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覚悟を放て!嘘を吐くならいつまでも…⑤

「ここが異世界……まさに別世界だな」


 文化や建物、そして空に至るまで何もかもが私といた世界とは異なっている。


 世界が違えば変わっているのは当たり前。当たり前だがその妙さが新しく思える。


「……来たか」


「喰らえっ!」


 背後から急襲をかけるウェルブレイザー。それに対しイーゼクスは焦る様子も見せずにウェルブレイバーを受け止める。


「なっ!……」


「久しぶりだなウェルブレイザー。珍しいなその姿。イメチェンか?」


「オレは別に。てか、オマエは誰なんだ!」


「なに?…」


「察するにこの前オレが倒したジャスティゼイオン?とかのお仲間ってところか?」


「やはりお前の仕業か……(だが今のウェルブレイザーの反応。まさか本当に私達の事を覚えていないのか?……)」


「今だ!」


 ウェルブレイザーは動揺から生まれた僅かの隙を見逃さなかった。


 咄嗟に手を放しブレイバーごとイーゼクスを蹴りに叩き込む。


「ウェル。そのまま押し切りなさい!」


「このチャンスみすみす逃してたまるか!」


 ムエタイ選手ばりに連続で蹴りの嵐を胴体に叩き込見続ける。


「おっさんってのは格闘技とマッサージが大好物なんだよ!」


 見よう見まねで放った回し蹴りが見事にクリーンヒット。怯んだ所を狙って更に蹴りを繰り出し続ける。


「ぐっ…(姿や戦い方は違えど強さの方は相変わらずか。それに奴の中には人間の反応も……益々厄介だな)」


「聞きたいことは山ほどあるが今はウチの上司の機嫌が悪いんでね、さっさと終わらせてもらうぞ!」


「それは困るな。もう少し付き合ってくれよ」


 全身のパワーを右足に集中した強烈な一撃を寸前のところで避けると、今度は波動砲がウェルブレイザーを襲う。


「あっつ!なんだ今の!?……」


「ゼクスブラスター。お前も知ってるだろ」


「知ってるも何も、初体験だっつーのっ!…うわっ!」


 先程までの勢いが嘘のように無数に放たれる光弾が行手を塞ぎ、間合いを詰めようにも近付くこともできず一方的な攻撃が続いていく。


「くそッ……このままじゃジリ貧だぞ」


「しっかりなさい!この状況を打開できる必殺技とかあるんでしょ?」


「あったらとっくにやってる!ぐあっ!……」


 そうこうしている間も被弾が重なり続け数値がみるみる減っていく。


 ――危険 危険 危険 危険 危険――


「(あーー鬱陶しい!わざわざ文字に書かれなくたってヤバいことくらい分かってる!それにさっきから妙に下ばっか狙ってくるが何が目的なんだ?…)」


「ちょっと!さっきからこの文字何なのよ!意味わかなんないし見づらいんだけど!?」


「気にするな。大した意味じゃない……ぐっ!」


「きゃっ!」


 突然ガクッと膝をついたことで内部が大きく揺れる。


 ―― 左脚部の損傷を確認――


「これか。修復は!?」


 ――自己再生機能を使用。修復を開始します。……失敗しました。修復を続けます。……失敗しました――


「ダメか……」


 ここまでのダメージだ。いくらオレがスーパーロボットだからって骨折した足を直ちに修復するのはやっぱり無理だよな。


「どうしたのウェル!?全然動かないんだけど?」


「…悪い。左足をやられた。直ぐには修復も無理そうだ」


「ねぇそれってマズくない?……」


「ああ。激マズだ……!」


 このままじゃオレもセレンティーヌも二人して終わりだ。


 どうすればいい……近づこうにもこの足じゃ碌に動けないし、頼みのウェルブレイバーも手元には無い。仮に動けたとしても機動力ではあっちの方が上。また距離を取られてそれでおしまいだ。


 完全に詰んでるじゃねぇか……。


「どうしたウェルブレイザー。もう終わりか?少なくても私の知っているお前はこんな柔な奴じゃなかったのだがな!」


「言ってくれるじゃねぇか……!」


 だけどどうする?責めて他に武器でもあれば……何かないのか?この状況を打開できるとっておきの秘策は!!


「ガオオォォォォ!!」


 謎の咆哮が辺り一面に響き渡る。ロボの体でも全身がビリビリと痺れるのが伝わってくる。


「今のはなんなんだ……」


「ウェル!あれ!」


「ん?」


 セレンティーヌに誘導されるよう空を眺めた先には再び謎の亀裂が。しかし今までの物とは少し違うようで亀裂は虹色の光を帯びている。


「ガオォォォォォーーーン!!!」


 猛るような咆哮と共に亀裂を破り飛び出しきたのは黄色目立つ機械の虎だった。


「何アレ!?…かわいい〜〜!!」


「かわいい!?どっちかと言えばカッコいいの間違いだろ」


「いやいやかわいいわよ!!」


「そうか?……」


 最近の女の子の好みはおじさんには難しい。


「あれはアニマノイド!?どうして彼らまでこの世界に!?」


 アイツやオレとも似ていない新たなロボット。


 だけど亀裂から飛び出してきたってことはアイツらの仲間ってことだよなぁ。容赦のないドSなスーパーロボットめ。そんなことしなくてもこっちは今にも負けそうだってのに。


「ガオォォォォ!!」


 虎型ロボットはこちらに向かって駆け出してくる。呑気に考える暇すら与えてはくれないようだ。


「ウェル受け止めて!」


「無茶言うな!あの勢いだぞ!」


「だとしてもやるしかないのよ!」


 オレに残された数値もあと僅か。微かな望みに賭けオレは決死の覚悟で受けて立つことを決めた。


「くそったれがぁぁ!!…あれ?」


 決死の覚悟はあっさりとスルーされ、虎型ロボットはウェルブレイザーを無視してイーゼクスに攻撃を仕掛けたのだ。


「ガウゥゥゥゥゥ!!」


「なっ!何故アニマノイドが私達に攻撃を!?…ぐあっ!」


「どういうことだ?」


 この状況は奴にとっても想定外だったようだ。


「ガオッ!!」


 この虎、オレに何かを訴えようとしている。でも英語は愚か日本語すら怪しいオレにはなんて言ってるかなんてさっぱり分からない。


「……もしかしてこの子、私達の仲間になりたがってるんじゃない?」


「え?」


 確かに言われてみれば「仲間になりたそうにこちらを見ている」みたいな雰囲気はあるけど……。


「ガオガッ!」


「ほらやっぱりそうよ!間違いないわ!」


「マジで!?てかセレンティーヌ何言ってるか分かるのか?」


「勘よ勘!でも間違いないわ!だって私の勘が外れたことなんて一度もないもの!」


 ―― クロスライガーが合体を要請。承認しますか?――


「うーわセレンティーヌの直感大当たりだ!」


「だから言ったでしょ!」


 何が何だか分からないがこのピンチを乗り切るにはこれしかねぇ。


 少年の心を忘れない男心を絶妙にをくすぐるこの言葉。それを本気で叫ぶ時が来るだなんてな。


「行くぞクロスライガー!合体だ!!」


「ガオォーーーーン!!」


 クロスライガーが頷きオレの呼びかけに応える。


 頭、体、足とバラバラに合体待機状態へと素早く変形を遂げ、ウェルブレイザーに合体する。


 二つの生命が一つへと組み合わさり、漆黒に包まれたボディーに黄色の差し色が映える新たな姿を誕生させた。


「コンバイン〈合体完了〉。ウェルブレイザーライガーカスタム!!」


「その姿は……まさかアニマノイドがウェルブレイザーを選んだのか?……」


 本当に合体しちゃったよオレ。


 こういう時、パワーが溢れてくるようだってマンガやアニメではよく言うけど正にそんな感じだ。


 アニメや漫画の主人公はきっとこんな気分だったに違いない。


 オレならできる。


 オレなら勝てる。


 オレは誰よりも強い!


 枯渇していた自信がまるで湯水のように湧き出てくるんだ。


「なんだかよく分からないけどこの感じなんかめちゃくちゃいいわ!!今ならなんでもできそう!」


 どうやらオレの中にいるセレンティーヌも同じ気持ちみたいだ。


「これなら戦える!」


「やり返すわよウェル!」


「了解!」


「ウェルブレイザー。どうやら私の勘違いだったみたいだ。君はやっぱり変わってないな!」


 ゼクスブラスターから無限に放たれる光弾。寸分の狂いもなく的確にオレを狙ってくる。


 せっかく回復した数値が再び減っていく。


 だけど怯むな。


 防ぐ方法が無いなら防がなければいい。


「うおおおおおお!!」


 前へ…前へ…前へ進み続けろ!オレ!


 襲いかかる光弾の数々に臆することなくウェルブレイザーは前へと歩みを進める。


「なに!?」


「ここはオレの間合いだ!!」


 両腕に装備された巨大な鉤爪。ライガークローが遂にイーゼクスを捉える。


「ぐああっ!たった一撃でこの威力…これがアニマノイドの真の力なのか……」


 ライガークローによる連続攻撃がイーゼクスの緑色に輝くコアを露出させる。


「見えたわ!」


「ちまちまやってる暇は無い。一撃で決めるぞ!」


「分かってるわよ!!」


「せーのっ!」


「「チャージアップ!!」」


 二人の掛け声を受けライガークローの巨大な爪が更に長く鋭利に伸長。紫のボディーラインは黄色に変わり点滅を繰り返している。


「世界が変わろうとも私はお前には勝てない。正に運命であり宿命というものか……」


 イーゼクスは自らの運命を悟ったように身を前へと曝け出した。


「アイツどういうつもりよ!?」 


「…罠だとしてもやるしかねぇ!!」


 パワーの充填が済みライガークローが眩しく輝き出す。


「今だセレンティーヌ!」


「上等よ!受けてたってやろうじゃないの!」


 覚悟を決めるとセレンティーヌは目の前のレバーを勢いよく前へと倒す。


「さよならだ私の宿敵…」


「ライガーブレイクライシス!!」


 両腕から交互に放たれる強靭な爪撃がイーゼクスのボディーを貫きコアを砕く。


「そして友よ……」


 爆発した瞬間、砕け散ったコアが緑輝く一本の光線となり夜空を貫いた。


「討伐完了」


「(だけど今の光はいったい?……)」


 ◇◇◇◇◇◇


「セレンティーヌおおねえさんたちおそいねー……」


「おにいちゃん……」


「一緒にセレンティーヌ様を信じましょう。セレンティーヌ様ならきっと大丈夫」


 すると遠くからエンジン音が聞こえてくる。やがて音は次第に大きくなっていく。


「もしかして!!」


 シルフィ達は一目散に施設を飛び出す。


「わ〜〜〜!!」


 子供達の目に映ったのは夜道を華麗に走り抜けるライダーモードに変形したウェルブレイザー。

 その上には二回目とは思えないほど様になっているセレンティーヌ。

 後ろには振り落とされないようにギュッとセレンティーヌを抱きしめているカイトの姿もあった。


「(見てるな〜……だったらとびっきりなの見せてやる!)」


 ウェルブレイザーは子供達の前で無駄に豪快なドリフトを完璧に決めた。


「決まったぜ……」


 一人勝手に優越感に浸っているウェルブレイザーは無視。セレンティーヌ達はまだ足が届かないカイトを降ろしてあげると自分もヘルメットを取りあからさまに髪を靡かせる。


「おにいちゃん!!」


「…シルフィ!!」


 そんなセレンティーヌも子供達の目には入らずじまい。ここにいるみんなが兄弟の再会を喜んでいてそれどころではなかった。


「何よせっかくサービスしてあげたってのに…つまらない子ね」


「大人の色気なんか子供は興味無いんだよ。そんなことよりどうだ?初めて嘘を吐いた気分は?」


「まぁ普通ね……思ったより悪い気はしないわ」


 あの時、少年に渡した両親からの最後の手紙。ここだけの話。手紙なんて物は残っていなかった。


 それどころか二人の両親は、とっくに二人の事など忘れて新しい家族と新しい場所で幸せに暮らしていたのだ。


「オレはあの選択間違ってないと思うぞ」


「当たり前よ…仮にそうだとしても間違いになんて私がさせないわ」


「その意気だ」


「私決めたのよ。カイトやシルフィだけじゃない。ここにいる施設の子達全員。あの家族に負けないくらい幸せにしてやるって!」


「奇遇だな。オレも同じ気持ちだ」


 悪役セレンティーヌと気が合うだなんてオレも悪くなったものだ。知らず知らずのうちに忠実な僕として洗脳されてしまったのかも。


 でも、思ったより悪いは気はしない。


「みんなで感動の再会ね」


「あ、おばさん!」


「おばさんじゃない。おねえさん!いい?やり直して」


「お、おねえさん…」


「宜しい。じゃあこれあげる」


 ようやくのお姉さん呼びにご満悦なセレンティーヌは綺麗に包装されたギフトボックスを渡す。


「何これ?」


「プレゼント」


「でもどうして?……」


「今日誕生日でしょ?プレゼントをあげるのは当たり前よ」


「いいの?」


「いいに決まってるでしょ。いらないなら別にいいけど」


 渡したプレゼントを取り返そうとするセレンティーヌの手を跳ね除ける。


「いらないなんて言ってない」


「だったら早く開けて自分の物にしちゃいなさい」


 丁寧にラッピングされた包装を躊躇なくビリビリに破くと、中に入っていたのは大好きなチョコクッキーの詰め合わせだった。


「これ僕の好きなやつ。どうして好きだって知ってるの!?」


「私の執事はどんな執事よりも優秀なのよ」


「ありがとう……」


「これからは私がアナタの誕生日を祝ってあげる。約束する」


 セレンティーヌら優しくカイトの頭をなでる。


「カイトだけずる〜い!」

「ぼくもなでて!」

「わたしも!」


「もちろんみんなのもね。ほらおいで。イヤってくらい撫でてあげるわ」


「イヤ〜〜〜!!」


 誰よりも嫌われていた筈の悪役令嬢は誰よりも子供達に好かれていた。


「ありがとうおばさん!」


「いいわよ。もう礼は聞き飽きたから……って誰がおばさんよ!お姉さんだって何度も言ってるでしょ!」


「だからこの子達からしたらもうおばさんだってば。諦めろセレンティーヌ」


「諦められるわけないでしょうがーー!!こらっ、待ちなさ〜い!!」


「「あはははは!!!」」


 ◇◇◇◇◇◇


「!!新たなマーカーを確認。補足完了…異空間ゲート安定しました!」


「よっしゃあ!!」


「流石はイーゼクスさんだ!やっぱり隊長の右腕だけはあるな!」


「これでオレ達も奴と戦える」


 任務完遂の報告に喜ぶベルゼスターを始めとした機械生命体達。


 だがセルゼラインの面持ちだけはとても暗かった。


「どうした?」


「マーカーを確認したと同時にイーゼクスさんの反応が消失しました……」


「なっ!?……」


 先程までの喜びムードが一変、この場にいた全員が言葉を失った。


「そんなまさか……」


「緊急回線にも応答はありません。恐らくイーゼクスさんはもう…」


「それ以上言うな。もういい……」


「ベルゼスター…」


 この中でも一番熱血漢なベルゼスターでさえ声を荒げない異常事態。


 だがそれでも彼らは分かっていた。


「イーゼクスさんの最後の想い、無駄にはしない」


 ベルゼスターが静かに怒りという名の炎を燃やし続けていることを。


ここまで閲覧頂き誠にありがとうございます。


よろしければブックマーク、評価を頂けると、とても励みになります!


少しでも「面白そう!」「続きが楽しみだ!」


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次回もお付き合い頂ければ嬉しい限りです。


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