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訳アリ教師ふたりが異世界召喚に巻き込まれたようです  作者: 藤白春


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第28話


 両腕、両足を斬り落とされ、両目を潰されたガープ。

 ガープの傷口から血のような液体が滝のように溢れ出る。五体不満足になってもまだ大きな身体を揺すり、自らの尻尾と影手を操るが戦闘が始まった当初よりも勢いは落ちていた。

 

 やっと息をつく間が出来たシロは自分の格好が気になり始めた。余裕が出来た証拠だろう。

 シロのお気に入りである灰色のローブには血のようなものがとんでおり、赤黒い柄が出来てしまっていた。


 この血みたいなシミって落ちるのかな。

 血って落ちにくいからなぁ。レオンさんとククリさん辺りにバレると厄介だから何とか落とさないと。

 

 必死に洗濯をする自分を想像し疲れた表情を浮かべたシロ。

 周りから冷静な声が聞こえ始め、シロの思考はローブから声の方へとうつる。

 シロがガープの目を潰した結果、精神操作から解放された冒険者達が意識を取り戻し始めたようだ。


「あれ、俺なにを」

「いたたたっわたしは、いったい?」

「うおおおおっ悪魔の腕と足が落ちてる!?」

「ほ、ほんとうだ、だ、誰がやったんだ!」

「いや待て、ガープはまだ動いている!」

「まじか、すげぇ!」

「今のうちに畳みかけるぞ!」


 「おぉ!」と声を上げ、冒険者達はガープに向かって自分の得意な攻撃魔法を放つ。近接攻撃が得意な者は剣や槍等を持ち攻撃をしかけていた。

 しかし、ガープも黙って攻撃を受けるわけが無い。


「ワレニコノチカラヲツカワセルトハ! ショウサンシヨウ、カトウセイブツゴトキガヨクヤッタト! ホウビニジゴクヘトオトシテヤル!」


 ガープの横たわっている側の床面が、突如光り輝く。

 何だなんだと、冒険者たちが攻撃の手を緩めた瞬間、ガープが叫ぶように詠唱した。


〈地獄から参れ、我が配下六十六の悪魔よ、召喚サモン!〉


 激しい光の点滅の後、魔法陣から黒い泥の塊のようなものがいくつも現れた。

 黒泥は形を成していく。人間ほどの大きさになった黒泥は山羊のような角と、虫の翅が生えていた。

 目や鼻はなく、異様に大きな口だけが顔であろう部分にあった。口内に生える大きな白い歯の並びを見せつけるかのように気味の悪い笑みを浮かべたのち、金属音のような耳障りな声を上げ、冒険者達に襲いかかった。


 冒険者達はその光景に息を飲む。

 見たこともない生き物、魔物というには異様な姿で生物なのかと疑いたくなる。

 

 冒険者達は力強い声を上げ、自らを、仲間達を鼓舞しながら召喚された悪魔達に攻撃を仕掛けていく。

 冒険者の名誉のためではない。この異様な化物を闘技場の外に出してはいけないと「コレは危険だ!」と危機感を感じていた。

 冒険者としての経験が「コレはこの世に存在してはならない」と叫んでいた。


 混戦のさなか、冒険者達の頭上から轟音と共に激しい攻撃が悪魔達を襲う。


 何事だと幾人かの冒険者たちが上を見た。

 闘技場の貴賓室と呼ばれる貴族専用部屋から銃の先が姿を見える。銃口は冒険者ではなくガープや召喚された魔物たちに向けられていて、いくつもの魔物を撃ち倒していた。

 冒険者達は「援軍だ!」と喜んだ。冒険者達の勢いは増していく。

 銃弾の援護の中、冒険者達は悪魔達を斬り、突き、燃やし、凍らせた。

 正常な意識を取り戻した冒険者達の攻撃に、悪魔達は反撃する余地もない。

 六十六体の悪魔達は胴や腕、足、頭、翅、角を斬り落とされ、槍で突かれ、弓矢が全身にささり、魔法で燃やされ凍らされ風によって体を切り取られた。

 黒泥で出来た体は床へ落ち散り散りとなり、再生しようと蠢くが冒険者達の攻撃に阻まれた。


 暴れまわる冒険者達と魔物の間を、シロはのんびり歩いていた。


「ナンダコレハ、イッタイナニガオコッテイルッ!?」


 ガープの操る影手がシロに向かって攻撃をしかけてくる。

 瞬間、影手は撃ち落とされ塵と化す。

 シロは影手や銃撃を気にせず、立ち止まることなく歩いていく。


「ワ、ワレハアクマオウガープサマダゾ! コンナ、コンナ、コンナコトガアッテタマルカッ!!」


 シロが持つ大太刀は、シロが歩くたびにカリカリと地面を削っていた。

 シロは小さな両手で大太刀の柄を握りしめ持ち上げた。

 シロは歩く速さを上げ駆け出し、兎のように一歩、二歩、三歩と前へと跳び出した。


「ワ、ワレヨリツヨイマリョクダトッ!? ダレダ、ダレダ!? アァッ、クルナ! クルナァアアアッ!!」


 シロの魔力を注がれ金色に輝きはじめた大太刀の切っ先をガープの顔面に突きつけたシロは、四歩目を全力で踏み込んだ。


さようなら(しね)


 大太刀による突き。

 衝撃が1回、ガープの顔が裂けた。

 2回、ガープの顔からつま先にかけてガープの体が二つに裂かれた。

 3回、斬撃が闘技場の壁に巨大な穴を開けた。


 飛び散る血と肉片が、ボタボタと雨のように地面に降り落ちる。

 壁の破片がガラガラと落ちる音がおさまったのち、闘技場は静寂に包まれた。

 シロは息を一つ吐き出し、大太刀を地面に突き刺す。


 冒険者達の前にいた黒泥の魔物は形が歪み、ビシャリと水音を立て床に広がった。

 地面に大太刀が地面に刺さる音で我に返った冒険者達は「ワアアアアアアアッ!!!!」と勝鬨の大声上げる。

 冒険者達の歓喜の声が、闘技場内に響き渡った。

 

 泣いて喜ぶ者、抱き合って勝利を分かち合う者、大声を上げて勝利を祝う者。

 闘技場にいる冒険者全員が、ガープの討伐達成に喜びの声を上げた。


 シロはチラリ上を見ると、クロがこそっとピースサインを出していた。

 腹立つ、今度はクロが前に出ろ。と思うがどうせ結局私が前に出るんだろう。

 前々職の職業病かこれ、せめて教師であれよ。

 シロは自分の職業経歴を恨んだ。


 シロはレオンや他の冒険者達に気づかれないように闘技場の壁に空いてしまった大穴から外へと抜け出す。

 闘技場の外にある街路樹まで見えてしまう大穴に「どして?」と自ら開けた穴にシロは疑問を覚えていた。

 

 でっけぇ穴、大太刀の力だよね。私の力じゃないよね?

 無意識に魔力篭めたらなんでか輝きはじめたし。なんでか金色の斬撃も飛んでったし! 私の攻撃はただの三段突き! 私のせいじゃなくて大太刀のせい!

 

 まさか突き3回で、顔面から下半身まで裂けるとは思わないじゃないですか。とシロは自分へ言い訳をしているのかブツブツと一人反省会を開催しながら、真っ赤に染まったローブを異空間収納へしまう。

 服をいつもの青い服へと着がえ、素知らぬ顔で闘技場の入口から改めて中へと入った。


 冒険者達が喜び騒いでいる横を駆け抜けて、階段を上り貴賓室の前に辿りつくと、クロが扉の近くにしゃがみ込んでいた。シロの姿を見かけると「おつー」と笑い右手を上げる。


「疲れた、帰って風呂入って寝たい」

「最後の三段突き最高だったぞぉ。返り血も浴びてさ、まじ紅き修羅だった」

「やめろ黒歴史」


 「くふふふ」と気持ち悪い笑みを浮かべるクロに文句をいう気力もないシロは、壁にもたれかかりしゃがみこんで、小休憩。

 疲れた様子のシロに「なんか飲むか?」と鞄から水袋と木のコップを出し、コップに飲物を注ぐクロ。中身は水に塩、砂糖、蜜柑の果汁を混ぜたもの。

 蜜柑はミミという名称の果実だったが、ヤマトノ国王が「コレは蜜柑だな」と言ったためヤマトノ国では蜜柑と呼び書くようになったらしい。ちなみにレモンのような味の果実もあるが、名前はレレという。

 クロから飲み物を受け取ったシロは口に少し含んだ。

 

「動いたあとなんだからもっと飲め」

「えー、これ味薄いんだもん」

「わがまま言うんじゃありません!」


 この飲み物はジュースとしてではなく、熱中症対策でクロが作った経口補水液のようなもの。クロは経口補水液を作る割合等を全く覚えていないため多少味重視にしてはいるが、美味しい飲み物を知っているシロには不評なようだ。

 チビチビと水分補給をするシロとクロはこのあとどうするかと話し合う。

 「貴賓室にはトムを迎えにいった。でも悪魔攫われたのでどうしようと思っていたら、偶然知らない人が現れて大きな剣を引っこ抜いて悪魔を倒した」

 自分達は偶然その場に居合わせてみてしまったというシナリオを作り、誤魔化そうという作戦を立てる。

 シロクロは何もしていない、何もできなかった子どもだと大人たちに説明しよう。自分達に力があると知られ、依頼や責任を押し付けられても困るからだ。


 休憩を切り上げたシロとクロが研修室に戻ると、冒険者ギルド職員の人に「何故部屋を出た。何故すぐ戻らなかった」と注意を受ける。

 先に出て行ったトムを連れ戻そうとしたことと、人が多く研修室まで戻れなかった。あと変な人が大きな刀を持って闘技場に向かった姿を見たと説明する。

 シロとクロの説明を裏付けるように、セキとヨウもトムの行動を説明してくれる。

 

 「悪いのはトム!」


 研修室にいたGランクの子ども全員で叫ぶようにいうと、冒険者ギルドの職員は驚いたあと「申し訳ない」と子ども達に謝った。納得してくれたようだ。


 ガープを倒した人物について、心配し合流してきたレオンや冒険者ギルド長フクタロウから根掘り葉掘り聞かれたが「こわくてよくわからなかった」とシロとクロは子どもらしく説明した。

 説明を聞いたギルド長とレオンは少し考えたのち、頷いてくれた。

 

 その日は結局研修も無しになり、セキとヨウの孤児院に行く予定も別日となった。

 子熊食堂への帰り道「怖かっただろう、すまなかった」と頭を下げるレオンにシロとクロは慌てた。

 自分も傷だらけで戦い、結局謎の人物に手柄を奪われたにも関わらず怒ることはなく。巻き込んだ子どもに頭を下げるレオンにシロとクロは「お、おとなだぁ!」と少し感動した。


 後日ガープを倒した謎の人物にはギルドから多額の報奨金と、Aランクに到達していない場合はAランクへ昇格の確約が決定。

 ギルド本部、ひいてはヤマトノ国を守った英雄として国王から褒美、名誉が与えられると発表された。

 戦った冒険者たちにも報奨金が出たそうだが、魔女ビビアンは意図的ではないとはいえガープを召喚した責任は重いとされ半年の冒険者活動の停止処分をうけた。またビビアンの所属するパーティ紅蓮の獅子は責任を取るとして暫く活動停止をすると発表した。



 ちなみにシロは赤黒色染み付きローブとの洗濯対戦回避を狙い≪復元≫を唱えたところ、元の灰色に戻った。

 

 「よかった、これで黒歴史(紅き修羅)からおさらばできる!」

 

 シロは喜びの舞いを躍ったが、見ていたクロは「チートの無駄遣い」と呆れていた。


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