63.
気まずい空気になり、沈黙の中森の奥へ奥へと進んでいく。奥へと行くの連れて段々と魔力が濃くなっていき、リリアナがここです、と言ったときには、既に魔力で酔いそうだった。
「あぁすまん。かけ忘れてたな」
「……楽になった?」
「魔力耐性の魔法だ。ここは特に濃いから、よく耐えてたな」
特に濃いって、何があるのここには。魔力が濃いなんて、かなりのモノがないとなはずなのに。
「トリン、いますか」
「ここにいますよ、姫さま」
茂みから出てきたのは私たちの胸辺りまでしか背がないご老人。たぶんだけど、人じゃないよね。
「こちら、ドワーフのトリン。ここの管理者です」
「姫さまが人を連れてくるとは珍しいですな」
ドワーフは地下に住んでるイメージだけど、ここら辺に地下へ続く洞窟でもあるのかな。
「トリン、洞窟に行きたいのですが」
「【白き純潔】を見に行かれるのですか?」
「せっかくですから」
何を見に行くの? てか、何があるのよ。リリアナもリリアナでかなり報連相抜けてるよね。
「奥までは加護がない者には危険ですぞ」
「え、でもゼクトと再従兄様は大丈夫でしたよね」
「そりゃ、俺はシエルにしてもらったハゼルトの加護があるしフォールトは自国の建国神の加護があるからだよ」
ゼクトが加護持ちなの意外だけど、王太子殿下もなのか。ただ、加護ってどんな役割持ってるか分からないんだよね。よくある事故に遭わないとか傷が癒えるとか、この世界だとないんだよね。加護の意味あるのか?
「何かあるの?」
「この洞窟にのみある特殊な結晶がございます。それは触れた者の魔力を吸い取りますので、とても危険なのです」
「そんな結晶があるのか」
「知らなくとも無理はございません。姫さまの一族が護り、外部からの干渉を防ぐため我らが隠していたモノですから」
加工して使えたりしたら、それこそ争いの種になるから、隠してるのが正解だよね。でも、私たち連れてきてもよかったのかな。隠してたのに。
「伯父様に許可は取ってます。リトン、少しだけなら大丈夫なのですよね」
「えぇ。深く潜らなければそこまでありませんから」
リトンさんからの許可も降りたし、行くことになった。入り口どこだよと思っていたけれど、どうやら幻覚魔法が辺り一帯にかけられているらしく、近くにある大きな岩をすり抜けて洞窟に行けるようだ。
リリアナが岩をすり抜けて、恐る恐る岩に手を伸ばすとすり抜けて洞窟に入る。
「思ったよりも明るいわね」
「魔力を吸う結晶以外にも熱に反応して淡く光を発する結晶など珍しいモノがあるからね」
洞窟は淡い光を発する結晶によってぼんやりと明るい。ここら辺には魔力を吸う結晶はないようで、リリアナが適当にある小さな結晶を取って渡してきた。
「この先は足場も悪いので、照らす用に持っていてください」




