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98.




「話が逸れて申し訳ないな。とにかく、子は死守。言い方は悪いが、我々魔術師としては徹底的な管理を行いたい」


大勢の命がかかってるのだから、そうなるのは当たり前。気になるのは、ゲームの方だ。ゲームではリリアナは国外追放。そのあとどうなったか分からないけるど、大切なリリアナを追放したこの国はどうなった? もし、魔術師の怒りを買ったのだとしたら……。考えるだけでもゾッとする。皇族は責任を取らなければいけない。そうなれば、そうなる原因となった人たちがよくても追放、最悪処刑。もし私がゲームのヒロインと同じように動いてたら、そうなってたかもしれない。


「だから、娘をそちらに渡せと」

「公爵が渋るのは分かる。しかし、実際我々からすればそちらは子を制御できていない。ハゼルトと言うものはとても残酷だ。どれだけ周りに優しく振る舞おうが本質は治らん。興味が失せれば、必要価値を見出だせなければ、子は容易くそちらを切り捨て、国を壊す」


そういう子だと断言するフェミルさんは、どこか悲しそうで、昔何かあったんじゃないかと思うけど、聞いていいものなのか。


「どれだけ上手く隠そうが、それはやがて器から零れ周りを不運にする。私がそうだったようにな」

「リリアナ嬢も同じことになるとは限らないのでは」

「……あの子は命の重さを知らぬように見える。命の価値は平等とよく言うが、あの子からすれば、命に価値などなく、故に平等なのだろう。価値を見出だす人間とは根本が違う」


人にはそれぞれ価値があり、平等である。けれど、全ての人には価値などないというのも、確かに平等ではある。


「速くしろとは言わん。このままあの子を育てるのならばそうすればいい。こちらはこちらで干渉はするが、公爵の意思を尊重しよう。我々とて、子に無理を強いるつもりはない。子の意思を遵守せよとの命もある」


誰がどういう命令を下したかは分からないけれど、そのおかげでリリアナは今この国にいる。


「ということで、帰るぞ」

「え、リリアナちゃんどうすんのさ。戻ってこないよ」

「あぁ、当たり前だろう。私が頼んだのは子が入れる場所にないからな」

「笑顔でこいつ最悪なこと言ったぞ」


そもそも何を頼んだんですか。そこすら会話なかったでしょう。


「あら、お話中でしたか?」


タイミングがいいのか悪いのか、扉を開けて中に入ってくるリリアナ。手にはフェミルさんが言っていたように見つからなかったようで、何も持っていない。


「ずいぶん時間がかかったな」

「徒歩だと遠いですからね」

「……へぇ、徒歩か」


こっちに近づいてきたリリアナを急にメリアさんが後ろから押し倒し、素早く剣を抜いて首もとに突き立てる。


「変装すんなら上手くやれよ。建物内ならともかく、リアがそんなことするワケないだろ。そもそも、足音違うし魔力の誤魔化しも雑いんだよ」

「……クソが」


メリアさんを蹴り飛ばし、急いで距離を取ると、リリアナの姿から一変。黒服の女の人の姿になる。


「メリア怪我は」

「左が逝ったぐらい」

「重傷だねぇ。にしても」

「魔術師四人にハゼルト直下の騎士三人相手にどう生き残るつもりなのか聞きたいが」


女の人の後ろにいつの間にかいたニーチェル公爵が手のひらサイズの魔法陣を使ったのか、強力な光を発生させる。驚いて目を瞑るけれど目は痛くない。


「もういいぞ」


目を開けると、そこには白目を向いて倒れ、泡を吹く女の人がいた。






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