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黒炎龍VS巨大ロボ、叫べウェルブレイバー!!①

「バカかお前は!!」


「お、お父様!?…」


 王子ジェイクを叱りつける父親、国王ハンクの怒鳴り声は城中に木霊する。


「私の許可も無く決闘を受け入れた挙句その結果を無かったことにしただと…」


「アレはセレンティーヌがいけないんです。きっと何かイカサマでもしたんでしょう。じゃなきゃ愛しのユナが負けるわけがない」


「黙れ!!」


「っ……」


 喉を潰すほどのがなり声がジェイクを萎縮させる。


「ただでさえセレンティーヌ嬢とのこちら側の一方的な婚約破棄で関係が悪化しているというのに…お前はこの国を潰す気か!?」


「決してそんなつもりは」


「当たり前だ。そうであればとっくにお前となど親子の縁など切っておるわ」


「……お父様。私は何かいけない事をしたのでしょうか?私は純粋に心から愛する者と幸せになりたかった。それだけなのです」


「お前は……」


 この状況で開き直るのか我が息子は。


 呆れて物も言えん。


 いったいどこで間違えたいうのか。


「決闘を無断に行った事は謝ります。しかし、そもそもの原因はセレンティーヌにあるのです。彼女が私とユナの婚約を納得していればこんな結果にはならなかったのですから」


「それは王子としての言葉か?それとも我が息子ジェイクとしての言葉なのか?」


「…何を言っているのですか?どちらもではありませんか。私はこの国の王子で、貴方の息子なのですから」


 なんてことだ……全く会話の意味が理解できていないじゃないか。


 ここまで腑抜けになっているとは。


 こうなったのは恐らく息子が新たな聖女と出会ってからか。


「もういい……。これではセレンティーヌ嬢が納得しないのも当然だな。こちらの勝手な都合で彼女を裏切ったというのに……あーー頭が痛い」


「大丈夫ですかお父様!」


「大丈夫なわけあるか!!」


 心配して介抱に駆け寄ったジェイクの手を強引に振り払う。


「人のことを心配する前にまずは王子としてこの国の未来を心配したらどうなんだ!!」


「と、言いますと?…」


 唯一の一人息子を甘やかし過ぎた結果がこれか。


「はぁ…。いいか?お前の身勝手な行動がこの国に生きる人々数千万人の生活を脅かしかねんのだぞ!お前に責任感の意味が分かるならちょっとは王子としての身の振り方を改め直したらどうなんだ!」


「……お言葉ですが、私は王子として完璧だという絶対的な自負があります。だからこそ今までやってこれたのです。これ以上どうしろと?…」


 どの口が言っているのか。


 それすら分かっていないのだろうな…。


「……ジェイク」


「なんでしょうお父様」


「どうして家が近いわけでも無いのにセレンティーヌ嬢とお前が幼馴染なのか分かるか?」


「それは、彼女が一方的に私に近づいてきたからで」


「なわけわあるか。寧ろ近づいたのはこちらの方だ」


「え?」


「彼女の実家がこの国随一の大商会だというのは知っているだろ」


「ええ。実はこの服もセレンティーヌの店で買った物なんです。いいでしょう?」


 王は溜め息を吐きながらも何事もなかった様に話を進める。


「我々は昔から彼女の実家と優先契約を結ぶことで他の国より安く、かつ最先端な物資を取り入れる事ができた。この国が他国と比べて資源が豊富なのもそれが大きい」


「分かっています。だからお父様は私の婚約者にセレンティーヌを選んだ。この契約を永遠にする為に」


 おいおい、だったらさっきまでの的外れだった答えはなんなんだ。


「……そこまで分かっていたら、どうしてあんなことをした?」


「彼女に出会って気づいたのです。一度きりしかない人生、自分の気持ちに正直になるべきだと。私が本当に愛しているのはユナだけです」


 ジェイクが婚約破棄をしたいとワシに初めて言った時も奴は同じ事を言った。


 今までワシに歯向かうことなど一回も無かった。


 だからそれが父親として純粋に嬉しかったのかもしれない。


「知っている。だからその言葉を信じた。だがそれは間違いだった……」


「どうしてですか!?お父様が認めてくれたからこそ私は、」


「それが間違ったと言っている!…恐らく今回の騒動で彼女達の実家は相当怒り心頭だろう。このままでは長年続いた契約も破断になりかねん。そうなればこの国はおしまいだぞ」


「そんな大袈裟な……」


「大袈裟じゃない!」


 交易も生活もこの国は大商会の取引きに頼りきっている。


 他所との取引きが他に無い我々にとって大商会はこの国の命綱。


 もしもそれが破談なんてことになれば一ヶ月も経たず、国民の生活は愚か、この国の存在自体危うくなるだろう。


「ただでさえ婚約破棄のことで我々の印象は最悪なのだ。なんとか死に物狂いで取引きだけは続けてもらえるように交渉しなければ……」


「大丈夫です。こちらには聖女ユナがいるのです。彼女が祈ればきっとなんとかなる筈です」


「まだ分からんのか!聖女にそんな力はない!」


 恋は盲目。息子の目にはこの国の未来は映っていない。


 ◇◇◇◇◇◇


「さぁ入ってちょうだい。ここが貴方の部屋よ」


 セレンティーヌに連れてこられた俺の新しい部屋は彼女の住む屋敷の内の一室にも関わらず一軒家のように巨大だった。


「すげぇ……」


「元は私の部屋だったんだけど、今は使ってないからアナタにあげるわ。好きに使ってちょうだい」


 なんて広さだ…。


 巨大ロボットになったことを忘れるくらい天井が高い。


 俺が一人暮らししてたマンションがドールハウスだったんじゃないかと疑いたくなるくらいだ。


「驚いた。俺はてっきり広い倉庫の一室でも貸してくれるものと思っていたんだが、まさか俺が住める部屋があるとはな…」


「パパがこの屋敷を作る時にどうせならって広くできるだけ広くしたのよ。だけど広すぎて困ってたから丁度良かったわ」


 他の部屋は普通より大きいくらいだった。内部構造どうなってんだ!?とは思ったがそれを異世界で聞くのは野暮ってもんだろ。


「流石は商業王ラインハードの家だ。金持ちの考える事は生涯庶民だった俺にはさっぱり分からねぇぜ……」


 彼女がこの国を裏から牛耳る大商会の娘でめちゃくちゃ金持ちだってのは知ってたけどここまでとはな。


「あれ?おかしいわね」


 待て、急に悪寒が…。


 それになんだ、突き刺さるようなセレンティーヌのこの妙なプレッシャーは?


「ど、どうした、何かあったのか?…」


「私、パパの名前アナタに話したっけ?どうして知ってるのよ」


「あ、」


 しまった。つい、登場人物の名前を全部覚えていたばっかりに。


 これだから勘がいい女と無神経な女は苦手なんだ。


「実は最初に会った時から引っかかってたの。私を初めて見た時のアナタの様子がちょっと変だったから」


「いや、それは……」


「ねぇやっぱり教えて。アナタは一体何者なのか。返答次第じゃここから出て行ってもらうわ」


「なっ!……」


 自分から言っといてそんなのあんまり過ぎやしないか。


 実はこの世界は俺の知っている物語の世界で、人間だった俺は異世界転生して何故か巨大ロボットになってこの世界にやってきたからなんでも知ってるんだ。


 なんて支離滅裂な理由を話せるわけがないだろ。


 上手く話せる自信も無いし、信じてもらえるとも思えない。


「答えて。アナタは私の敵?それとも味方?」


 だけど、言わなきゃこれから俺はもうすぐ四十にして初めてのホームレスデビューを決めることになってしまう。


 こうなったらこれ以上変に怪しまれない内に強引にでも誤魔化すしかない。


「それはだな〜……あの、あれだ!そう、俺がスーパーロボットだからだ!」


「スーパーロボット?何よそれ」


「俺みたいな奴を故郷じゃそう呼んでたのさ」


「へぇ〜。でも、それとこれとがなんの関係があんのよ」


「お、大アリさ。何せ俺はスーパーなロボットだからな。普通じゃ分からない事も俺には見ただけで分かるのさ!」


 ……全く納得してないって表情だな。


 やっぱり、スーパーロボットだからで何でもかんでも押し切るのは流石に無理あったか。


「…アナタ面白いわね。いいわ。そういうことにしておいてあげる」


「ありがとう。理解が早い上司で助かったよ」


「礼なんか結構。ま、アナタが何者だろうが最初から興味もないし、どうでもいいんだけどね」


「なんだよそれ…」


「悪かったわよ。アナタの動揺する様子が見たかったの」


 なんて女だ。


 こっちが焦る様子をみてそれを楽しんでたっていうのか。


 やっぱり悪役令嬢、そのやらしい性格は原作通りだな。


「でも不思議。慌ててるのは見て分かるのに、顔色どころか表情すら全く変わらないなんてね」


 そりゃあロボットだからね。喋るために口は動くけど、瞬きどころか悲しむことも笑うことすら出来ない。


「それがロボットなんだ。その内慣れるさ」


「きっとそうね。明日にはなんも気にしてない気がするもの」


 俺もその内、今は違和感だらけのこの体がも普通だと思える時が来るんだろうか。


「失礼します」


 まただ。


 なんでかレイフォードと目が合う度に睨まれるんだよな〜。


 まぁ、会って一日足らず、オレを信じられないのも当然だけどさ、中々傷つくものがあるよね。


「…お嬢様。国王ハンク様より、今回の件で謝罪をしたいとの旨の手紙が届きました」


「えらく早いわね。どこぞの王子と違って国王はまだまともってことかしら」


「一応お尋ねしますが、いかがなされますか?」


「国王名義の招待状貰って断れるわけないでしょ」


「ですよね…」


「紹介しなきゃなんない新しい部下もできたことだし丁度いいわ」


「え!?コイツも一緒に連れてくんですか!?」


「…ってオレも行くのか!?」


 うっかりしてた。てっきりオレとは関係ない話とばかり。


「私の部下なんだから当然でしょ」


「しかし、街中にこんな巨人を連れてきたとなれば、街中は大騒ぎ。警備中の兵士達が黙っていないのでは?」


「レイフォード、あ、」


 オレが名前を呼び捨てにした途端再び物凄い形相で睨みつけられる。


 怒ってる。めちゃくちゃ怒ってるよ。


 だけど、普段アニメのキャラにさん付けとかしないからつい呼び捨てで呼んでしまった。


「…彼の言う通りだとオレも思うぞ。第一攻撃されたらどうするんだよ!痛いのは嫌だぞ!」


 今の俺は不審者より不審だからな。


 威嚇もなしに発砲されたって文句は言えない。


「大丈夫よ。王の客人となればあっちも下手には動けないわ」


「そういう問題ではありませんお嬢様!こちらに敵意があると思われてはならないと言っているんです」


「それならそれでいいじゃない」


「え、」


「こっちはこの国の王子に散々弄ばれたのよ。それなのに何も言わずに謝罪を受け入れるなんて冗談でしょ。このくらい強気の姿勢を見せなきゃかえって舐められるわ」


 何度も言うけどやっぱり悪役令嬢は伊達じゃない。


 帝王学っていうか、上に立つだけの器みたいなものが彼女にはあるように思える。


 才能ってやつだろうな。


 それにしても国王からセレンティーヌ宛ての手紙か。


 この世界が俺の知ってる〈ファンタジクス〉なら、おそらく物語通り世界は進んでいく筈。


 だけどアニメにそんなシーンあったっけ?


 一応映画含めて全シーズンは最低でも三週は見てる筈なんだけどな……。


 俺が偶々忘れているだけか?


 それともこの世界は俺の知ってる〈ファンタジクス〉の世界じゃなかったりして。


 いや、それはないか。少なくてもここにいるセレンティーヌやレイフォードは俺がアニメで見てた頃のイメージまんまだし。


「…因みにこのことパパには伝えた?」


「いえ。お嬢様が初めてです」


「そう。ならそのまま黙っておいて。私が二度も王子に裏切られただなんて知ったら、何するか分かったもんじゃないから」


 パパって商業王ラインハードのことだよな。たった一代にしてカイゼル商会を業界トップシェアまで登り詰めさせた天才だ。


 元サラリーマンとしてはその才能が憎くて堪らなかったのはここだけの話。


 二人の話を聞くに、物語通り彼は今この国にはいないらしい。


 といってもそのパパが今何をしているのか、そもそも素顔すら俺は知らない。


 何しろアニメに出てくるのは名前だけで物語にも殆ど登場しなかったからだ。


 要するに大人の都合ってやつだ。アニメには尺ってもんが決まってるから。


 そういえばカイゼル商会はウィンドブルムとの独占契約を結んでるんだよな。


 だからこの国で手に入る物資や生活に欠かせないライフラインまで全てをカイゼル商会の商品が賄ってるってわけだ。


 ほら、きっと使う事はないであろうテーブルにもカイゼル印が。


 オレが寝るには小さ過ぎるキングサイズのベッドも勿論カイゼル製。


 あそこのソファーや食器も目に入るもの全てがカイゼル印の商品だらけ。


 見た目からして高級そうだけど、どれもお値段以上の価値がありそうなものばかりだ。


 ……自分で言っててイヤになりそうだ。こんだけ広い部屋にこれでもかってくらいの豪華な家具が揃ってるってのに使うこともできないんだ。


 ある意味地獄かもしれない……。


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