72.
リリアナと王太子殿下って、仲悪いの?
「魔法のことになると仲は最高で」
「言い合いになると仲は最悪だよね」
売り言葉に買い言葉。互いに煽るから喧嘩になって大事になりそう。
「リリアナ、フォールト。また屋敷壊したら分かってるよな?」
「……」
ユラエスが強い。あんた優しい枠じゃないの。この二人黙らすって相当だけど。
「いいかお前ら。ユラエスだけは怒らせんなよ。昔リリーとフォールトの喧嘩止めたのはユラエスだ」
「ユラエスはハゼルトの血は少ないけどハゼルト。姪っ子殿には劣ってもあのバカの子どもだし才能あるからね」
「そもそもで、この国の筆頭公爵家と最上位種族に愛されてるハゼルトの血が混ざってて弱いワケないよね」
昔止められたのはたまたまってワケではなさそうだし、普通に強いんだろうな。
「ユラエスは毒がキツい」
「ユラエスくんって【水】じゃないの?」
「表向きはね。さすがに時期筆頭公爵の属性が【毒】なんて大っぴらにできないだろ?」
あの、ゲームでも属性【水】で出てたんですけど。ゲームまで嘘つくようになってきたのかよ。
「そう考えると、本当に構成終わってるわねあんたたち」
「毒使えるユラエスに魔法属性なしのリリアナ嬢。植物操れるフォールトに第二王子は【土】だっけか」
「リリアナちゃんいれば無条件でゼクトくんとシエルさんたちもいるし」
この親族怖すぎるでしょ。欠点探すの大変すぎる。いや、欠点はコミュニケーション能力のなさか。分かりきってたわ。
「……リリィ」
「分かってますよ」
何するんだと見ていると、突然リリアナがどこから出したのか不明な短剣を壁に向かって投げつける。するとまぁ、とても不思議なことに短剣は宙で弾かれ、あらぬ方向へと飛んでいく。
「挨拶もなしに上がるのは無礼なのでは?」
「挨拶もなしに短剣を投げてくるのも無礼じゃないかなぁ?」
声が聞こえ、そこには灰色に薄黄色のインナーが入った髪と桃色の瞳を持つ女性。明らかに人間じゃないよね。翼生えてるし。
「初めましてお姫さま」
「初めまして。ここにはどのようなご用件でしょうか。勝手に敷地に入られるのは大変不愉快です」
なんでかは分からないけどご立腹。勝手に入ってきたって言うのはたぶん短剣投げるための建前だよね。リリアナそういうの気にしなさそうだし。
「ハゼルトの姫君にご挨拶を申し上げます。魔帝の治めし魔界より来た魔界序列九位、七大悪魔が一人【嫉妬のインヴィディア】堕天使種長、スフィアよ。よろしく下位種族さん」




