覚悟を放て!嘘を吐くならいつまでも…③
空は夕焼けに染まり段々と黄昏に近づいていく。
「もうこんな時間か。思ったよりかかったな」
「ウェルが途中で迷うからでしょ」
「いいだろ。なんとか陽が落ちる前には間に合ったんだから」
「結果論だけどね」
セレンティーヌはぶつぶつと文句を言いながらオレの中から外へ出る。
因みにオレへの出入りは簡単でセレンティーヌの人差し指にしている黒い指輪を通して行っている。
指輪についてはオレもよく知らなかったのだが、セレンティーヌ曰く、先日の一件以降気づいたら指にはまっていたらしい。
それだけで言えばただの怖い話。
だけどそれがパイロットとしての契約の証のような物だとしたら納得するしかなかった。
「なぁ、二人に本当のこと話すのか?」
「もちろん。二人がそれを望むならだけど」
「そうか…」
施設までの帰り道。オレはずっと考えていた。
死んだと思っていた両親が実は自分達を捨てていなくだったなんて聞いたらオレはどうするのだろうか。
精々、自分の中で無駄に落ち着けと言い聞かせるのが限界で、きっと冷静じゃいられない。
それしか分からなかった。
客観的に見れば恨まれて当然で恨んで当たり前。
オレだって最初はそう思った。
だけど腐っても実の親を本当に心から恨む事などできるのだろうか。ましてや、二人はまだ十歳も満たない子供。
もしもこれが知らなくてもいい真実だしたら。知らなければこのまま幸せでいられるかもしれないのに。
果たしてこれを知ることに意味はあるのだろうか……。
「アナタが思うほど二人はそんなに弱くないと思うけど」
「え!?」
まるでセレンティーヌに心を読まれたようだった。
「……もしかして口に出てた?」
「いや、顔に出てた」
「(マジかよ……)」
表情筋一つ動かない常時真顔のオレの顔から、感情を読むだなんてあり得ない。だけどセレンティーヌが言うと本当にそうなんじゃないかと思ってしまう。
「マジかよ。って思ったでしょ?」
「え、」
本当に心でも読まれてるんじゃないか?
あ、もしかしてどこにいても声が聞こえるように心の声も聞こえるようになったんじゃ!?
「残念。いくら私でも心の声までは無理」
うわ、何これ怖い……。普通に心の声と会話してるじゃん。
「だから言ったでしょ顔に出てるって。ウェルは自分が思ってるより表情豊かだと思うけど」
「そうかな?……」
自分じゃよく分からないがそういうものなのだろうか。
それこそ、特撮や人間劇をよく見てる内に動いてない表情がまるで泣いたり笑ったりしてるように見えるみたいに。
それにしても施設の外がやけに騒がしい。もうすぐ夜になるってのになんか妙な感じだ。
「ねぇどうしたの?」
慌しく施設の外を見て回る先生の一人に声をかけると、彼女はオレ達の存在に今まで気づいて無かったようでとても驚く。
「せ、セレンティーヌ様!?どうしてこちらに?……」
「ちょっと昨日の子達に用があってね。そんなことよりどうしたのこの騒ぎは?」
「それが、そのカイト君達が戻ってこないんです!」
「え!?」
よりにもよってこんな時に……。
「それで二人はどこに?」
「昼過ぎに街に買い物に行くと言ったきりで、普段は用が終われば直ぐに帰ってくる子達なので寄り道してるとも思えなくて……」
完全に陽が沈むまで残り僅か。夜になれば外の気温は昼間とは比べ物にならないほど一気に冷え込む。
大人でも外にいるのが苦痛なくらいだ。
「早く見つけないと……ウェル!」
「ああ。オレ達も探そう」
セレンティーヌが再びオレの中へ乗り込もうとした時だった。
「助けて!!」
「この声は」
涙混じりで霞んだ声の方に視線を向けると、涙でぐしゃぐしゃに顔を腫らしたシルフィの姿が見えてくる。
「シルフィちゃん!!」
先生達が慌てて彼女の元へ駆け寄る。
「どうしたの!?」
「うぅぅ…」
「大丈夫。もう大丈夫だから」
弱々しく泣き崩れるシルフィを親しい先生が優しく抱きしめる。
彼女の手にぎゅっと握られていたお菓子の箱は、涙や落としたりで箱はボロボロ。ここまで来る間に何度も転んだのだろう。膝や腕には無数の擦り傷が付いている。
「ねぇ一人足りないんだけど」
「だよな。さっきからオレも思ってた」
「反応は?」
「…いや、近くにそれっぽい気配は感じないけど」
スーパーロボットであるオレのセンサーにも引っかからない。
「シルフィちゃん。カイト君は一緒じゃないのかな?…」
「うん…」
「カイト君がどこに行ったか分かるかな?」
息が荒くなる彼女を宥めながらゆっくりと話しをしていく先生。
「わからない……おにいちゃんはわたしのかわりにつれてかれたの…おにいちゃんをたすけて!!」
「え!?」
「マジかよ!……」
「お嬢ちゃん。少年を連れてった奴の特徴なんでもいいわ。何か分かることある?」
「……かみのけがなかった」
これは有力な情報だ。だけど坊主やスキンヘッドの奴なんかこの世界にもいっぱいいる。それだけじゃ特定は厳しいな。
「他には?」
「わからない……」
パニックで何も覚えてないって感じだな。無理もない。
「思い出しなさい」
「無茶だセレンティーヌ。これ以上思い出させるのは…」
「酷?」
「ああ……」
「だとしても思い出さなきゃなんないのよ…お嬢ちゃん。辛いのは分かる。だけど思い出さなきゃいけない。お兄ちゃんを救えるのは君だけなんだから」
「わたしがおにいちゃんをすくう……」
「そうよ。だからお願い」
震えるシルフィの手を力強くそして優しく握りしめる。
「……あ!」
「なんでもいいわ。だから教えて!」
「もしかしたらちがうかもだけど……」
「大丈夫。教えて」
「わたしをつかまえようとしたとき、みぎうでにドクロみたいなマークがあったの」
「!…ありがとうシルフィちゃん。これで分かったわ」
セレンティーヌ同様オレにも心当たりがある。
「セレンティーヌ様それは本当ですか!?一体誰がカイト君達を」
「右腕にドクロのマーク。そんなダサいことするのは一つしかない」
「「裏ギルド」」
思わずオレとセレンティーヌの声が重なり目を合わせる。
「ウェル知ってたの?」
「う、噂でちょっとな(原作繋がりで知ってたなんて言えるわけがない)」
殺しから誘拐、人身売買まで平気で行う裏の組織。
でもそんな設定の割にはストーリーにこれと言って関わることはなかった。
たまに現れてはかならず聖女達に返り討ちにされる。
敵役というよりは主人公の聖女を引き立たせるための都合の良い噛ませ犬と言った方が正しいかもしれない。
「裏ギルドが関わってるならやっぱりあの両親の件でだよな……」
「親が無理なら子供から。奴らが考えそうな最低な手口じゃない」
「そうと分かれば時間がない。いっそのことこのまま乗り込むか」
「できるもんならね。問題は奴らの潜伏先をどう絞りこむか。取り返しのつかない事になる前に早く見つけないと」
「安心しろ。それならオレに心当たりがある」
アニメに登場した分だけでも奴らの根城は三つ。その中から街に一番近い場所は確か……。
「エルスベルクだ」
「街外れの港町ね…確かにあそこならバレちゃいけない取引きもやりやすそう。だけどどうしてそれをしってるの?」
「今はそんなこと言ってる場合かよ。オレを信じてくれ」
「そうね…分かったわ。ウェル!」
「行くぞ!」
待ってろよ少年。必ずオレ達が助けてやるからな!
「待ってください。それじゃ間に合いません!」
かかったやる気のエンジンにブレーキがかかるよう先生の悲痛な叫びが響き渡る。
「どういうことだ?…」
「カイト君には持病があって、毎日決まった時間にこの薬を飲まないといけないんです」
「なんだって!」
「…最後に薬を飲んでから何時間経ったの?」
「買い物に出かける前ですから五時間程前かと……」
「そろそろ発作が起こっても不思議じゃないか…」
「ヤバいじゃんそれ!」
このままじゃ助けに行く前に……いやいや何考えてんだオレ!
「とにかく急ぐぞ!早く乗れ!」
「無理よ。ここからだとどんなに急いでも二時間かかる」
「だからって、」
「分かってるわよ!でもこのままだと助けに行っても間に合わないのよ。他の方法を見つけないと……」
セレンティーヌのやつ珍しく弱気だな。バルハムートの時でもこんな表情は見せなかったってのに…それだけ大ピンチってことか。
「(でもセレンティーヌの言う通りだ。このままじゃどんなに走っても時間がかかり過ぎる。せめてオレに走る以外の方法があれば……)」
――提案 ライダーモードに変形可能――
突然視界に現れた謎の表示。いつも通り詳しい説明などなにも無かったが今のオレにはそれに従うしか無かった。
「(ライダーモード…いいぜ。恥ずかしいなんて気持ち忘れてやるよ。少年を救えるならなんでもやってやる!)」
ウェルブレイザー覚悟の決まった面持ちで拳を空高く突き上げる。
「チェンジ!ライダーモード!!」
その瞬間オレの意思とは別に体が勝手に動いていくではないか。
「え、ちょっとたんま、あ、あ、うあぁぁぁぁっ!!」
ありとあらゆる関節がバキバキと鳴りながら躊躇なく変形していく。
「うわぁーーー!!」
「なにこれかっこいい!!」
「でもちょっとちいさくなったー!」
バイクへと奇跡の変形を遂げたオレの姿に遠くから見ていた子供達が大勢集まってくる。
「ウェル。これどういうことか説明してちょうだい」
「オレにもよくは…でもこれなら馬車なんかより速く走れるぜ!」
「アンタね…それができるなら早くやりなさいよ!」
セレンティーヌはオレの変形したてのピカピカのボディーを蹴り飛ばす。
「おい傷付いたらどうすんだ!オレもさっきまで知らなかったんだよ!」
足や腕も変な角度に曲がってるのに痛みすらない。まぁ、自分がバイクになるってのは不思議な気分だけど。
「セレンティーヌおねえちゃん」
シルフィは涙を流しながらセレンティーヌに頭を下げた。
「え、」
「おねがいします。おにいちゃんはわるいひとじゃないの。だからおにいちゃんをたすけてください!」
「…頭を上げて」
セレンティーヌは自らの手で涙を拭ってみせる。
「約束するわ。必ず私がもう一度おにいちゃんに会わせてあげる」
「ほんと!?」
「だから先生達と待ってて。ディナーまでには戻るから。だって食事は一緒に食べなきゃつまらないものね」
「うん!」
再び笑顔に戻ったシルフィを先生達に預けると、バイクに変形したオレにまたがる。流石はお嬢様。乗馬の経験があるからか初めてだというのに随分と様になっている。
すると目の前のハンドルにぶら下がっているフルフェイスのヘルメットを邪魔そうに投げ捨てる。
「いらないわこれ」
「ダメだって!ちゃんと被ってくれ」
「イヤよ。せっかくの髪が崩れてしまうもの。それにこれだと私の美しい顔が隠れちゃうわ」
「いいから被っとけって。最近何かとコンプラが煩いんだ。いつ誰が見てるか分かったもんじゃない」
「私はウェルの言ってる意味が分からないんだけど」
「いいから」
「もう、分かったわよ……」
不貞腐れながらもなんだかんだでヘルメットのロックまできっちりとこなす真面目っぷり。
そういうところ嫌いじゃない。
「これでいい?」
「ああ。コントロールはオレがする。お前は目の前のハンドルを握ってくれてればいい」
「了解」
セレンティーヌが力強くハンドルを握ると、エンジン温まるように体が熱くなっていくのが分かる。
「(制限速度なんて知ったことか。最初から全速力だ!)」
「振り落とされても知らないからな」
「上等。やれるもんならやってみなさい。死んでもこの手は離さない!」
「いいね。ぶっちぎりだ!!」
盛大にエンジンを吹かせると轟音と共に風を切りながら走り出した。
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