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激突注意、進撃のタウライアス!②

 

「セルゼライン。あれからゲートの調子はどうだ。修復できそうか」


「ええ。なんとかまた使えるくらいには。ただ不安定なのは変わらずでこれ以上安定させるのは難しいかと。昨日のように大勢を一度にあちらの世界に送り込むとゲートへの負荷がかかり過ぎる。あの世界に行けるのは精々一人ずつが限界なのかもしれません」


「一人か……」


 あれがオレ達の知っているウェルブレイザーなら一体で戦うのは危険過ぎる。


 だがあれは本当にあのウェルブレイザーなのか?


 姿は愚か戦い方までまるで別人。何より奴の中には人間の反応があった。


 それが一番あり得ない。確かにオレ達の体には人間と共に戦うシステムが備わっている。


 だが誰でもいいというわけでも無い。共に戦う人間に心を許し心を通じ合わせなければならない。


 そんな人間簡単には現れない。だからオレ達はいつも一人で戦っている。


 奴だってそうだった筈だ。特に奴は人間を異常に毛嫌いしていたんだぞ。そんな奴が人間と共に戦うなどあり得るのか……。


「考えごとなら自分の部屋でしろ。邪魔なだけだ」


「タウライアス……」


 ずかずかとやってくるとモニターに映っていたゲートの状態を把握する。


「は〜ん。それで一人で考えごとか。お前らしいといえばらしいが、考える程の内容か?これは」


「当たり前だ。ゲートに一人しか通れないということは通った人間が帰ってくるまでは誰かが助けに行くことも出来ないということなんだぞ。一人で奴を相手にするのは無茶だ。何か方法を考えないと…」


「呆れた。それでリーダー気取りとは笑わせる」


「なんだと……」


「一人しか行けないんだったら無茶でも一人でやるしか選択肢なんかそもそもねぇんだよ!つべこべ言ってる前に動いた方がよっぽどいいだろうが」


 するとタウライアスは独断でゲートを起動する。


「待て。本当に一人で行く気か!?」


「当たり前だ。言っただろ。奴にトドメを刺すのはこのオレ様だとな。なのにオレ様が行かなくてどうする?」


「お前の強さは知ってる。だが一人じゃ無茶だ。時間ならまだある。せめてもう少しゲート様子を伺ってからでも遅くはない」


「…これ以上オレを失望させるなよ。こんな簡単な事もお前は決断できなくなったのか!!」


 ベルゼスターの手を強引に振り払う。


「今のお前には奴と戦う資格すらない。無論、戦うわせるつもりもないがな……」


 そのままタウライアスはゲートの中へと消えていった。


 ウェルブレイザーが変わったようにアイツも変わってしまった。


 ――


「ベルゼスター。お前を倒すのはこのオレ様だ!それを忘れるなよ!」


「分かってるさ。お前こそ忘れるなよ。お前を倒すのもこのオレだということを」


「……約束しろ。ジャスティゼイオン、イーゼクス。それに裏切り者のウェルブレイザー。ソイツら含めた上にいる奴ら全員。オレ達二人で越えるぞ」


「ああ。約束だ!」


 あの頃が懐かしい。


 昔から口の減らない奴だった。最初の頃こそ殆ど実力なんて変わらなかった筈なのにいつの間に遠い存在になっていた。


 それが悔しくて、悔しくて、オレは本気で強くなることを選んだ。約束を守るために。


 アイツがそうしたように。


 だが懐かしんでも何も変わらない。


 あの頃に戻れないようにあの頃のアイツはもういない。


 ◇◇◇◇◇◇


「998、999…1000!…1001」


 初めて敗北を喫したオレはあれから自己トレーニングに励んでいた。

 と言っても初心者の腹筋程度だが……。ロボットのオレに筋トレが意味のある行為なのかは分からない。だけど今のオレは何もせずじっとしているなんて出来なかった。


「お疲れ。ちょっとは休んだら?」


「…そうだな」


 珍しく部屋に篭りっきりだったからな。少し心配かけてしまったかもしれない。


「どうよ。次は勝てそう?」


「3日も続いてない付け焼き刃の筋トレ程度だぞ。それで自信がつくなら苦労なんかしないさ」


「それもそうね。でも勝ちたかったら無駄でもこんなことしてるんでしょ?」


「……」


 セレンティーヌはいつもこうだ。平気な顔でしれっと確信を付いた一言を投げかけてくる。

 答える方は受け止めるのだって必死だっていうのに。


「黙ってるってことはそんなに悔しかったんだ〜」


「当たり前だ。あんな負け方して悔しくないわけがないだろ」


「良かった」


「良かった?何がだ?」


「人間じゃないアナタでも私と同じ気持ちを抱くって分かったから」


 今まで見せたことのないセレンティーヌの表情。悪役令嬢には似つかぬ程の儚さな様な物を感じる。


「(ズル過ぎるだろその顔は……」


「何よ。話の途中で人の顔をジロジロ見て。何か付いてる?」


「いや、何も。続けてくれ」


「そう言われると逆に話しづらいのよね〜」


「じゃあ言わなくていい」


「ちょっとそこは聞きなさいよ。せっかく言おうと思ったんだから」


 セレンティーヌのこういうところも原作を見てるだけじゃ決して気付くことは無かった。


 そもそもこんなシーン原作じゃ不要だからな。あったとしてもカットされてるに決まってるもの。


「それで何が言いたかったんだよ」


「単純に思っただけ。だから答えたく無かったら答えなくてもいい」


「どんな質問をする気なんだよ」


「…人間じゃないアナタがどうして人間を守ろうとしたり、私と一緒に戦ったりしてくれるわけ?」


 また鋭い質問をサラッと。


 答えるのにとても困る質問だが、だけど答えは決まってる。


「それは…」


「成り行きだから?」


「勝手に答えるな。まぁ、間違ってもないけど」


「じゃあ他の理由は?」


「この世界(ファンタジクス)が好きだから」


 なんでこの世界に転生したとか、なんでロボットの姿なのかとか、分からない事だらけだけど今も昔も好きな気持ちは変わってない。


 結局の所はオレがこの世界で生きる理由なんてそれしかないのだ。


「なんだよ。じっとオレの顔を見て。今度はオレの顔に何か付いているのか?」


「いや、意外だったから…」


「そうか?」


「ウェルが本気になればこんな世界簡単に支配でも出来そうなのにさ。好きって事は今のままで満足なわけでしょ?」


「……いや、違うな。この世界の事は好きだけど今のこの世界はちょっと違う。気に食わないんだよ」


「気に食わないって何が」


「オレが言えた事じゃないのは分かってる。だけどさ、本来この世界にはオレみたいな奴はいちゃいけないんだ。オレ達みたいな異物がいるとこの世界は変わってしまう。だから守りたいんだよこの世界を」


 この世界はオレの知ってるファンタジクスの世界であってもオレの好きだったファンタジクスではない。


 どんなに世界が変わっても好きだった思い出だけは変えられず越える事もない。


 オレが原作のファンタジクスを知ってる限りは。


「ちょっと何言ってるか分からないわ」


「おい…。どこぞの漫才師じゃないんだから」


「だけど一つだけ間違いがあるのははっきり分かったわ」


「間違い?」


「ウェルは私の物よ。その時点でアナタはこの世界の異物なんかじゃない」


「セレンティーヌ……ずっと思ってたけど恥ずかしげもなくよく言えるな」


「恥ずかしい事なんて何一つ言ってないもの。そう思う方がおかしいのよ」


「それだそれ」


 だけど不思議とセレンティーヌが言うと不思議な説得力がある。


 ちょっと考え過ぎだったのかもと逆に冷静になった。


「あ、あともう一つ」


「まだあるのかよ」


「ウェルはさっき次勝てるかどうかなんて分からない無いって言ってたけどそれも間違い。ウェルなら次は絶対に勝てるわ」


「なぜそう言い切れる?…」


「ウェルブレイザーが私の部下だから。アナタを信じた私を信じなさい」


「またそうやって…」


「返事は」


「……あいよ」


「はいでしょ?」


「…はい」


 なんだかんだ言っても、そんなセレンティーヌがいるからこうやって戦えているのかもしれない。


 こんなに期待されちゃ、落ち込んでる暇なんかオレには無い。


「!この気配は……」


 感じるぜ。荒れる鼻息混じりの熱い気迫が。


「どうしたの」


「乗れセレンティーヌ。雪辱を果たしに行くぞ」


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