表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
訳アリ教師ふたりが異世界召喚に巻き込まれたようです  作者: 藤白春


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

第24話

 氷の柱を魔法銃で穴を何ヶ所かあけて、シロセキが水魔法で出した水をヨウの火魔法で温めて穴に注ぐ作業をしていた。魔法銃で氷の柱全てを壊してしまうことも出来るが、セキとヨウの為にはならないし、本気でやっても騒がれるだけなのでシロとクロは地道に氷の柱を壊していた。


「お前、その武器をオレ様によこせ!」


 突然鼻息荒く話しかけられたクロ。声の先を見ればこの世界でよくみかける巻き金髪の男の子がいた。その後ろにはオドオドと躊躇いがちの男の子が二人頭を何度も下げている。


「ソレは銃だろう! 平民風情が持つようなものではない、オレ様のような強者が持つものだ!」

「うーんと、何をもって強者なんすかね?」

「見てわからんのか、これだから平民は! オレ様はこの国を守る騎士の家の子! 将来この国を守るこの俺が持つに相応しい武器を、平民のお前が持っていても意味が無い! それは俺のものだ、よこせ」

「ははっ、どうぞ」


 素直に魔法銃を渡したクロにセキとヨウ、そしてレオンは驚く。

 貴族風の男の子にレオンが怒ろうとしてくれたが、シロが「クロに任せましょう」と言ってレオンをとめた。

 この子は今回授業をする羽目になった噂の貴族の子だろう。レオンの爵位がどの程度かはわからないが騎士階級よりは上のはずだ。レオンには男の子よりも家に抗議してもらった方が効くだろうという算段をシロは練っていた。


 ヤマトノ国の騎士は一代限りの貴族階級。騎士の子である男の子の将来は自ら爵位を得ない限り平民となる。

 Aランク冒険者で代々貴族のレオンと騎士の子である男の子、どちらの階級が高いかは分かりきっていた。

 レオンは自分の服の裾を握るシロに頷き男の子の容姿を覚える事にした。後で名前を調べ親の騎士爵位を取り上げてやろう。


 金髪の男の子は「話の分かる平民だ、褒めてやる!」と言って、魔法銃を見よう見まねで構えた。クロの動きを見ていたのだろう。

 氷に向かって引き金を引くが、無反応。

 「なんだ!?」と一々良い反応をしてくれる男の子は銃口を覗き込もうとする。男の子に「危ないっすよ」とクロが声をかけた瞬間、パンッという発砲音と共に、男の子が後ろにひっくり返った。


 「トム様!?」と取り巻きらしき男の子二人が慌てて駆け寄った。流石のレオンとシロクロもマズイと思い駆け寄れば、傷もなく白目を向いているだけの模様。

 本来発砲音がしない筈の魔法銃で音が出た理由は不明だが、怪我がないようで何よりだとシロクロはため息を吐く。

 自分達のせいにされたらたまったもんじゃない。自業自得、何故銃弾が出ると分かっている場所を覗くというアホしでかすのか。自分トムが悪いだろソレ。という気持ちしかない。


 子ども達を見守っていた冒険者ギルド職員女性が音を聞きつけ慌てて駆け寄ってくるが、レオンが状況を説明。男の子は気を失っているだけだとわかり頷いた。


「後で俺が親御さんにご説明しようと思うが、この子の親御さんはどこ所属かわかるか?」

「確か第一近衛騎士団のトーマ・シュヴァリエ様だったと記憶しております」

「あぁ、アイツか。となると母方の親戚辺りの問題か、チッ面倒だな」


 レオンの舌打ちに驚いた女性職員だったが、気の所為だと思い直しトムをお姫様抱っこして医務室へと運んで行った。取り巻きらしい男の子二人も「トム様!!」と慌ててついて行く。


「トム様これで大人しくなるかな」

「なるわけねーだろ。今日はアイツの為の勉強会だぜ? なのに全く気づいてなかったぞ」


 セキとヨウがコソコソと話をしているが近くにいたシロクロや他の子ども達は丸聞こえで、やっぱりそうだったんだと皆頷いた。

 トムが落としてしまった魔法銃を拾ったビビアンは「へぇ」と面白そうに眺める。 


「魔法銃なんて珍しい。暴発なんて滅多にしないから、銃口を覗き込む時に偶然魔力を注いでしまったんでしょ。使い方を知らないからこういうことになるのよ」


 「今度は誰にも渡しちゃ駄目よ」といって、ビビアンは銃をクロに渡した。渡す時に胸を強調していたビビアンだったが、クロは「ありがとうございまーす」とお礼を言い銃を背負う。

 ビビアンの胸を見て頬を赤くする。という定番をやらかさないクロにつまらなそうに口をへの字にしたビビアン様は「面白い子ねぇ」と言う。

 いまだ氷の柱に苦戦している子ども達と、魔法銃で氷に穴を開けたクロをみくらべてビビアン様は微笑んだ。


「私の氷を壊す子がいるとは思ってもなかったわ。僕、名前は?」


 しゃがみクロに問いかけるビビアンにクロは「クロです」と答える。と同時にビビアンとクロの間にレオンが割って入る。


「ビビアン、クロは強いだろ。シロも強いぞ」

「う、うん? そ、そうなのね?」


 自慢げな顔でクロとシロの肩に手を置くレオンに、ビビアンは驚きつつも肯定した。Gランクでも多少削れるように調整した氷の柱だったが魔法銃を使ったはいえ穴を開ける子どもがいるとは思わなかったのだ。しかもレオンが強いと言うのだから魔法銃はシロという女の子も使えるらしいということ。


 もしかしてレオンはこの二人の実力を見せつけたくて紅蓮の獅子ヤジロベエとビビアンとして今回の依頼を受けたのだろうか?

 

 いやまさか、他人に興味のないレオンが? とビビアンは頭を振る。

 面白味のない子どもの面倒をみるような男ではない、ということはクロとシロという子ども二人は特殊な出のはずだ。

 現にビビアンの武器である肉体をわざと強調し効果を倍増させている魅了魔法はクロに効いていないし、シロにも効いていないようだ。ビビアンはそれが悔しかった。自分よりレベルの低い者たちに魅了魔法が効かないなどはじめてだったから。


 少し、驚かせてあげましょう。


 レオンが自慢する子ども達がどれくらい凄いかわからないけれど、私だって魔女でありAランク冒険者なのだから子どものひとりやふたり、 驚かせてやりましょう!

 

「レオンのお気に入りの子達に、私がどれくらい凄いか見せてあげるわ」


 ビビアンは氷で出来ているような杖をどこからか取り出すと、こぶし大の闇の魔石を胸の間から取り出した。

 わお、ベタに谷間から出すのね! とシロのテンションが上がる。クロは「何で石だけ胸から取り出すんだ?」と不思議がっていたし、レオンは「何をする気だ?」とビビアンの行動を不審がっていた。

 ビビアンは右手に杖、左手に魔石を持ち、詠唱をはじめる。


〈闇よ、魔物をつくり出せ、召喚サモン!〉


 ビビアンの伸ばした腕の先に黒い点が広がり、中からずずずっ、と魔物が現れる。


 ソレは大きな体で、大きな角が生え、大きな蝙蝠のような翼が生えていた。


 へぇ、初めて闇魔法見たなぁ……というシロクロは感想を思い浮かべていたが、突然現れた氷の柱よりも遥かに巨大な魔物に子ども達は恐怖で悲鳴をあげる。

 ビビアンは「あらー大きいわね」と頬をひくつかせてた。

 レオンはシロクロを背に隠し魔物を見上げた。レオンの隣には慌てた様子のヤジロベエも到着する。


「ビビアン、何を召喚した?」

「ちょ、ちょっと前に手に入れた闇属性の魔石を使ったんだけど、上級悪魔かしら……?」

「上級悪魔でござるかぁ、早く子ども達を避難させるべきでござるな!」


 「みんな、こっちでござる!!」と避難誘導を始めるヤジロベエ。レオンは「ビビアン、あとで説教だ。シロクロ、他の子ども達と一緒に逃げろ。夕飯までには帰る」と言って大剣を構えた。

 ビビアンは半泣きの泣きまねをしながら「ごめんなさーい」と謝り杖を構えた。


 落ち着いた対応、流石Aランクパーティー。

 自分達と同じAランクの強さをもつ魔物が現れても、余裕ってことか。

 シロとクロは皆と一緒に走り出し闘技場の出入口を目指す。が、ヤジロベエの独り言で背後を二度見する羽目になる。


「上級悪魔なんて、ビビアンもけったいな魔物を召喚したでござる。以前倒した時は五人でギリギリだったというのに」


 ちょ、ま、何て言ったでござるかああああ!?

 シロとクロ、そしてセキとヨウはヤジロベエの独り言を聞いてしまったが故に後ろを振り向いてしまった。


 Aランクパーティーの『紅蓮の獅子』は五人組。以前にも似た魔物を倒したことはわかった。しかし、現在のメンバーは三人しかいない。

 補助魔法を使う魔法使いがビビアン、アタッカーは剣士のレオン。ヤジロベエは攻撃を集中させて受け止めるタンク役だろうか。

 ヒーラーとレオン以外のアタッカーが不在なのかもしれない。


「え、大丈夫なのかな紅蓮の獅子?! セキ! 紅蓮の獅子ってあと誰がいたっけ?!」

「えっと、殴って回復のクリスと何でも使いこなすグースだったか?!」

「何そのよく分からん二つ名?!」

「悪い! オレがちゃんと覚えてないだけ!」


 セキの記憶力に驚くクロだったが今はそれどころではないので止まっていた足を四人は動かした。

 最後の子どもが闘技場から出る。ヤジロベエはギルド職員に経緯を簡単に説明したのち「子ども達をお願いする」と言い、大太刀をスラリ抜き、闘技場奥へと駆けていった。

 大きな後ろ姿を子どもの多くは「かっけぇ……」と見送る。


 偶然居合わせてしまったギルド職員は、突然の状況に悲鳴を上げながら右往左往している。

 騒ぎに気付いた別の職員が「ギルド長に報告してくるから、子ども達を研修室に避難させろ!!」と言って走っていった姿をみて腹を括ったのか「みんな、こっちに来て!」と子ども達を研修へ誘導を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ