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76.




ナイジェルさんのあのときの発言の意味は分からないけれど悩んでいる暇などなく。出されている課題に取り組んでいればあっという間に時間はすぎていった。


「……何これぇ」


早朝、家に突然届いたドレス一式と手紙。なんで急にこんなものが届いたのかと聞かれれば、今日は殿下の誕生日パーティーだからだろう。けど、けどね? こういうのって婚約者からじゃん。私婚約者いないじゃん。誰が送ってきたの?


「カディスト侯爵家からですね」


手紙を読んでみると「これで頑張って落としなさいな」という先輩の一言。落としなさいな、じゃないんですよ。まず誰をですか。サジュエルのこと指してるならそりゃ推しでしたけど、婚約者になりたいかどうかはまた別で。


「……着てくしかないか」


せめてもっと早くに一言何かほしかった……。

時間も時間で準備しないとだし、急がないで、先輩からのプレゼントを着るけど、あの人本当にさぁ。服の色は薄紫色だし、ところどころにある宝石は私の瞳の色のローズクォーツ。あの人、遊びたいだけだろ。


「あ、アイリスこっちこっち!」

「あんまりはしゃぐな……」


ティアナたちいるし、先輩もいるしで全員お揃いかいな。リリアナたちはまだみたい。それに、ニーチェル公爵も公爵夫人もお揃いで。


「はじめまして。カトレア伯爵家のアイリス・ディア・カトレアです」

「いつも子どもたちがお世話になっています。あなたのことはよく聞いてるわ」


ニーチェル公爵夫人、遠目で何度か見たことあるけど、優しい方なんだなと分かる。普通、公爵家の自分の子どもたちが伯爵家、それも特に力があるワケでもないカトレア家と仲がいいと知れば、場合によっては無理やり切り離す家もあるくらいだ。


「リリアナたちは?」

「リリーちゃんたちはいつも遅れてくるからね」

「いつも先に入ってるのよ」

「先輩はユラエス待たないんですか?」

「会場で合流。それまではアストロたちの傍にいれば安全だもの」


いいように使われてるな。アストロさんはアストロさんであんまり女性と関わりたくなさそうだし、そう考えるといいのかな。


「サジュエル、令嬢一人もなんだ。エスコートしてやれ」

「は? 急に何を」

「あら、いいじゃない。やってもらいなさいよ」


ニーチェル公爵は急に何を言い出すんですか! 先輩も押さないでくださいよ!!


「あらあら、サジュエルにも春が来たのかしら」

「母上!?」

「ドレスはカディスト嬢かしら。とてもきれいね」


言ってくれれば仕立てたのに、と言ってくれるけれど、恐れ多すぎる。そもそも、婚約者でもないのにもらえること自体おかしいと言うか。


「サジュエルもアストロも『自分で探します』の一点張りなんだもの」

「俺は情勢見てって言ってるだろ。国内で固まりすぎてるんだから国外の令嬢見繕った方がいいしよ」

「あら、またそんなこと言って。誰に似たのかしら」


この国、政略結婚は普通にあるけど、自由恋愛での結婚も普通にあるからなぁ……。






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