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「裁判ってなんで!」
魔法裁判。虚偽を見極める魔道具を使用し、また真偽を見極める魔法を使える魔術師を最高裁判長として行う裁判。それだけならば通常の裁判とは変わらないのだが、出席する全ての人に誓約魔法がかけられ、嘘を一つつく度に特殊な魔法がかけられる。三つ嘘をつけば魔術師にも解くことが不可能であるため、確実な判定を下すために行われる裁判だ。
「まだお葬式も終わってないんだよ!?」
「何度も言うが、受理されてるもんは仕方がないだろ。お前が騒いでも意味はない」
私たちは待機室に案内されて今こうして話しているけど、大丈夫なのかな。
訴えられたのはリリアナ。シティアル前公爵夫人殺害の容疑で訴えられたそうだ。
「まぁ、リリアナ嬢を蹴落としたいあいつらにとっては一番いいタイミングだろうな。リリアナ嬢と公爵夫人の仲が悪いのは有名。リリアナ嬢が不起訴にできなければ殿下との婚約は解消。ハゼルトにも多少なりとも影響が出る」
今回先生は魔術師として出るから中立の立場になるし、私たちも手出しはできない。裁判では身分はほとんど関係はなく、リリアナは味方がいない状態で切り抜けないといけない。
「相手もバカだねぇ。まさか再従妹殿に喧嘩を売るなんて」
「リリアナが裁判なんかで負けるワケないもんね~」
「さっき会ってきたけど、満面の笑みで合法的に潰せますねって言ってたよ」
なんでこんなに身内はのほほんとしてるのか知りたいよ。一切心配してないじゃん。
「リリアナちゃんの心配はするだけ無駄でしょ。あの子小さい頃第一魔術師に真っ向から文句言ってたし」
「心配する度に胃が痛くなるからもう考えないようにしてる」
「再従妹殿の心配より相手か建物の心配しないとだよね」
なんでだろう。リリアナなら建物ごと魔法を相手に一発入れそうで妙に納得できてしまう。しちゃダメなんだけど、リリアナならやりそうなんだよ。
「カフニオ、まずいことになった」
「メルトが人を殺そうとしてた以上にまずいことなら聞く」
「魔塔から来るのがリーダーとばあさん。メルトに対応させるがたぶん無理」
「………バカか? バカだな。ざけんな殺してでも止めろ」
ニーチェル公爵、情緒が怖いよ。魔塔のリーダーってことは第一魔術師だろうけど、ばあさんって誰。
「メルトの前任の第四魔術師。ばあさんが抜ける前は魔塔のトップ四人で大陸一つを一晩で落とせるってもっぱら噂されてた」
そんな人が二人もこっちに来てるって、まずいよね?
「え、なんで?」
「あの二人は特に姪を可愛がってたからだろ」
「さっさと終わらせねぇと別の意味で終わるな」
笑いごとじゃないんですけど、どうするんですか。相手は魔術師ですよ!?
「乱入してもらった方がやりやすい」
なんか悪知恵働かせてません!?




