7.
「質問、ハゼルトってなんで国にいるの?」
「言い方が失礼すぎだろ」
無礼法だとしても限度がある。仲良いからこそ許されるだけであって、普通は説教だからね? なんなら説教じゃ済まさなれない。
「ハゼルトの聖地がシティアル公爵領に一応入ってるからです」
「聖地……あぁ、あの森か」
普通に答えてるし、聖地って何。シティアル公爵領の付近の森だと、【死の森】しか思い浮かばないよ?
【死の森】。かつて古き民と呼ばれる他種族と交流を持っていた一族の過ごしていた森であり、その民以外がその地に足を踏み入れれば二度と帰ってこれないのだとか。というか、さらっと機密情報零したな? 古き民の存在って御伽噺とかで聞かされて正体とかぼかされてるのに今ハゼルトが古き民の末裔ってポロリと言ってない?
「正確には、あそこに住まう精霊や魔物が森を護るために殺しに来るんですよ」
「結局帰ってこれないじゃん…」
「片っ端から向かってきたの殺せば案外なんとかなる」
なんとかならないからやめて。どのくらいの数いるかも分からないから無茶だし、精霊は倒すことできないでしょ。この世界の精霊、かなりの上位種族だよね? 魔法のレベルで天と地の差あるよね?
「というか、入れるの? あそこ」
「ハゼルトの許可を得れば入れますよ」
ハゼルトはやっぱり謎。製作者が好きなのがよく分かるよね。設定ありすぎ。
「【死の森】がハゼルトの聖地なのはもうツッコまないけど、無理やり奪うとかをしそうじゃないか?」
「最上位種族との約束を反古にするバカはいませんよ」
最上位種族って、神様とか悪魔ってことだよね?
「他種族の血ってさ、実際どうなの?」
「どう……と言われても、私は何も感じませんし伯父様たちも特に変化はないですよ」
「私たちが取り込んだら?」
「あ、それは死にます」
真顔で言うのやめてほしい。さも当然だと言わんばかりに「死ぬ」って…。いや、そりゃ他種族の血とか異物でしかないけどさ。
「やっぱり死ぬんだ」
「オリヴィエ様は少量なら大丈夫だとは思いますが、それで死なれては困りますし」
「しないしない。そんなことして死んだら間抜けにも程があるよ」
拒絶反応が出て、身体が衰弱して死ぬってのは聞いたことあるけど、実際はどうなんだろうか。そんなことする人いないし、いたとしても存在もみ消されてそうだからな…。
「アイリスちゃん、この世で最も賢い生き方を教えるね。ハゼルトには何がなんでも自分の秘密言っちゃダメだよ」
「あら酷い。ちゃんと対価は払ってるじゃないですか」
「メリットとデメリットがあってねぇよ」
「あなたたち、誰のおかげで伯父様たちのペットにならずに済んでると思ってるんですか」
子どもを実験台にするとか怖すぎでしょ。あと、ハゼルトに秘密言うなってなんですか。脅されでもするの私……。
「ハゼルトは知識欲の塊だから」
「基本的なことは本で知ってるから聞きませんよ」
「さて、そう言って毒性の花を食ったのはどこの誰だったか」
「ゼクト」
「毒って分かった瞬間ゼクトくんを道ずれにするリリアナちゃんもおかしいよね」
仲良いなそこ二人。幼馴染みってそういうものなのか? あっちで仲良かった子たちもそんな感じだったっけ。でも、あの子たち義理の兄妹なんだよね。そういうのは関係なく、やっぱり小さい頃からずっと一緒だとこうなるのかな。
「………何が一番おかしいって、それを横で見て笑ってる伯父上たちなんだよな」
「シエルさんたちはだって、愉快犯じゃん」
言えてる~、などと笑っていたのもつかの間、
「誰が愉快犯だって?」
扉の側で壁に身体を預けてこちらを見ているハゼルト侯爵。なんでいるのかも気になるけど、いつからいるのかの方が重要でして、終わったよね。