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正義の執行者③

 

「おいおいマジかよ!……」


 真っ赤なボディーに白のライン。


 アニメを見たことなくてもこれだけ見れば主人公機だと分かってしまいそうな量産機ではあり得ない明らかに力の入ったデザインだ。


 オレが昔のロボットアニメの主人公機なら、あっちはイケてる現代ロボットアニメの主人公機。


 見るからに性能も武装も段違いなのが良くわかる。


「ちょっとカッコいい……(でも本当になんなんだアレは…)」


「アンタにちょっと似てるけど知り合いか何か?」


「いや、全くの他人様だ。オレの家族や親戚はあんなにゴツくはないんでね」


「じゃあなんなのよアイツは?」


「さあな?あんなの見たことも無ければ聞いたことない」


 突然の事態に周囲が騒然とする中、遂に例のロボットが口を開いた。


「ワタシはジャスティゼイオン。憎き宿敵である王魔閃光を倒す為、時空を超えてこの世界にやってきた」


「おうま、せん、こう?…何よそれ?カッコ悪いんだけど」


「オレに聞くな。アイツのことも知らないのにオレが知るわけ無いだろ」


 でも敵を追い求めて時空を超えてやってくるだなんて、そういう王道の設定、おじさんは嫌いじゃない。


「あの時倒した筈のお前が時空を超えて生きてると知った時は驚いたぜ。姿を変えたようだがワタシの目は誤魔化せない」


 よく分からないけど、まさかこの中に目的の奴がいるというのか。


「今度こそ必ず決着をつける。勝負だウェルブレイザー!!」


「え?……」


 今、オレの名前言った?いやいやあり得ない。え、でも、コイツが指さしてる方向にいる奴ってさ……


「どうしたウェルブレイザー。もう逃げ場はないぞ。大人しくワタシと戦え!!」


「…お、オレェぇぇ!?」


「なんだやっぱり知り合いなんじゃない」


「違う。こんな奴オレは知らない!ちょっとお前、何いきなり言ってんだよ!人違いです!」


「何言ってるのはこちらの台詞だ。何を惚けている」


「惚けてないって!」


 あーダメだ。全然話にならない。


 でも本当に人違い……なんかねぇよな。何故かは知らないけど名前を知ってて、オレとも顔見知りみたいだ。


 さっきから気になることが多すぎないかコレ!


「何を考えてるかは知らんが簡単には戦うつもりはないらしいな。だったら、」


 ボディーの白ラインが光輝くと、右腕がたちまちガトリングに変形していく。


「その気にさせるまでだ!」


「が、ガトリング!?見た目の割に武装が物騒過ぎねぇか!?」


 いや、あ、これは、別に、ダジャレとかそういうつもりでなくてだな〜…


「てか、そんな場合じゃない!」


 問答無用で発射された数百発の銃弾が甲高い機械音と大勢の悲鳴を鳴り響かせ共に無数の桜を舞い散らせた。


「きゃーーー!!」

「逃げろーー!!!」


 パーティ会場にいた客達は血相を変えて我先へと会場を後にする。


「どうしてよ……次から次へとなんでこんな展開になるのよ!」


「大丈夫だユナ!私達も逃げるぞ!」


 何が大丈夫なのよ。全然大丈夫じゃないわよ!イライラする!


 なんで私がこんな目に遭わなきゃなんないのよ……これも全部アイツのせいよ。


「王子!きっとこれも全部セレンティーヌ様の仕業に決まってますわ!」


「なんだとっ!?」


「多分、私や王子だけが幸せになるのが許せなかったんです。きっとあのロボットもセレンティーヌ様の巨大な部下が指示したんだわ!」


「はぁ!?」


 遠くにいながらもオレの耳はその聖女の一言を聴き逃さなかった。


「(あの聖女こんな時に何言ってやがるんだ!…)」


「言われてみれば確かにセレンティーヌならやりかねないかも…」


「王子、聖女様!話は後です。まずは安全な場所に避難を!」


「その通り。早く逃げましょう。このままじゃその綺麗なお体が穴だらけになってしまいます」


「そ、そうだな。ユナ行くぞ!」


「はい!」


 聖女達もチヨウやロフォン達に守られながら続々と会場を後にする。


 アイツ……ユナはそんな性格の悪そうな笑顔はしないんだよ!


「待て!」


「それは私のセリフだウェルブレイザー!」


「うわっ!」


 無数の銃撃はオレだけではものたらず周囲全てを撃ち抜いていく。


「あのヒーローもどき無闇矢鱈に好き放題撃ちやがって、無関係の誰かに当たったらどうするんだ!」


 オレだって無関係だけど!


「おじいさん!」


「儂のことはいい!逃げるんじゃ!」


「言わんこっちゃない!」


 パニックになった客達によって押し倒され、怪我をして逃げ遅れた老夫婦達の盾となるウェルブレイザー。


「あ、貴方は…」


「もう大丈夫ですよ」


「ウェル!」


 いいね。ナイスタイミングで駆けつけてくれるじゃないか。


「セレンティーヌ。この人達を頼む。足を怪我してみるみたいだ」


「分かった。レイフォード」


「お任せください。参りましょう」


「ありがとうございます」


 レイフォードの肩を借りながらなんとか老夫婦達も安全な場所へ避難していく。


「間に合って良かった…」


 さぁ、ここからだ。


「ウェル。アナタはどうするの?」


「出来ることならオレも一緒に逃げたいけど、どうやらあのヒーローもどきのそっくりさんはオレに用があるみたいだからな、ちょっと付き合ってやる」


 覚悟なら決まった。


「そ。じゃあ私も一緒に付き合ってあげる」


「いやお前も逃げろ」


「どうしてよ?私が足でまといだからとでも言いたそうだけど」


「そう言ってるんだよ」


「私にたてつくつもり?…」


「覚悟の上だ。クビにしたければクビにしろ」


 この世界のセレンティーヌならそう言うと思ってた。


 だけどさ、こんな所でお前を死なせるわけには行かないんだ。


 ただでさえおかしくなったこの世界にアンタまでいなくなっちまったら、それこそ取り返しがつかなくなる。


 オレが好きだった〈ファンタジクス〉の世界を守る為ならホームレスでもなんでもなってやる。


「アンタね……!」


「お嬢様!」


「執事が呼んでるぞ。いいから行け!」


「…覚えてなさい」


 流石のセレンティーヌもこの状況を理解し折れたのか、舌打ち混じりにレイフォードの元に合流する。


「覚えてたらな。オレが生きてたらの話だけど……」


 でも、思ったより痛いなこの攻撃…痛みというか、数値の減少がバルハムートの時より速い気がする。


 ちんたらやってる暇は無さそうだな。


「ウェルブレイザー。お前が人を守るとはどういう風の吹き回しだ。何を考えている」


「お前はお年寄りは大事にしろって親から教わらなかったのか?このデカブツヒーローもどきめ!」


 オレよりヒーローみたいな見た目してるんだからそのくらい分かってて欲しかった。


「大体お前はなんでオレの事を知ってる?お前はオレのなんなんだよ?」


「お前がそれを言うのか……」


「なに?」


「…私達の大切な者を殺したお前が、それを言うのかぁぁ!!」


「おい!」


 突然湯が沸くように激昂したジャスティゼイオンは一気に距離を詰める。


「ジャスティソード!!」


 今度は左腕が巨大な剣に変形する。


「この私が今度こそ仇を取る!!」


「だからなんの話だよ!」


 オレは咄嗟にその剣を真剣白刃取りの様に受け止めようとするが、素人のオレに出来るわけが無くまともに一撃を喰らってしまう。


「ぐっ…(しくった。痛みこそ無いが今ので大分ごっそり持ってかれたな…どうにかして流れを変えないと)」


 奴は間髪入れずに第二、第三の攻撃を繰り出していく。


「この野郎、ちょっとは話くらい聞けっつーのっ!」


 人間もロボットも追い込まれると咄嗟に体が動くらしい。


 剣を大きく振りかぶった僅かな瞬間を見逃さずオレは奴の腹部を蹴り飛ばした。


「来いウェルブレイバー!」


 ウェルブレイザーの声に応えて空から降ってくるウェルブレイバーを見事にノールックでキャッチする。


「…やられっぱなしは癪だからな、今度はオレの番だ!」


 素人見え見えの剣捌きだが、やってみれば意外とどうにかなるもので、互いに一歩も引かず剣を打ち合えている。


 剣と剣がぶつかり合う真剣勝負。まるで時代劇のワンシーンみたいだ。やってる方はそれどころじゃないけど。


 でも互角に戦えていたのは最初だけ。


「ハァッ!!」


「ッ……!」


 あっちはナイフのような鋭い長剣。対してこちらはその倍はありそうな巨大な大剣。


 デカさや威力はこっちが圧倒的に有利な筈なのに、戦いの技量に差があり過ぎる。


 武器を交じ合わせれば合わせるほどその差が明確になっていく。


 こちらが必死になって一撃与えた時には、オレは既に十発以上は喰らってる。


 さっきまであれだけ軽く思えたウェルブレイバーが今じゃめちゃくちゃ重くてしょうがないし……。


 このままじゃ奴をなんとかする前にオレが鉄屑に転生しちまいそうだ。


「私の勝ちだウェルブレイザー!」


 ジャスティゼイオンの長剣が発せられた光の流れに沿うように更に長くなっていく。


「ヤバっ……」


「ジャスティスラッシュ!!」


 光り輝く一線はオレの体に深い傷と深刻なダメージを与えた。


「くそッ!……」


 体のあちこちから火花や何か大切部品がショートでもしてそうないやーな音が聞こえる。


「(辛うじて腕や足はまだ動きそうだけど……)」


 残りの数値は十を切っている。このまま何もせずとも数値は減り続けるだろう。


「(便利な自己修復機能は大切な所で役にはただずかよ…)」


 事態の深刻さを知らせるようにオレの視界は真っ赤に染まっている。


 ――DANGER!!――


  ――DANGER!!――


 さっきからこの文字がずっと消えない。


 英語が苦手なオレでもこれが出たらヤバいってことは分かってる。


 この表示を消さなきゃオレに未来は無いってことも。


「ウェルブレイザーこれで最後にしよう…」


 ジャスティゼイオンは最後のトドメを刺すべくオレの首元に剣を突きつける。


 死の淵際に立たされた時、決まって人はドラマの主人公のように格好をつけたくなるらしい。


「だったら最後に一つだけ。お前、正義の味方なんだろ?…」


「ああ」


「だったらどうしてオレと戦う必要がある。オレはお前に何をした!?」


「正義の味方だからお前を倒すんだ」


「意味分からねぇな…」


「オレは正義でお前は悪だからだ。オレとお前は戦う宿命にありお前は負ける運命にある。それを受け入れろ」


 ……本当に正義の味方だって言うんなら最後くらいもっと心に響く台詞を言って欲しかった。


 それならオレも大人しくアイツの言う運命とやら受け入れられたかもしれないのに。


「…さっきから聞いてれば人の話も聞かないで、勝手にオレを悪だと決めつけてんじゃねぇよ!そんな奴が正義の味方を語るな!」


「なにを……」


「ウェルの言う通りですわ!」


 黒いハイヒールがジャスティゼイオンの頭に弧を描いて直撃した。


「セレンティーヌ。どうして!?……」


「人間がなんのつもりだ……」


「アンタに文句を言いに来ましたわ。なんか文句でも?」


 すげぇカッコいい登場……今ので全部持ってかれたな。


 流石はアニメのキャラククター。三流芝居のオレと違って台詞がさまになってる。


「……文句だと?」


「そこに無様に膝を付いてるのが私の部下なの。部下をこんな目に合わせた奴が目の前にいるのに文句を言わない上司がいると思う?」


 無様か……一々棘のある言い方をするもんだ。


 だけどあんなに威勢を張ったのに結果はこうだ。反論する資格なんてオレにはない。


「ウェルブレイザーが人間の部下……あり得ない。逆ならまだしも、奴が人間に従うなどあるわけがない」


「アナタにウェルの何が分かるって言うのよ」


「分かるさ。ワタシは奴をずっと見てきたからな。奴は人類の敵でこの世界の敵だ!」


「……ウェルの過去とかアンタとの因縁とかそういうのは全く興味ない。だけど一つ確かなのはこの場にいる敵はただ一人。アンタだけってことよ!」


「ワタシが敵だと?……勘違いするな。ワタシは人類の味方だ。君達人間を守る為に私達は戦っているんだぞ!」


 この一言に若干キレた様子でジャスティゼイオンはセレンティーヌの元に近づき剣を向ける。


 人の何百倍もある巨大な存在と殺気をを目の前にしてもセレンティーヌは顔色一つ変えないまま続けた。


「じゃあこれはなんなのよ。物は散乱し、サクラの木は倒れ、聞こえていたのは悲鳴だけ。挙げ句の果てには守る筈の人間まで巻き込みかけて、それでも本当に守ってるって?…冗談じゃない!」


「なっ、……」


「勘違いしてるのはアンタ。守ったのは間違ってもアンタなんかじゃない!」


 正直セレンティーヌは人よりちょっとキレやすくて、ちょっとめんどくさい。原作でも声を荒げる事は珍しくなかった。


 でも他人の事でここまで感情的になる彼女をオレは知らない。


「ついでに言えばウェルもウェルよ!」


「お、オレ?……」


「この私にたてついといて何こんな訳の分からない奴に負けてんのよ。このポンコツ!」


「ぽ、ポンコツ!?…お前な、命を張った部下に対して、いくらなんでも言っていい事と悪いことがあるだろ!」


「私の部下の分際で私より目立とうとするウェルが悪いのよ!」


 セレンティーヌの奴……


「…オレはお前の為にな、」


「守ろうとしてくれた、でしょ?」


「ぁ?……」


「でもそんなの私は頼んでない。大体、私の許可無くカッコつけるなんて百年早いのよ。一人で抜け駆けだなんて絶対に許さないから。ウェルが目立つ時は私も一緒よ」


 ふっ、これが彼女なりの意思表示ってことかね。ほんと素直じゃない子だよ。


「正直にありがとうって言ったらどうなんだ?」


「別に。誰もそこまでは言ってない」


 面倒くさい。でもそれが彼女の良いところだ。


 困ったことにオレはツンデレみたいなのも嫌いじゃない。


「どうして人間が奴を庇うんだ……」


「何度も同じこと言わせないで。そんなのウェルが私の物だからに決まってるでしょ」


「オレは物じゃないんだけどな…」


「立ちなさいウェル。一緒にやるわよ」


 倒れた人間を起こすようにオレの人差し指をギュッと握りしめる。


「でもやるってどうやって、うおっ!」


「えっ!?」


「バカな!人間を取り込んだだと!?」


 その瞬間、二人は何かに共鳴するように光輝きセレンティーヌの体はオレの中へと消えていった。


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