激突注意、進撃のタウライアス!①
「おすわり」
「ガウッ」
「お手」
「ガウッ」
「1+1は?」
「ガウ!」
「惜しい。そこはワンだろ〜」
「朝から騒がしいわね。何やってんのよウェル」
「せっかくだからな。色々と芸を覚えさせようとおもってさ」
クロスライガーを見てると、ついつい子供の頃に飼っていた愛犬の事を思い出すんだよな〜。この妙に人懐っこい感じとか本当にそっくりだ。
「まるでウェルのペットね」
「まぁ、そんな感じかな」
この世界で初めてできた家族みたいなものだ。愛着だってわくさ。
「ペットがペットを飼うなんて聞いたことないわ」
「誰がペットだよ。オレはただの部下であってお前に飼われてるわけじゃないんだよ」
「私が雇って、私の家に住んでるんだから飼ってるようなもんじゃない。良かったでしょ?私の屋敷がこの子も一緒に住めるくらい大きくて」
「確かに……確かにじゃない!」
やばいやばい。つい自分でも認めてしまうところだった。
だけどクロスライガーがオレよりは多少小柄だとはいえ巨大ロボットであることは変わらない。こんな規格外の屋敷じゃなきゃ今頃一緒に野宿だもんな〜。
「ガウッ!」
「お、どうしたクロスライガー。腹でも空いたか?」
「この子何食べるの?」
「なんだろうな〜?オレと同じなら食事とかは必要無いはずだけど」
「同じような見た目してるんだからウェルはこの子の言ってる事分からないわけ?」
「それがさっぱり分からないんだよな〜オレもそれにはちょっと期待してたんだがな」
同じ機械生命体、もっと言えばロボット。種族が同じなら言葉くらい分かってもいい筈なんだけど…もしかしたらクロスライガーとオレは似ているだけの全くの別物なのかもしれない。
「言葉は分からないが懐いてるのは間違いないな」
「そうね。ふふっ」
クロスライガーが仰向けにひっくり返って腹を撫でろとオレやセレンティーヌにねだっていた。
「お嬢様!」
「どうしたのレイフォード。そんなに慌てて。らしくないわよ。落ち着いて」
レイフォードは大きく深呼吸をする。
「……失礼しました」
「いいわ。それでどうしたの?」
「例の亀裂がまた出現しました。しかも、」
「しかも?…」
「一つだけじゃありません。二つ、三つ、今もその数は増えています!」
◇◇◇◇◇◇
早速現場に到着したオレ達は衝撃の光景を目の当たりにした。
青空一面に広がる大空、辺り一体全てがが亀裂でおお尽くされてしまっている異常事態。
「何が起こってんだよコレ……」
「警戒して。来たわよ」
大きな裂け目から真っ先に現れたのは大柄な機械生命体。
牛のような勇ましい二本角にナイスバルクなマッチョボディー。体のラインは白と黒で実に牛らしい。
「感じる……奴の気配がビンビン感じるぜ!!」
まるで何かのセンサーのように分厚い胸がピクピクと小刻みに動いている。
「身勝手な行動はよせ。タウライアス」
少し遅れてベルゼスター達、大勢の機械生命体達が裂け目からやってくる。
「お前まで来たのかベルゼスター。オレ一人で十分だと言ったはずだが?」
「それはお前が勝手に決めたことだろ。誰もそんな作戦は認めてない」
「へっ、そうだっけか?」
なんかあの二人雲行きが怪しくなってきた。
「この戦いはお前だけの戦いじゃない。我々〈セインティア〉の戦いなんだ」
「そんなん分かってるよ。だけどよベルゼスター。仇が目の前にいるってのにお前は随分と冷静なんだな。オレは直ぐにでも奴と戦いたくてウズウズしてるってのに」
「何が言いたい?…」
「今までのお前なら感情的に突っ込んだっておかしくなかった。なのに今は冷静にオレに説教までする余裕っぷりだ。…まるであの二人の代わりは自分だって言ってるみたいだぜ」
「なんだと!」
「それだそれ。そっちの方がお前らしいぜベルゼスター」
タウライアスの挑発に掴みかかるベルゼスター。今にも一戦始まりそうな雰囲気に慌てて他の仲間達が仲裁に入る。
「やめろ二人とも!」
「そうだ!オレ達の相手は別にいるだろう!」
やはりここでも先に手を引いたのはベルゼスターだった。
「すまない…」
「…ようやく元に戻ったと思ったんだがな。やっぱりオレの言った通りってことかよ」
ジャスティゼイオンを失いイーゼクス迄も失った今、リーダーが必要なのは事実だ。だがどうしてコイツなんだ?
「聞いてくれタウライアス。奴を侮るなと言ってるだけだ」
「じゃあ安心しろよベルゼスター。オレは奴をこれっぽっちも侮ってなんかねぇ。だから負ける気もしねぇんだよ!!」
「おい!」
ベルゼスターの言葉に耳も貸さずタウライアスは一人で突っ込んでいく。
「待たせたなウェルブレイザー!お前の相手はオレだあぁぁぁ!!」
「なんだコイツ!?」
奴がリーダー?……ふざけんな!あの二人に気に入られてたからって何勝手に決めてんだ。
オレがいるだろ。オレが!
「どいつもコイツもオレを忘れんじゃねえ!!」
「さっきからなんの話だ!……ぐっ!……」
真正面から突っ込んできたタウライアスを見事に受け止めたウェルブレイザーだったが、力勝負にじりじりと押し負けていく。低い姿勢から突き上げられるような力強さを感じる。
「コイツ。なんて馬鹿力だ!」
「どうした?そんなもんかぁ?噂のウェルブレイザーはそんなもんなのかよ!?」
「ぐうっ!……(さっきまで痴話喧嘩してた奴とは思えない位のパワーだ。寧ろ怒りで強くなってんじゃないか?……)」
「何やってんのよウェル。もっと腰を入れなさい!腰よ腰!」
「やってるよ!!」
中にいるセレンティーヌも力が入っているのが伝わる。
オレだってとっくに全力なんか出してる。なのに、それ以上の力で押し切られる。
コイツとオレとじゃ力の性能が違い過ぎるみたいだ。
「回れタウラーホーン!!」
二本の角が火花を放ちながら高速で回転を始める。
「その角回るのかよ!」
「串刺しにしてやる!!」
襲いかかる二本の角を掴みギリギリで押さえ込む。だが圧倒的なパワーに太刀打ちできない。
あまりの勢いになす術なく吹き飛ばされてしまう。
「タウライアスの奴やるな…」
「ああ。このままなら本当に一人で倒せるんじゃないか?」
「いやまだ甘い。オレ達も加勢するぞ」
ベルゼスター自らも戦闘体制を取ると、周りにも指示を出す。
「だけど任せろって。逆にオレ達が行ったら邪魔になるんじゃ?」
「そうだ。もうちょっと様子を見ても」
「これ以上仲間を失う訳には行かないんだよ!!」
響く大声に一同の視線が集まる。
「オレ達は勝たなきゃならない。勝つ為なら手段を選ぶつもりはない」
「お前……」
覚悟の決まったベルゼスターに反発する者は誰もいなかった。
「あの馬鹿力め。ちょっとは手加減しろっての……」
大幅に減った数値、思い通りに動かない手足。一目で分かるボディーの大きな傷がダメージの激しさを伝えている。
「中は大丈夫かセレンティーヌ?…」
「まぁなんとかね。そっちこそ外側はどうなのよ?相当ヤバそうだけど」
「相当てか、結構ヤバいな……」
反撃しようにもこの状態じゃ満足に力も使えない。だからって相手の土俵に立って立ち向かえる相手でもない。
なんとしてでも自分のペースに持っていく方法を見つけないとな…。
「悔しいけど一回退くしかないか…」
「あっちにそんなつもりは無いらしいけどね」
「なに?」
タウライアスだけではなく後方にいたベルゼスター達もこちらに向かってきている。
後方までロボット達がびっしり。何十、いや、何百はいるかもしれない。
「…ベルゼ……聞こえ……か?……」
「外部からの着信?一体誰だ」
その時だった。突如ベルゼスターの元に何者かから緊急連絡が入る。
通信が安定せず音が乱れて聞こえる。
いよいよ仇が討てるかもしれないというのに水をさされてやや機嫌が悪い。
「聞こえていますか……こちら、セルゼライン…応答してくださ、」
「聞こえるぞセルゼライン」
「良かった……繋がった!」
未だノイズや雑音は聞こえるものの、通話ができる位には通信が復活した。
「どうした。そちらで何があった?」
「一刻も早く帰還してください!」
「どういうことだ」
「安定していた筈のゲートに謎の異変が生じていて、今にもゲートが閉じようとしています!」
「なんだと!?」
「急いでください!このままではその世界に取り残されてしまう!」
「だが……」
目の前には手負いのウェルブレイザー。今なら倒せるかもしれないんだぞ。
考えろ。
ジャスティゼイオンならどうする?
「…戦いは一時中止だ。全員帰還する!」
「本気かよ!?このチャンスを逃すっていうのか!」
「いいから戻るぞタウライアス!これは命令だ!」
「(ベルゼスターめ。どこまでもリーダー気取りか)」
次々と機械生命達が閉じようとしている時空の裂け目を通って消えていく。
「急げタウライアス。このまま閉じれば二度と元の世界には帰れなくなるぞ!」
「あぁっ!…仕方ねぇ。ウェルブレイザー今日のところは見逃してやるよ」
「なに?……」
「生憎、オレはこんな辺鄙な世界で一生を過ごすつもりは無いんでね。だけど安心しろ。必ずお前を倒しに戻ってくる。お前を倒すのはこのオレ様だからな!」
そう言い残すとタウライアスも裂け目の中へと消えていく。
「ウェルブレイザー…」
「?…」
何かを言おうとしたがベルゼスターは口を途中で閉ざしたまま彼も消えていった。
いなくなったと同時に空に入った亀裂は何事も無かったように消えてなくなる。
「アイツら。いきなり現れていきなり消えやがった……」
「腹は立つけど結界的に救われたわ。悔しいけど完敗よ」
「くそッ……!!」
何もできなかった。
何もできないままの自分に苛立ち、絶望を受け入れるしかない。
これがこの世界で初めて味わった敗北の味。それはとても苦く不味かった。
この味をオレは二度と忘れることは無いだろう。
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