94.
突然天井が壊れて落ちてきた三人。その中にはメルトさんもいて、服装を見る限り他二人も魔術師なのだろう。
魔術師の一人が何をしているのかと聞くけれど、先生とリリアナは答えず、代わりとばかりに先ほどリリアナに詰められていた貴族が口を開く。
「シティアル公爵令嬢は罪を犯したのです! だからその裁判を」
「俺君に発言していいって言ったっけ?」
その言葉に身体を強張らせる。確かに発言の許可は得ていない。けれど、誰に対しての質問かも分からなかった。だから味方につけようと真っ先に発言したんだろうけれど、一気に機嫌が悪くなったな。
「この国って許可もなく皇帝にも発言できるの? そんな国、今まで見たことも聞いたこともないんだけど、俺の記憶違いかな。前第四魔術師」
「私の記憶にもないが、第一魔術師。貴様の問いが誰に対してか示されていないのが原因だろう」
第一魔術師に前第四魔術師。この人たち、始まる前に来るって言ってた魔術師なのか。メルトさんがいるのは足止めしてたから? でも、それなら一緒に来るか?
「ま、話はあとで聞けばいいや。とりあえず閉廷ね。無駄でしかないから」
半ば無理やり裁判は中止。先生が三人のところに行って別室に移動させ、私たちのところにもさっきの人たちが呼んでいると伝令が届いた。
「リリアナ!」
「みなさん、大丈夫でしたか?」
向かってる途中にリリアナと会えたけど、大丈夫かはこっちのセリフ。あんなところに一人とか、大丈夫なの?
「ゼクトが結界を張ったから大丈夫だよ」
「ならよかったです」
部屋に行ってから話そうと言われて、部屋に向かう。目の前に着いたけど、今さらながら私たちがいていいのか?
「入りますよ」
返事も待たずにリリアナは開けて入ってしまい、あとに続いて入る。そこには先生を含めて魔術師四人と皇帝陛下、殿下がいた。
「皇国の大陽、皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
「久しぶりだなリリアナ嬢」
私たちも続いて挨拶をするけれど、堅苦しくしなくてもいいと言われる。問題は魔術師だけど。
「お久しぶりですね、第一様。本日はどういったご用件でお越しなさったのですか?」
「久しぶりだねぇ。来た理由は分かるだろ?」
皇帝陛下じゃなくてリリアナが話すんだ。まぁ、この中で一番魔術師と関わりあるの誰ってなったらリリアナだろうから間違いではないんだろうけど。
「立っているのは子どもらには辛かろう。座るといい」
そう言い、何かの魔法……魔術かもしれないけれど、発動すると不思議なことに部屋が広くなり、ソファが出てくる。
「公爵らも座るといい。我々は何も争いに来たワケではないのだ」
ふんわりと微笑む魔術師さん。女性の声だし、さっき前第四魔術師って言われてたよね。なら、この人がメルトさんの前任者……。




