58.
黒竜はこちらをジっと見てきて、ついでリリアナと殿下の傍にいるジンとフェニックスを見る。
《危険はない。信頼に値すると、こちらは見ている》
「何かあれば、責任はしっかりと持ちますよ」
《そうか。して、ここには何用で来たのだ。【矛盾の子】よ》
何しに来たかは私たちも知りたいけど、【矛盾の子】ってなんなんだ。リリアナに矛盾してるところがある? でもそれだけでそんな風には呼ばないよね。
「顔を見せに来たのと、彼に会いに。それと、あそこへ行こうかと」
《そうか…》
「【矛盾の子】って何?」
《その子のことだ。神々に愛されていながら、人に忌み嫌われている。神々の加護は人にとっては善きモノであるにもかかわらず、ここの民は忌諱されているからな》
それを平然と言ってのけるのはどうなのだろう。リリアナいるし、ユラエスもいるんですよ。
「……神々の加護、と言われていますが、実際どのようなものなのですか?」
《遠い昔に存在したモノたちの加護だ。今ではもはや、この地に住んでいた民の末裔しか残っておらんだろうがな》
《神々と言っても、お前さんたちの思う神は【神族】。我らの言う【神】を模倣した種族だ》
聞いたことあるようなないような……。
ジンたちの言う「神」とはこの世界で最初に生命を与えられた【概念】と呼ばれる存在であり、種族の祖である【創造主】と呼ばれる存在を造ったらしい。ややこしいな、この世界。
造られた順で【概念】、【創造主】、いろんな種族って覚えとこう。その順番で偉いんだろうし。
「建国神様とかもその【神族】ってのなの?」
「基本はそう。【概念】はもういないからね」
「もれなく死んでますからね」
「しれっと言うなよ……」
やっぱり最上位種族でも死ぬことはあるんだ。寿命もそれこそ何十億年とありそうなのに。
「【概念】は寿命で死んでいませんよ」
「え、でも今死んでるって」
「殺されてるんですよ。ほぼ全員がとある一人の【概念】に」
基本的に、種族というのは力が拮抗している。最上位種族であれば、悪魔と神族の力は拮抗しているし、精霊たちもそれぞれの統べる属性で力は拮抗しているため、戦争が起こることはない。戦争が起こるなど、人間くらい。もしくは、人間と他種族……それこそ、獣人などだろう。
「……原因は?」
《とある【概念】の死が発端だ》
「詳細は不明ですが、とある【概念】が死に、一人の【概念】が他の多数の【概念】を殺し、残ったモノたちも自ら命を絶ったそうです」
基本は、って王太子殿下は言ってたよね。それは、なんで。
「……輪廻転生。聞いたことあるだろ? 魂が廻り、新たな肉体を得る」
「【概念】の中には、そういう力を持つモノがいたとされてる」
その【概念】が、一部の【概念】を転生させた……。
「なんの因果か、その力により命を持った者たちが来ているのですよ」
そうニコリと笑い、私たちの方を見てくるリリアナは、
「何が彼らにそうさせたのか。それが知りたいのですよ」
今までに見たことのない、知識欲を隠そうとしていなかった。




