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訳アリ教師ふたりが異世界召喚に巻き込まれたようです  作者: 藤白春


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第27話



 シロが考えた作戦は簡単だ。

 現在シロとクロがいる貴賓室から銃で牽制しつつ攻撃、背後から刀で斬る。

 奇襲攻撃は武士の名折れ! と言われてしまうだろうが、シロもクロも勝てば良いとしか考えていない。死んだらどうせ文句なんぞ言えないのだから。


 ただ、ここは異世界。シロクロの経験値は対人間のみ。魔物はストーンボアとホップディアという猪と鹿を倒した以来まともに戦ってはいない。レオンが過保護なので城壁の外に行くことが少ないためだ。

 ガープという魔物は精神操作を使うのでその辺の魔物と同じように考えてはいけないが。

 

 一発勝負で、斬り込むしかない。無理だったらその時考えよう。


 シロは着ている青い服を脱ぎ、異空間収納から召喚時に着ていた白いシャツを着た。長い裾はズボンの中に突っ込む。

 長い袖は邪魔にならないよう何度も捲り上げ、その上にクロの寝間着である甚平を着こむ。さらにその上から灰色のローブを纏った。

 ハンカチで口元を覆い、ローブのフードで顔と髪も隠す。深くかぶれば脱げないだろう。


 服装ではなく身長でシロだと気づかれる可能性はあるが、レオンはシロが刀を扱える事を知らない。

 貴賓室から銃を使っていれば、銃を使っていたのがシロクロと勘違いしてくれる筈。


 シロクロは再び貴賓室の中へと入り、クロは壁を伝って位置につく。

 シロは壁に突き刺さる刀を引き抜こうともがくが、身長が足りずもがく羽目になる。

 何とか刀を引き抜いた瞬間、シロは倒れ込んでしまった。慌てて闘技場の方を見るが特に攻撃はない。

 クロが「馬鹿!」と声に出さず文句を言っているが、シロはそれどころではないのでクロを無視した。


「やだもぉ、なんか知ってる大太刀よりでかいんだけど……!」


 ヤジロベエの愛刀である大太刀はシロの身長を軽く超えているため、シロが持つとさらに大きく見えた。

 鬼族は身体が大きく力持ちの多いことで有名だ。

 ヤジロベエの身長は二メートルを軽く越えており、子熊食堂の店主スーよりも大きくガッシリとした身体つきだ。熊よりも大きい人が使ってた武器であり、子どもの身長で振り回せる物ではない。


〈魔力よわが身に宿れ、身体強化、筋力向上〉

 

 やけっぱちにシロは呪文を唱える。すると身体に魔力が纏い、軽々と大太刀を持ち上げられるようになった。

 

 シロは念じる。

 これは打刀じゃない、これは大太刀。小手先の細かい動きには不向き、巨大な薙刀か、槍だと思え。薙刀も槍も不得手だが、師から及第点は貰っている。


「よし、チート能力とチート魔力でなんとかなれ!」


 シロは「ふー」っと息を吐き出し、大太刀の鍔元辺りを握りしめる。

 クロに目で合図を送った。こくりと頷き返された。

 シロは大太刀を右脇にとり、切っ先を後ろに下げる。

 一歩、二歩、三歩と床を跳び駆けだした。

 四歩目、貴賓室と外の境目。ガラスが割れて刺さりそうだが、シロは気にせず踏みつけて勢いのまま外に飛び出した。


 空中落下をしながら自分とガープの距離を確認。飛距離も十分足りている。飛んだ瞬間は誰もシロの存在に気づいていなかったが、ガープが上を向いた。勘が良いらしい。

 山羊に似た赤い瞳を大きく見開き、影手を使って攻撃を仕掛けてくる。

 

 動きが早いが、この程度問題にはならない。

 影が音もなく撃たれ塵と化す。驚いたガープが複数の影を出現させシロに向かってくるが、直ぐに撃ち落とされた。隙を与えない銃撃に「オオオオオオオオオッ!」と大きな声を上げ身体を揺さぶり始める。

 届いた! シロは全力で大太刀を大きく振った。


 スパンッと斬り落としたのはガープの右腕。目標(クビ)を外した!

 運がよかったのは斬り落とした手の中にトムがいたこと。

 気づいたビビアンが氷で道を作り滑るようにトムを地面へと降ろしてくれた。その道を使いシロも闘技場の床に着地する。


「っ新しい助っ人か! 奴の目を見るな、操られるぞ!」


 レオンの言葉に頷いたシロは駆け出した。動いていないと攻撃されるからだ。

 シロはすでにガープの目をみてしまっていたが、特に操られる感覚はない。

 シロは一応〈復元〉と自身の頭にかけようかと考えたが、復元スキルは物が以前の状態に戻るイメージで創ったため意味はないがないかも? と思いつつ、どうせ操られている感覚もなく思考行動共に問題はないのでやめておいた。


〈水よ、氷の柱となって奴を足止めしなさい!〉

 

 ビビアンが作る氷の柱をガープは巨体にも関わらず軽々と避ける。

 シロはちょうど良いと氷の柱を使って跳び上がり、銃撃で牽制され動きが鈍っているガープに一太刀。

 寸前で腕を守りに使われた。ドサッ! と大きな音を立てながら大きな左腕が落ちる。「アアアアアアアアアアアアッ!」と悪魔の叫び。声だけで十分頭がイカレそうだった。

 シロは止まることなく、ガープの周りを跳び走り続ける。


「キサマアアアアアアッアクマオウガヒトリガープノリョウウデヲキルトハ、イッタイナニモノダッ!?」


 ガープが叫ぶ。

 シロは知ったこっちゃねぇなとひとりごちる。

 シロや冒険者達に攻撃を仕掛ける影をクロが撃ち落とす。

 猛攻撃の間を駆け抜けるシロは勢いのままガープの両足を斬り落とした。


 「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」痛みがあるのかガープは絶叫する。

 ガープは叫びながらも視線を冒険者の方に向ける。するとシロに向かって斬撃、拳と攻撃がとんできた。最初はレオンの剣で、拳はヤジロベエの攻撃だ。

 シロは地面から跳び、身体を捻って二人の攻撃を躱す。


 ガープに操られた冒険者達の攻撃はシロにとって邪魔でしかなかった。

 面倒だな、斬るか?

 脳裏にレオンとヤジロベエなど、冒険者達を斬り捨てること思い浮かべるシロ。特にレオンは炎の魔剣を使ってくる、攻撃を受けた闘技場の床は焼け溶けていた。

 レオンの表情はシロとクロに向ける優しげなものではなく、どこをみているのかわからないほど黒目があっちこっちをギョロギョロ動いていた。

 攻撃を受けたくないし気持ち悪い、けど斬ったら斬ったで後々面倒な予感もするとシロは舌打ち。


≪水よ、氷となり足止めしろ≫


 勿体ぶるものではないだろう。シロは威力倍増を狙い日本語で詠唱するとレオンとヤジロベエの足元が凍りつき足止めされた。レオンにすぐさま溶かされるだろうが多少時間は稼げるはずだ。


 レオン達に意識を向けていたシロはガープの攻撃に気づくのが遅れた。シロはガープの尻尾による攻撃を咄嗟に大太刀で受け止めるが衝撃が大きく後方に吹き飛んでしまった。闘技場の壁に打ち付けられそうになったシロだったが、大太刀を壁に向かって大きく振る。


《風よ、大きく吹き我が身体を上空へおしあげろ!》


 シロは大太刀による斬撃で壁との衝突をいなし、風魔法で自分の身体を上へと押し上げた。


 スプラッタ怖ぇ! とひとり叫ぶシロだったが安心したのもつかの間、操られているらしいビビアンが〈氷よ、刃となれ〉とシロに杖を向けた。

 シロに向かって氷の刃が飛んでくる。


≪水よ、厚く大きな膜となれ!!≫


 シロは叫ぶように詠唱すると、水の膜が出現し氷を受け止めてくれたが氷の刃はシロを囲んでいたため、水魔法で相殺しきれなかった氷は刀で弾き飛ばした。

 他にも復活した冒険者たちがシロにむかって魔法を撃ってきたり斬撃を飛ばす。

 集団的イジメか?! 先生かなしいぞ!! と半泣きのシロは気合いで避けるが全てを躱しきることは不可能で、脇腹に炎の斬撃を喰らってしまった。レオンの攻撃だろう、焼け爛れ炎が傷口からジワジワと広がる様子にシロは「やけどによる継続ダメージってこういう事?!」と叫んだ。叫ばないとやってられないらしい。


 シロが叫ぶ間、クロはガープの影を相手するのに一杯一杯だった。射撃でシロに向けられ攻撃を幾つか止めたのだが、乱戦のため援護が難しい。

 シロも魔法の行使しながらを刀を振り回すのはこれが初の実戦だ、どこぞの主人公のようにチート能力で楽にサクッと終わることなど有り得ない。現実は時に無常である。

 シロは生きて帰ることができたら実戦経験を積もうと心に決めた。


「ハハハハハッナカマドウシデコロシアエ!!」


 ガープは両腕両足を斬られても尚体力気力があるらしく、影手を使い身体を支え攻撃を仕掛けていた。

 さらに影を使って落ちた腕と足を回収し、再びくっつけようとしているのだろう。ガープの視線は腕と足に向かっている。

 四肢を切り落としてもくっつくのでは切り落とした意味がなくなってしまう。

 シロは異空間収納からナイフを2本取り出し、ガープの両目に向かって全力で投げた。

 ドスッ、ガープの両目にナイフが刺さる。


 「ギャアアアアアアアアアアアッ!!!?」とのたうち回るガープの周りから影手が消えた。

 よっしゃいまだ! とシロは床を踏みしめ大太刀を右上から大きく振った。しかし、冒険者の土魔法で地面が泥になっていたのか踏み込みが甘く、飛んだ斬撃が闘技場の壁を抉った。


「クッソ、上手くいかないなぁ!」


 ズキズキ痛む脇腹にシロは顔を歪めた。

 やけどに切り傷なんて慣れているが痛いものは痛い。隙を見つけ復元の詠唱したいのだが、ガープがのたうち回っている為攻撃の先が読めず避けるだけで精一杯だったが、突然シロと身体全体に魔法がかけられた。

 脇腹と自分よりも大きな刀を振り回していたせいで痺れ始めていた腕の痛みが消えていく。


 何事かとシロは回復魔法の出処に視線を向けると、頭の上部だけ髪の毛が無くサイドに申し訳程度に黒い毛が残る小太りの中年期であろう男性が「残りの魔力を全部つぎ込んだよ! あと少し頑張って!」と叫んだ後、地面に倒れこんだ。魔力切れだろう。


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