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96.




シティアル公爵はそうですか、と短く言って俯く。母親が子どもを呪い殺そうとするなんて、考えられないもんな。


「彼女が亡くなれば魔塔にも少なからず被害が出る。それを見越してのことだろうね」

「ハゼルトと魔塔を狙ったってこと? それでもリリアナちゃんを狙うかって話だけど」

「何も知らない奴らが俺と姪を狙うならまだ未熟なはずの姪だろ?」


二人のことを知ってる人なら先生を狙うって感じですけど、まず敵に回そうとしてる時点でおかしいんだよ。けど、もし狙うなら確かに魔術師の先生よりもリスクはあれど安全かもしれない令嬢のリリアナを狙う。その結果がこれだけど。


「彼女が死ななくてよかったよ。死んだら魔術師全員どころか魔塔に登録してる人間全員死んで詫びることになってたし」


……リリアナ一人が死んだら、魔塔の全員が死ぬ? なんて契約して……そもそも契約なのか? リリアナ一人のために魔術師も巻き込むなんてそんなこと誰がやるんだ。


「だからシエルに監視させてダメ押しとばかりに二人が拾った子どもを付けてたワケなんだけど」

「……呪いは範疇を超えてる。あくまで俺の役割はリリーの精神面管理だ。あいつは健康面、他の奴らはそっちの方が分かってるだろ」

「責めはしないさ。何より、アレが正常に動いてると分かったからね」


人が一人死んでいても、多のために少の犠牲を省みない。為政者としては立派だし、当然なんだろう。けど、それを親族の前で言うことなのか。


「まぁ、俺としてはそっちが何をしてたのかの方が気になるんだけどね」

「……上三人は各自でしらみ潰しに敵の拠点潰してる。他はいつも通り」

「対応はないってことでいいかな?」

「こっちは半分以上が裏社会にいるから表の捜査に干渉しにくい。表にいても抜け出す暇もないし。何より」

「あの子が許可しないとなんだっけか。面倒だなぁ」


許可取ってきてと先生に軽く言うも、先生は断固拒否。そんなに死にたいなら自分で行け、だそうだ。普通魔術師がそう簡単には死なないはずなんだけどな。


「姪もあいつも気が立ってるのに誰が行くかっつーの」

「らしいけど、そこのところは?」

「リアが不機嫌なのは知っての通り。あの子に関しては知らない。気まぐれの上飽き性だし、こっちも手を焼いてる」


あの子って言うのはメリアさんたちの造り主のことだよね。気まぐれで飽き性……。前世の知り合いにいるんだよなぁ、気まぐれで飽き性で不機嫌だと周りに迷惑が行くことが多少なりともある子。


まぁ、似てるだけで断定できないし、この世界に転生してるかも分からないからなんとも言えないんだけどさ。やっぱり、少しは思うよね。あのとき一緒に死んだ人たちでここに転生してたらって。


「リリアナちゃんに関してはどう見られてるのかも分からないから手の打ちようがないしね」


それはリリアナがこの国から、なのかそれともリリアナに魔塔が、なのかどちらなのか。どちらにせよ、魔塔からしたらこっちはあまり信用てきないのだろう。


「……リリアナに関してはアメリア…妻から、いくつか聞いてはおります」


前公爵夫人のことを聞いて黙っていたシティアル公爵が突然口を開いた。






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