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83.




さっきの会話で何かあったのか? リリアナが先に動いたように見えたけど、マリティアさんも魔法撃つ気満々だし……。


「リリアナ、マリティア、やめろ。他の者もいる」

「ゼクト、お前もだよ」

「ならまずお前が消せよ」


王太子殿下とゼクトも殺気立ってるし、まさかだけど二人揃って魔法使おうとしてないよね?


「お前ら、今すぐやめろ」


ニーチェル公爵の一声で魔法を消して武器もしまうけど、これ、公爵いなかったら最悪血の海になってたよね。


「何度も言うが、お前らが殺り合えばまず国が亡ぶ。魔塔の干渉どころか他種族までも来る羽目になれば面倒だ。神々の聖地があるここ周辺をお前らの私情で壊すな」


その言い方だと、この四人がやろうと思えば簡単に国家転覆が可能みたいに聞こえるんですが。


「……少し外に出てきます」

「リリー!」

「発言にはよくお気をつけくださいね。誰がいつ聞いているか分かりませんので」


すごい怖いこと言って出てったんですけど。かなり不機嫌になってるよねあれ。


「あらら、キレちゃった」

「あんたもキレてたでしょ」

「ああでもしないとマリティアは死んでたぞ」

「再従妹殿はお子ちゃまだからね~。マリティアはしばらく一人禁止だよ」


大丈夫なのかなあれ……。


「再従妹殿のご機嫌取りは魔術師の仕事だからいいんだよ。自分の跡継ぎくらい制御しないと」

「シエルとメルトが問題児だから無理だな」

「リリアナちゃんのマイペース越えられなきゃ無理だよね~」


リリアナはマイペースなのか? いやまぁ、マイペースと言えばそうなんだろうけども。


「ハゼルトはあれが基本だから諦めろ。特に、隔離されて育ったリリアナ嬢についていける奴はそういないだろうよ」

「とか言いながらしれっとお気に入りに枠に入ってたよね。公爵って」

「俺がハゼルトの管理しなくなった瞬間この国やりたい放題されるから一応必死にやってんだよ」

「一応って言うのやめろよ……」


ニーチェル公爵、話す以前は硬派な感じだったのに、今だと結構先生寄りと言うか、皇帝陛下たちを困らせてそうなのは何故なのだろうか。


「あと、ハゼルトの魔法許可を通してるの俺だしな」

「あれって皇帝陛下が見て許可するんですよね?」

「シエルたちが皇帝陛下への嫌がらせでわざと他種族の言語を組み合わせたり、魔法陣を難しく書いたりしてるんだ」

「だからハゼルトだけは他種族の言語理解できてシエルたちの魔法のクセ把握してる俺が許可出してる。リリアナ嬢も結構クセあるしな」


魔法ってクセとかあるんだ。考えたことなかったな。


「クセなんてあるんだ」

「結構分かりやすいぞ。体質的なのもあるが、ティアナだったらどうしても魔法は冷気を纏うし、オリヴィエは必ず身体強化の魔法を付与するからな」

「無意識に付けてるんだよねぇ。肉体的な面はどうやっても劣るから魔法で補うしかないし、速度もゼクトくんたちに素だと負けるし。メリアの身体が羨ましいよ」


あぁそっか。魔道具だから肉体的な限界とかがないのか。やろうと思えば改造しそうだしな。


「……ゼクトくん」

「言うな。今の今まで忘れてたろ」

「いやでも」

「黙れ」


何したの。忘れてたって、二人一緒にだろうけど、なんかあるっけか?


「………お前ら、ただでさえ顔出さないクセに月一をサボるなよ」

「今日に関してはティアナが悪いだろ」

「まず騎士団をこれだけサボってもいさせてもらえる感謝をしなさいよ」


あぁ、騎士団……。そういえばこの二人サボり常習犯だ。今日が集まりだったのね。……あれ、ならこれ一人だけ待たされてなんなら説教されてるんじゃないの。






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