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訳アリ教師ふたりが異世界召喚に巻き込まれたようです  作者: 藤白春


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第25話


 慌てる大人たちによってGランクの子ども達は研修室と呼ばれる部屋に避難をした。


 避難するならギルド本部の建物から出た方がいいのでは? シロは少し思ったが「闘技場と本部の各部屋には結界が張られているから安心して!」と子ども達に説明し、泣いている子達を宥めていた。

 今回の悪魔も結界を破れる様なランクではないそうで、安心らしい。


 そして、ここはギルドの総本山。数多の冒険者が在中し、レオン達以外のAランク冒険者や腕に自信のある冒険者たちが闘技場に向かったそうだ。召喚された悪魔も召喚されてすぐ倒されるなんて難儀なものだ。


 泣き叫ぶ子ども達が落ち着いてきた頃、いつの間にか避難してきた騎士職の息子トムとその取り巻き二人が一段程高くなっている教壇らしき場所に立ち、声を張り上げた。


「平民諸君、安心したまえ! 悪魔はこの俺、トム・シュヴァリエが倒す!!」

 

 基本的にこの世界の住民に苗字は無いが、特権階級である王は苗字を持ち、貴族は王から苗字を納める土地と共に苗字を貰う。

 英雄達は自分で名をつけたり、王様からもらったりなど様々な理由で苗字を持っている場合がある。

 平民は必要に応じて「Gランク冒険者のシロとクロ」「子熊食堂のスー」「夢幻草店のエリリー」「クート孤児院のセキとヨウ」等など職業や種族、住んでいる場所などを頭につけ名乗ることがほとんどだ。


 「シュヴァリエ」という苗字は王から爵位と共に与えられる苗字だ。

 騎士としての働きを期待されるからこそ、騎士はみんなシュヴァリエの名を受け取る。

 皆シュヴァリエと名乗るとややこしくなる為普段は苗字を名乗らない。それにシュヴァリエの名は一代限りなので、息子は使うことがてきないのだが、トムは堂々と父親の姓を名乗った。その事にシロは拍手を送る、少々馬鹿にして拍手をしている節もあるが、騎士爵が皆の安心材料になることも事実。


 ノブレス・オブリージュ、高貴なものの義務。弱いものを守るのが強者の務め、トムはそれをわかっている。と思われる真剣な表情を浮かべていた。


 騎士爵が自分のモノにならない事は知らない。ちぐはぐな知識と傲慢な点は弱点になるが、正義感はある。

 軌道修正さえすれば良い男になれるだろう。


「供としてお前を連れて行く、来い!!」


 クロを指名したトムは颯爽と研修室から出て行く。


 金髪をみると一之宮君を思い出すなぁ、ちゃんと勇者やっているだろうかとクロは意識を逸らした。クロはトムに興味は無い、馬鹿にする程意識も向けていなかった。


 突然のトムの行動に涙が引っ込んだ子ども達。

 研修室内は静まり返る。

 トムがいま魔物の元へ行くと危ないのではないか、冒険者足でまといになるのでは無いか、止めるべきでは? でも自分達に貴族の子どもを止めることなんてできるのか?


 シュヴァリエの名前を聞いて安心するどころか、どうしようと青ざめる子ども達。この場でトム様に対抗出来る貴族の子どもなんて居なかった。

 となると、誰かが犠牲となって貴族の怒りをかいながら止めるしかない。子ども達の視線はクロに集まった。


「えっ、やだ、俺を見ても何もないわよ!?」

「ご指名じゃんクロ、稼いでこい」

「やだぁ! 私まだお化粧もしてないのよぉ!」

「ボケてないで行け」


 シロは研修室からクロを蹴り出そうとするが、クロはシロの足にしがみつき離れない。


「ちょっ、コントじゃないんだからひっつくな! おトム様戻ってくるよ!」

「いーやーだ! 何で俺? なんでおれなの!?」

「おトム様のお眼鏡にかなったんでしょ、よかったじゃん、逝ってこい!!」

「逝くの字が違う気がする!! あっセキ! 魔法銃みせてやるからさ、な!?」

「悪い、俺孤児院育ちだから貴族様に対抗できない」

「ヨウちゃんは?!」

「私も無理だよごめんね。終わったら国に嘆願書出してみるけど期待しないでほしいな」

「二人とも大人対応だぁ!」


 「シロォ!」と泣き出すクロにシロは「ガチ泣きしないでよ」とクロの涙にドン引きしていた。


 トムがクロを指名したのは自分が魔法銃を使いこなせないからだろう。

 魔法銃を上手く使えない事で癇癪を起こしたりせず、使えるものにお願い出来る姿は割とポイントが高いとシロは考えていた。悪い子では無いのだろう、ちょっと踏む鍵盤を間違えているだけ。


 シロはため息を吐いて、足元にまとわりついていたクロを引き剥がした。


「セキ、お願いなんだけどギルドの人にトム様のことを伝えてきてほしい。私とクロはトム様を回収してくるから。ヨウは他の子達が変なことしないか見張ってて」

「おう!」

「わかった!」


 セキが研修室から走って出て行く。ヨウは「トム様みたいな奴は殴ってでもとめるから!」と研修室の入り口前に陣取りガッツポーズをみせた。



 シロとクロは研修室を出てトムを追いかけたがトムの足は早く姿を見つけることが出来ないまま闘技場の入り口前に辿りついてしまった。


 闘技場の入り口は多くの冒険者が集まっていて塞がっている。


 ここで足止めされてたらいいんだけど、と思いながらシロクロは背伸びをしたり大人達の足の間から覗いて探してみるが、金髪巻き毛の姿は見つけられない。

 近くにいた冒険者達に「ここに子どもきてませんでしたか?」とクロが聞いてみるが見ていないらしく皆一様に首を横に振った。


 子どもの小さな体は大人達の間をすり抜けることも容易だ。だが少々強気な性格のようなので「平民ども、道を開けよ!!」とかいいそうだなとシロは想像していた。

 トム絡みの騒ぎが起きていないとなると、大人達のいない場所から闘技場を眺めることが出来る場所をトムは知っているのだろう。


「どうするシロ、一旦戻るか?」

「嫌な予感する、せめて姿だけは見つけたいなぁ」

「シロの嫌な予感当たるからなぁ……あれ取り巻き君じゃね?」


 「あ、ほんとだ」とシロとクロが見つけた取り巻き君という名の眼鏡をかけたオドオドしている少年がいた。

 少年は闘技場入り口から離れた階段の下で挙動不審に辺りを見渡している。シロとクロは「やだー嫌な予感しかしないー」と面倒臭い気持ちがあったが、何かあってからでは更に面倒なので少年の側に駆け寄る。駆け寄る二人に気づいた少年は「良かった!」と安心したような、救われたような表情を浮かべた。


「えーっと、トム様と一緒にいた子だよね? トム様ともう一人はどこいったの?」


 シロが少年に声を掛けると震えた声で説明する。


「と、トム様は……この階段をあがった先にある貴賓室から悪魔を倒すって、言って……ごめんなさいっ僕トム様には逆らえなくて! でも君なら止められると思って待ってました! お願いします、トム様を止めてください!!」


 頭を下げる少年の勢いにシロクロは「えぇ……」と面倒臭そうな表情を浮かべる。

 トムは銃を使うクロの姿をみて「何だアイツは、俺より格好良いなんて認めん!」と叫んでいたそうだ。

 少年からみたトムはクロを羨ましがったり、銃が使えず悔しがっていた訳じゃなく、銃を使いこなす格好の良いクロと友達になりたくて着いてこいと声をかけたらしい。


 魔物に向かって行ったのは、ただ単に魔物を見たいから。以前城壁の外へ出たのも魔物をちょっと見たかったからだそうだ。危ないことをするつもりは全く無いらしい。

 その行動が危ないんじゃいとクロは思ったが黙る。取り巻きの少年に言ったところで意味がないためだ。


「トム様は魔物を倒すって言ってたけど、見るだけで満足はすると思います。お願いです、満足したトム様を連れてきてください!」

「えぇ……貴賓室なら結界も丈夫だろうし連れて来なくてもいい気がすんだけど。どうするシロぉ?」

「え、何で私に確認するの」


 取り巻きの少年とクロの会話を話半分で聞いていたシロは怪訝な顔をする。会話内容からしてシロが決める事ではないと思っていたし、トムはちょっと怖い思いをした方が良いとまで思っていた。

 対してクロは、今はひとりで動いているわけでもなく優柔不断なので決めてもらった方が気持ち的にも楽。シロの決めた事ならば「まぁシロが決めたんだから間違っててもいいか」と自分が決めた事より許せる範囲が広がることは経験上分かっていた。


「俺の大将なんだから決めてくれよ」

「やだこの男、都合のいい時だけ大将呼びしてくるわ!」

「お願いします、トム様を連れてきてください!」


 少年はシロに向かって頭を下げる。

 どうするシロぉ? とクロがシロに問いかけた。

 優柔不断男が! とシロはクロを睨みつけるが、それは今更かと頭を抱えた。

 

 ここまで来たらトム様を連れて帰ろうという気持ち二分の一。

 私は関係ない気持ち、二分の一。

 突然大将呼びをするクロに少し怒りを覚えながらも、私が選んだ事に文句は言ってこないだろうともわかっているシロは「だから副大将止まりなんだぞ」とクロに小言を飛ばす。クロは「俺はそれでいいんだもん」とヘラり笑った。


 シロは息を大き吸って長く吐き出した後「トム様を連れてくる」と少年の目をみつめる。


「トム様を連れてくるけど殴ってでも連れてくるから、弁護よろしくね」

「えっと、トム様は多分気にしないと思いますけど、トム様の親が気にするかもしれません。近衛騎士団の第一隊長の息子だとトム様のお母様がいつも、その、威張ってるので……」

「穏便に連れてこれるよう頑張るね……!」


 殴ると面倒だね! とシロは気持ちを切り替える。長いものには巻かれるタイプのシロに同じく巻かれた方がいいタイプのクロも大きく頷いた。

 「トム様をお願いします!!」と取り巻きの少年の応援する声を聞きながら、シロとクロは貴賓室への階段を駆け上がった。


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