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93.




裁判が始まったが、面倒だな。裁判員側をやるのはもう仕方ねぇが、分かりきったことにわざわざ突っかかってきて姪に罪を着せようとしてる意図が見えすぎててつまらん。

貴族側の質問に笑顔で答えていく姪だが、事実しか言っていないため魔道具は一切反応しない。


カフニオに関しては裁判に関心がなく、カトレアたちといるからかは知らんが説明してんな。こういうのは普通二年のときにやるから知らないのも無理はないし、詳しく知ってるカフニオが説明するのが一番ためになるだろうな。


「シティアル公爵令嬢が【呪い】を所持しているというのは?」


適当に聞き流しているとそんな声が聞こえてくる。姪が呪いを所持しているねぇ。【呪い】ってのは呪術を使うためのモノであって保管などは不可能。あったとしても呪術のために使われた残骸など。それなのに、姪が【呪い】を所持しているのは確実と言った感じだな。


「確かに以前、魔塔からの依頼として見せていただいたことはありますが、私個人が持ってはおりません。何より、あの【呪い】は無力化されていますので、今も持っていたとしても呪術として使うことは不可能です」


相変わらず返しが上手いな。確かに姪には実験と研究を兼ねて【呪い】を渡したことがある。そしてそれはだいぶ前の話で今は魔塔で厳重に管理されている。だから判定は真だが、墓穴掘ったなあいつ。


「一つお伺いしますが、何故それをご存じなのでしょう?」


姪が呪いを持っていたのは極秘事項。魔塔とこの国の上層部数人、正確にはカフニオと先代皇帝、じいさんくらいしか知り得ないこと。何故それを知っているのか。さて、どんな発言が飛び交うんだろうな。


「何故って……それは」

「ちなみに、今あなたが仰った呪いの件。前皇帝陛下より極秘に進めろと言われていたことですので、皇帝陛下たちは知り得ません。まさか、あなたごときが皇帝陛下たちよりも信頼するに値する人物である、などとは言いませんよね?」


逃げ場潰したな。元々、この裁判は姪をどう失脚させるつもりなのか、どこから情報を入手してるのか探るつもりだったし、それは姪に共有してる。俺が聞くか迷ったが、いらなそうだな。


「魔塔からの依頼とさっき!」

「魔塔から依頼され、極秘で進めていたもの。普通に考えれば分かりきったことではないですか。極秘でなくとも、魔塔がそう簡単に情報を漏らすとでも?」


呪術は禁忌だが、それでも行使するバカはいる。魔塔はその対策を作るために姪に依頼した。柔軟な発想は俺ら大人よりもこどもの方ができるからな。


「……下がれ!」


急速にこっちに向かってくる膨大な魔力を感知して結界を張る。姪は自分でやるし、カトレアたちにはカフニオがいるため、俺と裁判員たち、皇族に張る。貴族どもは知らん。勝手に張れ。


結界を張った瞬間に天井が壊れ、土煙が舞う。そこに見える人影は三つ。全員が俺と同じような服装をしており、だろうなという感じだ。


「ずいぶんと派手なご登場だな」


土煙が消え、三人の姿が露になる。


「あっはは。やっぱりこういう移動はモノが壊れるねぇ」

「阿呆め。だから歩きと言ったろう」

「どーでもいいから速くしない?」


魔塔トップ、第一魔術師と前第四魔術師、そんでもって、その二人が来ないように足止めしていたはずのメルト。


「さて、これはどういうことかな?」


笑顔でそう聞いてくるリーダーの目は笑っておらず、解答を間違えれば殺されるのはバカでも分かる。俺も姪もどう答えるかと考えていると、先に口を開いたのは先ほど姪に詰められていた貴族だった。






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