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ヴェルおじ様……てことは、傍系でもかなり近い方? でも、聞いたことないような。
「もうリリアナもユラエスも! 私には挨拶してくれないの?!」
「マリー様はまず、クロフィムくん同様に先に手紙を送るということを覚えてから来てください」
ごれいのも分からん。隣国に関してはさっぱりだよ。
「ヴェルナード・サフィア・フォルフィティア公爵閣下。フォールト殿下たちの伯父様よ。ご令嬢の方はマリティア・ヒリア・フォルフィティア公爵令嬢。フォールト殿下たちの従姉よ」
なる、ほど……? この世界は相変わらず関係図が複雑だな。相関図作ったらおかしなことになりそうだよ。
「ヴェルナード様、夫人はいらっしゃらないのね」
「四人目を身籠りまして。本人は大丈夫だと言っているのですが、念のため本国にいてもらっています」
「あらあら、四年ほど前に男の子が産まれたのでしたよね。今度身体にいい茶葉をお贈りしてもよろしいですか?」
大人の会話が弾んでる。にしても、マリティア公爵令嬢が私たちと同い年だとすると、かなり歳が、離れる姉弟になってそう。
「リリアナもユラエスも全然会いに来てくれないのだから、少しは構ってくれてもいいのに」
「何度も言うが、構ってほしいならちゃんとした手続きをしてくれ。そのせいでこっちは一日駆け回ることになるんだぞ」
「クロフィムは毎回許可されてるじゃない」
「許可されるかされないではなく、我が家に準備する時間を寄越せと言ってるんですが…」
こっちもこっちで大変そう。ユラエス何気に愛称で呼んでるし、仲いいんだろうな。大人組とは大違いだ。
「まず、あなたたち三人はこちらに来る前に婚約者をお決めになられては?」
「リリアナのペットが何言ってるのかしら」
「皇太子殿に再従妹殿盗られた奴が言うことではないよ?」
「ちゃんと探してはいるし……」
二人は反論というか、心を抉りに言ってるし一人は否定してるけどできてないな? ゼクトも猫被ってるから真正面から喧嘩はふっかけないけど、大差ないだろこれ。
「それにしても、あなた。ずいぶんと奇妙なことになってるわね」
「え、私?」
「えぇ。視たところ、あなたリリアナのお気に入りでしょう?」
お気に入りかは分からないですけど……。見て分かるものなんですか?
「マリーは特殊な眼を授かってるんだよ。人の本質が分かるって言うか、魂を知覚できる」
「片眼しか備わってないけどね~」
魂を……。それはまたとんでもないチートだこと。某呪い漫画のキャラみたいだな。
「あなた、気をつけなさい」
「気をつけろって、何を…?」
「そう遠くない未来、あなたは自分の役割を知る。それは簡単なように見えてとても難しい」
自分の役割? ゲームならヒロインで終わってたけど、現実だし、何かあるのか?
「マリティア、急にそんなことを言っても驚くだろう。まだここには何日かいるのだから、そのときにしなさい」
「フォールト、あなたもだからね?」
「自分の役割は理解しているつもりだよ。マリティアに視えているモノかは別だけどね」
マリティアさんには何が見えてるんだろうか。眼が特殊って言うのは、たぶん先生たちのような祝福とはまた別のモノだろうけど。




