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第7話

 シロとクロのステータスを隠すため作成した完全偽装のスキル。シロは神級、クロは上級と同じタイミングで同じように作ったはずなのに、級が異なってしまった。何故違いが出てしまったのか、気にはなるシロとクロだったがステータスを隠すことは出来たため、後ほど余裕がある時に検証をすることにした。


 シロとクロはガーネットに朝食だと呼ぼれ寝ていた部屋からガーネットの執務室へと向かった。

 レオンはおらず、来客用だと思われるローテーブルの上に皿が並べられていた。メニューはミルクの味がするお粥とサラダ、オヤツはクッキーだ。ガーネットはテーブルの前のソファにシロとクロを座らせて食べるよう促す。スプーンとフォーク、箸も準備されていて、お行儀は考えなくていいから好きなように食べなさいとガーネットはシロとクロに伝えた。頷いた二人はいただきますと、手を合わせてから食べ始める。


「そういえば、二人はどっちが年上なんだい?」

「えっと、親がいないのでどっちが上かは分からないです」


 ガーネットの疑問にクロが答える。二人は兄妹ではないし、歳も同じだ。誕生日で言えば夏生まれのクロの方が年上になるかもしれない。シロは生まれてすぐ施設に預けられた為実際は何日かズレている可能性があるが、書類上は正月生まれだ。

 「すまないね」と眉を下げるガーネットさんに「大丈夫です」とクロは答えシロをみると頷いていた。自分たちの背景設定を考えるのを忘れていたが、クロが適当に言った設定でシロも今後動いていくらしい。


 シロとクロは朝飯を食べ終わり「ごちそうさまでした」と言うと、ガーネットが「おそまつ様」と返してくれた。異世界なのに「ごちそうさま」と言って「おそまつ様」と返ってくる不思議。クロが不思議そうに思っているとシロが小声で「多分召喚者か迷い人のせいだと思う」と言った。召喚者と迷い人は日本人が多いのだろうかと思い、クロはガーネットに聞いた。


「ガーネットさん、召喚者と迷い人ってどこから来た人なんですか?」

「あぁ、召喚者と迷い人はね日本、日ノ本という国から来た人が多いね」

「召喚者と迷い人はどのくらいいるんですか?」

「んー現在の召喚者はディクタチュール国に召喚されたクロ君とシロちゃん、勇者たち五人だけ。ヤマトノ国の王様は迷い人だね。ヤマトノ国は迷い人の子孫が多いけど、存命の迷い人はヤマトノ王だけだよ」

「召喚者も迷い人も、過去に何人もいたってことですか」

「召喚者は、あとで歴史を勉強しようか。迷い人はいつも突然現れるんだ、ひとりの時もあれば大勢の時もあったらしい。迷い人のお蔭で国が発展したという例もある。迷い人の多くは死を経験した所為か総じてレベルが高く、強い人が多い。ヤマトノ王は異様なまでにレベルも高くて強くてねぇ。あ、レベルというのはね、その人の体力、魔力などの力の強さを示しているものでね」


 ガーネットはレベルの説明をはじめた。

 レベルが上がると生命力が上がり死ににくくなる。力が強くなる。魔力が上がる。覚えるスキルが増えるなどといった恩恵がある。街に住む人はレベル10か20ほどで頭打ちだが、冒険者のような危険な仕事や、職人のような特殊技能が必要とされている仕事をしている人はレベルが上がりやすい。人によってはレベル70まで到達するとのことだ。

 迷い人は特に高レベルになりやすいそうで、世界を救ったことも何度かあるとかないとか。恩恵をもらったこの世界は日本の技術や文化で少々染まっているということだろう。

 文化を輸入した者を迷い人と言い切るガーネットにクロは疑問を覚えた。ディクタチュール王は召喚者が兵器になると言っていた、レベルも上がりやすいと思うし、意図して呼んだ召喚者の方が国にとって恩恵を得やすい筈なのに、ガーネットは召喚者の話をしないのだ。召喚に巻き込まれたシロとクロに話すのは酷だと思っているのだろうか。

 クロとガーネット話が終わった時を見計らい、シロはガーネットに質問をする。

 

「ガーネットさん、昨日私達の生活の保障をしてくれるとのお話でしたが、この国を出ても保障されますか?」

「大丈夫、どの国にいても保障するよ」


 「二人とも頭良さそうだし、魔法学校に入学したほうがいいんじゃないかねぇ」とガーネットが言うのをシロは聞き逃さず「なんですかそれは?」と問う。クロは「俺もう学生したくない」と視線を送るが、シロはクロを無視しガーネットと話を進めていく。

 元学校の先生で、シロもクロも精神的には大人。若い子どもたちと切磋琢磨する気力がクロにはなかったし、面倒臭いという気持ちもあった。


「魔法学園というのは頭の良い子や貴族の子ども達が入るんだよ。四年勉強して、卒業した多くの子は国に仕えたりするんだけどね」

「魔法学園には冒険者をやりながら通っている子どもはいますか?」

「魔法学園にはいないかねぇ。多くの平民の子は成人前に冒険者学校という学校に一年間通ってから、働き始めるんだ」

「冒険者学校はこの国にしかないんですか?」

「えっと、魔法学園はヤマトノ国とユナイ王国にしかないね。冒険者学校はどの国にもあるよ。ヤマトノ国の冒険者学校はギルド本部や魔法学園とも連携しているから他のところよりも学習内容は実践向けかね?」

「わかりました。あ、成人っていくつですか? それと冒険者学校の入学試験はありますか? 入学金は? 冒険者は何歳からできますか?」

「ちょっとだけ待っておくれ、冒険者用の説明用紙を持ってくるからね! 入学要項がギルドの受付に置いてあったはず、成人は十五歳だよ!」


 シロの質問に慌てたガーネットは立ち上がり、急いで執務室からでていく。クロはシロをチラリとみると「ガーネットさんすごいね、言いたいだけ言ったのにひとつも漏らさず聞いてくれたよ」とすまし顔だ。シロの質問攻めはわざとだ。クロと話がしたいから、ガーネットには席をはずしてもらうおうと思っての行動だった。


「ということで、クロ。私達は冒険者学校に通うことを短期目標としよう」

「理由を聞こう」

「平民の子は冒険者学校に、ってことは世の中のノウハウが冒険者学校に詰まっているということ。この世界のことを全く知らない私たちにピッタリー。冒険者ギルドも連携しているってことは名前の通り冒険者用の講義があるってことでしょ、憶測だからもう詳しく聞きたいところだけど」

「魔法学園は?」

「魔法学園は貴族の子が通うってガーネットさんも言ってたからね、後ろ盾がない私たちにはちょっとねぇ」

「ラノベだと貴族と関わる事は大体碌なもんじゃないしなー。いいぞ、冒険者学校に入ろう」

「よし決まり。ただ冒険者が何歳からおっけーなのかによっては、入学金に困るね。持ち物でも売る?」

 

 シロは金銭になりそうな手持ちのものを思い浮かべる。スマホは電気がなければただの箱だとしても、ハンドメイドイベントで購入したルビーのネックレスや服は売れるかもしれない。

 クロも自分の手持ち道具をポケットから取り出す。充電残量が残り少ないスマホと、健康管理の為に付けていたスマートウォッチ。初任給で買った黒い革の折り畳み財布。財布は売れる可能性があった。着ていたジャージも売れるはず。


「シロ、スマホの充電あと何パー?」

「んー、二十パー。スマホがごみになるかは過去の迷い人に期待しておいて。金だよ金」

「がめついですねー」

「世の中金ですからー」

「シロ、今の残金は?」

「日本円はスマホのカバー裏に隠していた千円とがま口財布に入れてた百円玉だけかな。銅貨は五十枚、銀貨二十枚」


 半分あげるとシロから銅貨二十五枚と銀貨十枚を受け取ったクロは、革の財布に入れたのちズボンと肌の間ウエストあたりに隠すよう挟んだ。

 現代日本はさておき、弱い立場の人間は金を隠して持っていた方がよいと経験的に知っていたからだ。

 シロも手のひらサイズのガマ口財布に紐を括りつけ、首に下げて服の中に隠した。


「あ、それずるい、俺にも紐くれ」

「着てた服のゴムでも引っ張り出せばいいじゃん」

「そっか! 俺ジャージだったから腰の紐ある!」


 あとでジャージの紐とって、財布に結んで。やりたいことを口に出すクロに対し、シロは「日本円って美術品として売れるのでは?」と金策に頭をひねる。

 幕末時代も金策に頭を悩まされていたことを思い出したシロは顔を顰めた。

 どの時代、どの世界でも先立つものは必要だ。

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