悪役令嬢暗殺計画③
「ねぇこれどういうことよ……」
「どうって何が?」
「あんなことがあって昨日の今日よ。なのになんで私の所に一人も警護がいないのよ!!」
二人の結婚式を襲った襲撃事件から一日。王の説得もあってセレンティーヌが犯人の疑いは無くなったものの、真犯人が捕まるまでセレンティーヌ達には外出禁止命令が降った。
「そりゃそうだろ。今やこの国の兵士の殆どが聖女と王子の護衛に駆り出されてる。それどころじゃないんだろ」
「だとしてもよ。あの場にいたのはあの女だけじゃない。私だって狙われたのよ!なのにこんな対応あんまりじゃなくって!?」
屋敷にいるのはオレとレイフォードだけ。命を狙われたってのにいつもと変わらな過ぎる。
きっとそれが気に食わないのだろう。
「お前が真犯人だと疑われてるからだろ?日々の行いが悪いからこうなるんだ」
「本当にそうかしら。冤罪をふっかけられなきゃいけないような悪いことをした覚えはないんだけど」
「お前の行動は誤解されやすいんだよ」
人を見た目や噂だけで判断しちゃいけないのは分かってる。
だけど無意識のうちにそう思ってしまう。
「お嬢様、警護の方はご安心を。私とデカブツが命を賭けてでもお嬢様をお守りします」
「ありがとうレイフォード。でも大丈夫。心配してるのはそこじゃないの。私はあの女のやり方が気に食わないのよ」
ほらな。
でも気持ちはごもっともだ。キレていいならオレもキレたいくらいだ。
この件が落ち着いたらいい加減この世界のユナが何をしたいのかはっきりさせなきゃな。
これ以上オレの好きだったユナを嫌いにはなりたくはない。
その間もセレンティーヌはイライラしながら時には愚痴を溢しつつ書類仕事をこなしていた。
恐らく仕事をしながらの方が少しは気が紛れるのだろう。集中しても漏れてしまう程鬱憤は溜まっているようだが。
そんな時、部屋の窓ガラスが何かによって突き破られたのだ。
「また狙撃か!?でも今回はそんな反応無かったぞ……」
やはりレーダーにはそれらしい反応は無い。
だけどここを狙ったってことは狙撃手の狙いはセレンティーヌで間違いないな。
…それにしてもセレンティーヌの奴、随分冷静過ぎやしないか?
「おい!ちょっとは慌てたらどうなんだ!?狙われたんだぞ!」
「あーー大丈夫。これはいつものやつだから」
「いつものやつ?」
「レイフォード片付けておいて」
「既に」
気づいた時にはレイフォードが慣れた手つきで散らばったガラスの破片などを綺麗に掃除していた。
「何がどうなってる…」
割れた窓の付近を見てみると、紙が巻かれた石ころのような物が転がっている。
「もしかしてこれが当たって割れたのか?」
石に巻かれた紙を見てみると、そこには口にするのも躊躇ってしまう程の暴言が書かれていた。
「なんだコレ……」
「貸して。あらら、今日はまた張り切ったことが書いてあるわね。」
セレンティーヌはくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り投げる。
紙はゴミ箱の中へと吸い込まれていく。まるで熟練のバスケの選手が当たり前にゴールを入れるように、紙はゴミ箱の中へと吸い込まれていく。
「なあ、こんなことがいつも起きてるっていうのか?」
「そうよ」
「そんなのオレは知らなかった。ずっと屋敷にいたのに」
「偶々ウェルが気づかなかっただけよ。最近じゃ毎日どこかの窓ガラスは新品に変わってるわ。レイフォードいつものように業者に頼んでおいて」
「既に手配済みです。数分後には業者が到着するかと」
「流石ね。でもこんなに毎日頼んでるんだからちょっとは割引してくれたっていいわよね〜。なのに毎回定価だなんてほんとアコギな商売するわ〜」
「一度交渉してみましょう」
「断れても簡単に折れちゃだめよ。しつこくお願いすれば嫌でも安くしてくれはずなんだから」
狙撃と比べれば命を狙われたわけじゃない。でも、少し間違えれば何が起こるかは分からない。
オレだったらこんなことが毎日起きていれば、こんな平然に笑いながら会話なんてできないだろう。
なのにセレンティーヌはいつものルーティンのように決まったことをしているだけ。
「怖くないのか?…」
「別に。私にはレイフォードもいるしウェルだっている。それにもうこんなの慣れっこよ」
「慣れてるって…こんなの慣れるもんじゃないだろ」
「しょうがないでしょ。慣れちゃったんだから」
――接近中!――
「!!」
あの時と同じだ。
狙撃手の反応は無く攻撃だけの反応があるだけ。しかも複数が一斉に放たれている。
「セレンティーヌ逃げるぞ。今度こそ狙われてる」
「聖女の方は?」
オレは聖女のいる城までレーダーの範囲を広げる。
あの時、念の為聖女に発信機を付けておいて正解だった。
「いや、狙われてるのはここだけだ。あっちは平和そのものだな」
「良かった。後で文句を言える口実ができたわ」
丁度最後の書類に判子を押し終わり席から立ち上がる。
「……セレンティーヌ」
「何よ。逃げるんじゃないの?」
「一つ約束してやる」
「?…」
「あんなことに慣れてるっていうならよ、お前の命くらいはオレが守ってやる」
「…頼りにしてるわ。だけどウェルにしてはちょっとカッコつけ過ぎね」
「いいだろあのくらい。乗れよ」
そうやって直ぐにツンツンするのも照れ隠しかな。
オレはセレンティーヌを中へと誘う。ついでにレイフォードも。
「ひとまず屋敷を出るぞ。このままじゃ帰る家が無くなっちまう」
「そうして。サービスも無いのに家まで定価で支払うなんてごめんだもの」
◇◇◇◇◇◇
オレ達が屋敷を出ると放たれたミサイルな方向転換してそれを追ってきた。
「やっぱり狙われてるのはセレンティーヌで間違いないらしいな」
「どうして私なのかしら?」
「さあな。それを聞くためにも早く真犯人を見つけないと!」
このまま逃げ回っててもいつか追いつかれる。
だけど昨日の攻撃が原因で未だにウェルブレイバーは使い物にならないし……。
「まずい追いつかれる!」
すると突然、迫ってきたミサイルが目の前で爆破する。
「ガオッ!」
「クロスライガー!」
ウェルブレイザーのピンチを聞きつけ駆けつけたクロスライガーは口から波動砲を放ち次々とミサイルを迎撃していく。
「今日ばっかりはあの子の方が使えるわね」
「酷くない!?お前の指示で必死で走り回ってるのはオレだぞ」
「私の足になるのがウェルの役目でしょ。さあ早く走りなさい!」
「はいはい……」
「はいは一回」
「っ…はーーい!!」
クロスライガーが狙いやすいようにミサイルを上手く陽動しながら走り回る。
正直オレだけだったら直ぐにそこまで判断はできなかったかもしれない。
「お嬢様。それにしても真犯人は一体どこからこちらを狙っているんでしょうか?」
「問題はそこなのよね…このまま逃げれてもそれが分からない以上私達には勝ち目はないもの」
「これだけの攻撃を、しかもソイツは的確にお嬢様達を狙ってきてる。となればやはり近くにいるのでは?」
「だけどここはこっちからでも遠くの先が見えるくらい見通しのいい平面地帯で少し先には海があるだけ。近くには狙えるような高台も無いし、身を隠せる場所もないわ。やっぱりここから狙うのは無理よ」
「しかしここより遠い場所となると……」
「ウェルのレーダーにも引っかからないとなったら街は一つ超えないとね。ねぇ、そんな遠くから狙撃なんて可能なわけ?」
「腕利きのFBIでも無理だろうな」
「FBI?」
「そんな遠くから狙えるわけが無いって事だ。ほら、魔法にだって使える範囲は決まってるだろ。まぁ、オレが知らない魔法や得体の知れないモンスターが真犯人だったら分からないけど」
少なくても原作にはここまで離れた場所から魔法を使うなんて事はあり得なかった。
だけど真犯人がオレと良く似たスーパーロボットだったとしても、こんな離れた距離から攻撃なんて可能なのか?
「じゃあ犯人はどこにいるっていうのよ」
「だからオレに聞くなって。おっと危ねぇ!」
間一髪直撃するミサイルを受け止め空高く投げ飛ばす。
「危ないじゃないのウェル!もうちょっとで直撃するところだったわ!」
「上手く行ったんだからいいだろ!(ん?濡れてる?……)」
ミサイルを触った時僅かにひんやりとした触感。手には水滴も残っている。
まさかあの時触ったミサイルが濡れていたのか?でも雨も降ってないのに一体どうして……。
「そうか!だとしたら……」
オレはレーダーの範囲を周辺からある場所にだけ限定する。
狙撃手なら必ずどこかからこちらを見ているはず。だけどこの辺りにはそれらしい気配はなかった。
そう。この辺りには。
「…見つけた!!」
下を示すレーダーには狙撃手と思われる反応が赤いマークで点滅している。
「真犯人は海だ。オレ達は海底から狙われてる!」
「海!?」
どうりでいくら探しても見つからないわけだ。
海の底じゃ平面に広がるレーダーの反応には引っかからない。
今となって考えてみれば結婚式の会場の近くにも海があった。
そしてこの屋敷の外からは絶景のオーシャンビューが一望できる。
ちゃんと狙われた場所には共通点があったんだ。。
「だけどどうするの?場所は分かっても海の中じゃ攻撃のしようが無いわ」
「だったら近づくしかねぇだろ。ここにいたって一方的に狙われ続けるだけだからな」
「それもそうね。でもウェル?」
「なんだ?」
「一応聞いとくけどアナタ泳げるの?見るからに重そうだけど」
「それはそうだろ。だってカナヅチだからな」
自慢じゃないが子供の頃からオレは一度も浮き輪無しで泳いだ事は無い。
足のつくプールでさえ浮き輪が無ければ安心できない。
オレが泳げるとしたら、めちゃくちゃ頑張って家の狭い風呂が限界だ。
「ねぇそれどういう意味?」
「クロスライガー。オレの代わりにミサイルを引きつけてくれ!」
「ガオッ!!」
だけど今のオレはスーパーの付くロボットだ。
きっと泳げるし、多分防水。塩水程度じゃきっと壊れない。
なんとかなるさ。やるしかないんだから!
「ねえってば!」
「その内分かる!」
「は!?」
オレは意を決して海へと飛び込んだ。
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