78.
リリアナたちがこちらに気がついて向かってくる。子ども三人が来るからか公爵も一緒で。
「お久しぶりです」
「久しぶり。おじ様は半年ぶり?」
「そのくらいだろう。カトレア伯爵令嬢ははじめてだな。いつも子どもたちが世話になっている」
「いえ、こちらこそお世話になっています。カトレア伯爵家のアイリス・ディア・カトレアです」
大丈夫かなぁ。この家族、みんな笑ってるクセにお互いを見ようともしないんだけど。
「ゼクトくんとユラエスくん、今さらだけど手袋なんなの? リリーちゃんもだけど」
「【聖華】だよ。フォールトたちの国の文化で、俺とリリアナは王族の親戚だし、ゼクトはリリアナの従者だから特別にいただいてるんだ」
見せてもらうと、手の甲のところに花の柄が青い花柄が描かれている。花に関してあんまり分からないけど、なんの花?
「俺はカンパニュラ。リリアナはスズランでゼクトはビオラだよ」
「ゼクトくんはビオラなんだ」
「一部の花は聖華として与えられないんですよ。なんでも、神々の華なのだとか」
ゼクトの敬語慣れないな。さすがにこんな公の場だし、猫被ってるのは分かるけど、それにしてもすごいな?
「なんか難しくない?」
「これは学院で習うだろ」
「こういう国ごとの文化については二学期からだな」
「国ごとによって違いがあるところはありますからね」
基本的には大陸ごとにまとまっていて、少しだけ違うことがあるんだっけ。
「……あぁ、やっと来ましたね」
「誰が?」
「伯父上だよ。速く来るように言ったんだが」
ギリギリまで来ようとしなかったか。先生、こういうの嫌いだからな。
「………はっ、こりゃ珍しい」
会場に入ってきたのは魔術師の服装をした先生とメルトさん。ニーチェル公爵が珍しいと言ったのはメルトさんがいるから?
「あら、珍しいですねぇ」
「何が?」
「言ったら怒られそうですねぇ」
何があるんだ本当に。変わったところは特にない。まぁ、あるとしたら先生とメルトさんも手袋を着けてるところだけど、それはユラエスたちとと同じ理由でしょ?
「………機嫌が悪いと相変わらずだな」
「そう思うならご機嫌取りしてくれ」
「は?」
シティアル公爵、結構本気で嫌そうな声出ましたね。なんなら嫌そうなの隠そうとしてませんよね。
「姪、こっち来い」
「やりませんよ?」
「は?」
「お父様と同じ反応するのやめてください」
一緒にするなって顔をしないでください。まったく同じ反応してますから。仲悪いんだろうけど、一周回って仲いいだろあなたたち。




