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黒炎龍VS巨大ロボ、叫べウェルブレイバー!!②

 王が待つウィンドブルム城に続く道は全て煉瓦によって舗装されている。


 この道は普段から商人なども多く利用している生活通路でもある。


 僅かな段差すら感じられないように真っ平に舗装されたこの道は馬車の行き通りもスムーズで利便性がいいからだ。


 それだけじゃない。


 建物より巨大なオレが立ってもヒビ一つすら付かない強度を誇る。


 正直スーパーロボットのオレよりこの道の方が凄いんじゃないかと思えてくる位だ。


「……なぁ、ちょっといいか?」


「どうしたのウェル」


「あのさ、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど……」


 そんな街一番の大通りでもあるこの道は大勢の人で賑わいを見せている。


 そして今、セレンティーヌと共に俺は大勢の市民からの妙な視線に晒されていた。


「何が恥ずかしいのよ。堂々としてればいいじゃない」


「そうは言うけどさ…」


 オレを見た全員が最初は唖然とし、次に悲鳴をあげながら走り去っていく。


 こんな大勢の視線に触れることなんて、小学校の頃に発表会出た時以来だろう。


 何度も読み直して挑んだのに壮絶に噛み倒したんだ。あの時の恥ずかしさったらありゃしない。


 やばい。


 ただでさえこのアウェーな空気感に耐えられそうに無いってなに、思い出したらなんか余計緊張してきたかも…。


 急に腹痛と頭痛が酷くなったような。


 ロボなのに。


「あ、もしかして緊張してるの?」


「なっ、いや、そ、そんなことは」


「ふふっ。寧ろ目立っていいじゃない。迷子になっても直ぐに見つかるわよ」


「確かにそれはそっか。言えてる…て、納得できるか!こんなに目立っちゃトイレすら行けないじゃないか。行きたくなったらどうするんだ!」


「トイレ行くわけ?」


「……行かない」


 どうやらその心配は無用だった。


 この体になってから尿意などの生理現象を感じた事は一度もない。眠気も食欲も何も思わないし欲しいとも思わない。


 ロボットなのだから当然といえば当然だが、スマホだって充電しなきゃいつかは止まるんだ。


 だったらさ、食事も睡眠もいらないってなったら俺は一体何で動いてるんだ?


「セレンティーヌ俺の体のどこかにコンセントあるか?」


「コンセント?」


「穴だ穴。何かケーブルみたいなのが刺さりそうなやつ」


「えーーー、別に無さそうだけど…それがどうしたのよ?」


「いや、無いなら無いでいいんだ。いきなり悪かった。気にしないでくれ…」


 家電じゃないんだから流石に充電式って事は無いか。


 我ながら自分の体のことがよく分からない。


 何で動いてるのか、いつまで動いていられるのか。スーパーロボットの体は不思議でいっぱいだ。


「おい、デカブツ」


 聞いたことも無いようなドスの聞いた低い声が下から聞こえる。


「どうしたレイフォード」


「あぁ?…」


 わーーまた睨んでるよ。


 目からビームでも飛び出してきそうだ。


 そんなに俺に呼び捨てで呼ばれるのがイヤなのか?


 だけど怒った顔もカッコいい。 


 この状況レイフォード推しからしたらある意味ご褒美だな。


「な、なんでしょうか?…レイフォードさん」


「最初に会った時から思ってたことがある。ずっと言おうと思ってた」


 ほらな。


「セレンティーヌ様だろ。セレンティーヌ様!部下の癖に何一丁前に呼び捨てしてんだ!」


「え、そっち?」


「それ以外何があるんだ!」


「いや、オレはてっきりレイフォードとアナタの名前を呼び捨てにした事を怒っているのかと」


「俺の呼び方などどうでもいい!俺だって、俺だってな…そんな風に呼んだことは一度も無いんだぞ!羨ましいじゃないか!」


 な〜んだ、ただの嫉妬か。


 そういえばそんな設定もあったな。


 レイフォードはセレンティーヌに一目惚れして執事になったってやつ。


 運営的にはそっちの恋愛もやれるようにって最初の設定を作ったんだろうけど、結局最後までその恋が叶うどころか、それっぽいシーンすら無かったんだよなぁ。


 セカンドシーズンの途中辺りから徐にバトル要素やシリアス要素が強くなって、それどころじゃ無くなったんだろうな。


「お嬢様も少しは怒ったらいかがですか?部下なら躾はしっかりしておかないと」


「いいじゃない。名前くらい。レイフォードもそんなことで気にしないの」


「お嬢様がそう仰るなら……」


「いいのか?これからも呼び捨てで」


「ええ。アナタは私の物だもの」


「ではお嬢様。私もこれからはセレンティーヌと、」


「レイフォードはダメ」


「えぇ!?何でですか!」


「何ででも。今度呼び捨てにしたら執事クビにするわよ」


「そんな〜〜…」


 あーあ、あんなに落ち込んじゃってると見てるこっちが悲しくなる。


 この分じゃ二人がくっつくエンドはこの世界でも無さそうだな。


 アニメ見てた時から仲は良さそうなんだけどな、どうも友達以上恋人未満って空気から抜け出せる気がしないんだ。


「レイフォードしっかりなさい。そんな顔してちゃアイツらに私がバカにされる」


「……失礼しました」


 先に見える大勢の兵士達を前にレイフォードは涙を拭い背筋を伸ばす。


「それでよろしい」


 それにしてもとんだ歓迎ぶりだな。


 たった一人のために一国の兵士達が勢揃いしてるんだから。


 それだけこの国にとってカイゼルの名は力を持ってるってことか。


「…なぁ、この機会逃すと暫く聞けそうにないからさ、もう一つ質問いいか?」


「別に良いけど何でも知りたがる男は嫌われるわよ」


 ぐっ…前の彼女にもちょっとしつこいって言われたの思い出した。


「いいだろ…ここまで強引に連れてきたんだ。何のためにここに来たのかくらい教えてくれよ」


「じゃあ簡単に。私と婚約破棄をした男が決闘に負けたくせにその約束まで無効にしようとしたから、その父親が私に謝りたいんだって」


 決闘ってことはあそこのシーンか。


 婚約破棄されたセレンティーヌが怒ってユナとの婚約破棄を賭けて戦ったあの決闘。


 結果は当然ユナが勝ってセレンティーヌは返り討ちに合うって展開だった。


 ……待て。今、なんて言った?


「決闘に負けたって誰が?…」


「王子の新しい婚約者」


「まさかと思うが、それってユナ・デルフィンじゃないよな?」


「へぇーやっぱりスーパーロボットって何でも知ってるのね。分かってるなら聞かないで」


「おいおいマジかよ……」


 ユナが負けた!?


 同人誌でもそんな展開見たことないぞ。


 そもそもあの決闘は負ける筈が無いんだ。


 大体これはファーストシーズンの最終回だぞ。


 セレンティーヌの邪魔も無くなり正真正銘王子と聖女が結ばれる。


 王道な展開だからこそ二人の微笑ましい様子と共に流れるエンディングはテンポも良く最高だった。


 それなのに、ここで負けたら次に繋がるどころか、物語が終わらないじゃないか!


 バッドエンドもいいところだ!


 これでもファーストシーズンは賛否両論渦巻く〈ファンタジクス〉の中でも一番まともだと評価もそこそこ高いんだぞ。


 それなのに負けるって、一体どうなってやがる……。


「止まれ!!」


 野太い男の怒鳴り声が耳の中でこだまする。


 余りの声の大きさにセレンティーヌも耳を塞ぎうんざりとした様子を浮かべている。


「動くな。手を上に上げろ!」


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


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少しでも「面白そう!」「続きが楽しみだ!」


などと思っていただけましたら、下↓にある【☆☆☆☆☆】から、

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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


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