59.
楽しそうに、見つけたらどうしようかと独り言を呟くリリアナにゾッとする。その【概念】にされたのかは分からないけれど、私と先輩は転生者。もし、それが知られたらどうなる。
《娘、周りが驚いているぞ》
「あら、すみません。こういうことになるとどうしても抑えが効かないものでして」
はしゃぎすぎました、と言っているけれど、あれははしゃいでいると言うよりも、獲物を狙う猛獣のようだった。
ハゼルトは人の命などモノ同然。リリアナがもし、その類いだとすれば、転生者だとバレたら何をされるか分からない。友人であるリリアナに、恐怖を覚えてしまう自分が嫌になる。それと同時に、ハゼルトがゲームで深掘りされなかった理由がよく分かってしまう。
危険すぎる。少しでも気に障れば彼らは殺すことを厭わない。実際に、先生たちの学生時代に生徒だけでなく教職員も軽く二十人は行方不明になったり、何かしらの事故に遭ったりがあったそうだ。それの全部が全部先生たちではないだろうけれど、全部先生たちは一切関与してないなんて言えない。
「……リリアナはさ」
「はい?」
「その、転生した人を見つけたら、どうするの?」
返答次第で、私と先輩の身が危ない。怖いけれど、聞かないと。
「保護しますよ?」
「……へっ?」
「私個人はいろいろ聞いたりして実験などもしたいですが、残念ながらそれは魔塔が禁忌として取り扱っていますからね。秘密裏に見つけたとしても、すぐに伯父様にバレるので」
本当に残念です、と少ししょんぼりとするリリアナ。それが本当なら、話すべきなのか? それで魔塔に保護されるのなら問題はないけど、家族とバラバラにされる可能性だってあるワケだし。
「今ほど伯父様の力を恨んだことはありませんよ」
「シエルさんの魔法嘘つけないからきらーい」
「それで取り調べが楽になってるんだからいいだろ」
先生は魔術師の中でも珍しく、魔術だけでなく魔法の方もよく作っては国に申請を出して新しい魔法を発表しているし、なんなら魔術の方も自分の作ったものを魔道具にして申請して実際に政治に使うなんてことをしている。ニーチェル公爵と仲がいいから、こんなのを作ったら楽になるんじゃないか、という考えで片手間に作ってそうだけども。
《あれも苦労人だからな》
「苦労してそうではあるけれど」
「そこまで苦労してるかと聞かれるとそうではないように見えるな」
先生が苦労させてる側にも見えるしね。苦労してそうだけど、先生の周りの人の方が苦労してると思う。
《お飾りの爵位など重荷でしかないだろう》
……なんて言った? お飾りの爵位? 先生が? 何を言ってるんだこの精霊は。爵位にお飾りなんてないだろうに。
《あれはあくまでも》
「ジン、黙りなさい」
《……言ってないのか?》
「言う必要がありますか」
ピリついた雰囲気で、空気が重くなる。ジンは隠すことが正しくはないと言うけれどリリアナは反応しない。
「そう思うのであれば、それこそあのときのことを言うべきなのでは?」
《……》
「全てを言う必要がないことは、あなたがよく知っているでしょう」




