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62.




にしても、なんでここに私たちを? 正直、連れてくる必要はなかったよね。


「会わせたかったのと、見せたいモノがあるんです」

「見せたいもの?」

「この森にしかないんですよ」


そう言って奥の方まで歩いていくリリアナ。これ、魔物の隣普通に歩いてってるけど大丈夫? 殺されない?

ゼクトは平然と行くし、オリヴィエさんに大丈夫だよと手を引かれて進んでいく。警戒されてはいるけど、何もされないで通れた。


「リリアナ、よくそんな行けるね」

「私からしたら庭ですからね。それに、ここの者たちが私に危害を加えることはあり得ませんから」


何故そんな自信満々なのか。いや、産まれてからあっちに行くまではこっちで過ごしていたんだし、ここの住民と仲がいいのは当たり前か。


「……相変わらず、自然に好かれてるね。さすがはハゼルトの姫君だ」

「それ、辞めろって言いましたよね」

「ごめんって」


言われるの嫌なのか。実際先生から可愛がられてるし、ハゼルトの姫なのは事実なのに。


「ハゼルトの姫と言われていますが、実際は次世代を産むための道具ですよ」

「道具って……そんなこと」


ないよね。いくらハゼルトでも、そんな人を人として見ないなんて。なんなら自分の子どもだよ?


「ときどきあるんですよ。子どもを人として見ずに道具として扱うのが。加えて、私はどこに嫁ごうと子どもを養子にするのは決まっていますから」


先生が子どもを作る気がないから、だよね。元々リリアナはハゼルトに行く予定だったし、殿下と婚約しても、子どもを一人ハゼルトに送ることはきっと皇帝陛下たちも理解してる。


「そもそも、なんでリリアナちゃんの子前提なのかを聞いてもいいかしら」

「ハゼルトは昔から、一番力を持つ者が子を作って当主の養子にし、その子に継がせる習慣があるからです。まぁ、伯父様たちはそうじゃないのですけどね」


そもそもで、子どもを養子にするのは決まってた。けど、だとしても残酷すぎないか? 子どもと親を引き離すなんて。


「そうしなきゃダメなんだよ。ハゼルトは」

「親から離さないと危険だからな」

「危険って、なんで」

「ハゼルトには、特殊な習慣がいくつもあります。そのうちの一つが理由なんですよ」


リリアナは足を止めてこちらを見てくる。笑っているようで目は笑っていない、貼り付けた笑顔。


「ハゼルトは、子が身内を殺すことで初めて当主として認められるのですよ」


そう、残酷な言葉を発する。

子どもが身内を殺すことで当主として認められる? そんなことあり得るの? ハゼルトだから、とは言えない習慣だけど。


「……でも、それだとリリーちゃんは当主になれないんだよね? けど、確かリリーちゃんって」

「えぇ、なる予定だったので、殺す予定でしたよ」


誰を、って聞くのは無粋か。そもそも、私たちが知っているリリアナの身内が少ないし、誰でもいなくなったら問題が発生する。それに、幼い頃に身内を殺さないといけないと言われたとき、リリアナは何を思ったのだろう。






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