事を確認すると改めて安堵する。
対照的に聖女は何処か納得行かないようで、王子に悟られないよう笑顔の仮面でイラつきを隠す。
「良かった。君だけでも無事でいてくれて」
そんなの当たり前よ。ここで死ぬなんて有り得ない!
「だけどなんでこんな事になってしまったんだ……?」
だからそれはこっちの台詞よ。
私は何も間違って無いはずなのに……どうして私がこんな目に遭わなきゃならないのよ!
「突如現れたあの黒いドラゴンは一体…」
はいはい、バルハムートでしょ。その位私でも知ってるわよ。
こんな時期に復活する筈じゃないってことも全部知ってる。
だけど一番問題なのはもっと別。
「それだけじゃない。ドラゴンと戦っているあの巨大な生物はなんなんだ?…街を守ろうとしているようにも見えるけど」
それよそれ。ほんとなんなのアレ。
この世界はガン○○でもマク○○でも無いのよ!
あんなのこの世界に存在しちゃいけないのよ!
「この世界はどうなってしまうのでしょう…ジェイク様私は心配です」
内心とは裏腹に甘ったるい声と見え見えの安っぽい演技でこれ見よがしに王子に抱きつく。
流した涙が搾り出した一滴だとしても、王子は一切疑わず優しく抱き返す。
「大丈夫。この世界がどうなろうと君の側には俺がいる」
「ジェイク様……」
バルハムートの爆発を背に添えながら二人は熱い口付けを交わす。
「(……ここは私の世界よ。誰が相手だろうと絶対に邪魔はさせない!)」
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