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90.




「お待ちください侯爵!!」


呼び止めるザコどもを無視して、来たくもねぇ場所を進んでいく。バカが行動した結果なのは分かるが、これはこれで面倒くせぇ。


「おい、裁判ってどういうことだ」


いつも通りノックせずに皇帝の執務室に入れば、お馴染みのメンバー。さっさと慣れろよと思うが、カフニオは俺のことを無視して仕事を進めてる。


「そのままの意味だ。シティアル前公爵夫人が亡くなられた。そして、その付近で彼女の魔力が発見されている」

「本気で言ってんのか」


葬式もまだやってねぇだろ。それなのに裁判なんざ普通におかしいだろ。


「今回のはでっち上げだろうがなんだろうが受理されてる。今さら引き下げはない。ここで話すよりも魔塔に連絡して詫び入れて介入することのないように頼むのが先だ」

「お前、この状況でよく冷静だな」


カフニオの言う通りだが、どっちにしろ上は荒れる。何がなんでも介入してくるぞ。今回のことに関して俺は裁判員側だから手出しはできないが、それとこれとはまた別だ。


「メルトは何してる」

「ゴミども処理しようとしてっからとめさせてる。今殺ったらそれこそ不利だからな」

「あいつは昔からそうだからな。できれば魔塔がこっち来るのを妨害する役に回せ。序列四位を無視して来るほどの奴は早々いないだろ」

「あいつは」

「待機が安定だろうな。ここで動かれると国全体の信用に関わる。動くと言って聞かないなら手頃な玩具をいくつか持ってけばいい」


しれっと酷いこと言ってるな。その玩具も用意するの大変なんだぞ。数にも限りがあるし、あいつは気に入らないとすぐ壊すから面倒だってのに。


「あいつと言うのは?」

「魔塔から預かってる身分がそれはもう高い姫さん。機嫌損ねると普通に死にかける」

「カフニオはなんでそんな魔塔と関わりあるんだよ」

「仕事」


ニーチェル公爵家は昔っからこんな感じだろ。今さら疑問持つな。


「どこぞのヘッポコたちが反感買いまくるからハゼルトとの仲悪ィし魔塔ともまともに繋がりねぇから俺が全部やってんだろ」

「お前それを盾に好き勝手してるだろ」

「特権だ特権」


ニーチェル公爵家は国が作られるときに確か悪魔の血が入ってるんだったか、ハゼルトを嫌悪する奴らが少ない。多少なりとも普通の奴らよりは耐性があるんだろうな。ま、類は友を呼ぶってやつだ。


「とりあえず、あっちにも暴れないよう言っといてくれ」

「言いはするが、どーだかね。ありゃ完全に裁判でやる気満々だぞ」


ま、やるだけやるよ。今動かれると俺も面倒だしな。


「姪が言うこと聞くかは知らねぇぞ」


なんせ、裁判で訴えられて行動制限されて一番苛立ってるのは姪だからな。






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