79.
皇帝陛下たちも入場し、魔術師である先生たちが祝辞を詠む。本来なら魔術師一人が行えばいいけれど、何故かメルトさんも来たらしい。
ファーストダンスは殿下とリリアナで躍るけど、本当にお似合いだなぁ。よくゲームのアイリスはここに突っ込んでいけたよね。
「じゃ、いってこい」
「え?」
「ん?」
「殿下とリリアナ嬢が終わったんだ。次は他の奴らだろ?」
だからと言って何故私とサジュエルまで? 婚約者でもないのにそれはさすがに。
「ほらサジュエル。ちゃんとしなさいな」
「なんでみんな乗り気なんだよ……」
先輩たちに押されて、流れでやることになったけど、サジュエルからしたら迷惑でしかないよね。
「……なんか、すみません」
「いや、こっちこそ弟たちがすまない」
気まずいんですけど、ここからどうしろと言うんだ。なんとか終わったけど、終わったけどさ!
「何自分たちは婚約者と楽しくダンスしてるんですか?」
「ちょ、顔怖いわよ」
「そうさせてるのは先輩だという自覚はございますか?」
「お似合いだったわよ?」
はぐらかせてないですからね。あなたはただあたふたしてる私見て楽しみたいだけでしょ。
「帰っていいか?」
「このあとクロフィムくんたちが来るのでそれまで待っててください」
そういえばいないな。何かあったのか?
「屋敷で会えばいいってのに、面倒だねぇ」
「久しぶりなのですし、いいではないですか。それに、魔塔に籠るばかりか、連絡を入れても半年は余裕で放置しますよね?」
ユラエス、ここぞとばかりに先生たち責めるね。先生たちが悪いけどさ。半年放置って何。どうしたらそうなるの。
「魔塔じゃまとめて一気に送られんだよ。誰からなのか分かんねぇから放置すっとたまにそうなる」
「自業自得……」
「面倒な知り合いからの手紙が多くてやんなるよねぇ」
「仕事をしないからだ」
面倒な知り合いってシティアル公爵のことか。にしても仲が悪い。体裁って言葉を知らないのかな。
「伯父様たちとお父様は昔から仲が悪いことで有名なので、体裁も何もないんですよ」
「お前ら、ここで喧嘩おっ始めたから鼓膜破るからな~」
ニーチェル公爵は公爵でなんか物騒なこと言ってるんだけど。何この親たち。嫌すぎる。こんな大人にはなりたくないねぇ、と横目に話をしていると、入り口が開き、王太子殿下とクロフィム、見慣れない男性と私たちと同い年くらいのご令嬢が入ってくる。クロフィムたちといるってことは、隣国の方だよね。王族……ではないから、傍系か。
「お前たちはまた迷惑をかけているのか?」
「はっ。俺らがやるならこの辺り一帯綺麗サッパリ消えてるぜ?」
先生に物怖じしないのを見るに、親戚なんだろうな。
「お久しぶりです。ヴェルおじ様」
「久しぶりですね」
「二人とも久しぶりだね。シティアル公爵とニーチェル公爵夫妻も、お久しぶりです」




