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55.




夏休み初日。本来ならまぁ、屋敷で課題をしているか何かしらしているはずなのに、なんで私はシティアル公爵領に行くために集まってるんですかね。


「お泊まりしたいじゃん」


というティアナのいつものであの場にいた全員行くことになり、直近で場所を用意できるということで、お邪魔することになった。なったんだけど、


「サジュエルさんは分かるとして、そちらはどちら様?」

「はじめましてだねぇ。僕はナイジェル。神殿で大神官の地位を承っていて、めんど……んんっ。聖女のお守り役として今回同行するよ」


大神官って、かなり上の人だよね。見た目的に、サジュエルと同じくらいだけど。というか今、面倒ごとって言いかけませんでしたか。


「久しぶりだねぇ、リリアナちゃん。たまにはゼクト連れて遊びに来てくれてもいいんだよ?」

「ご遠慮します。ハゼルトと長らく冷戦状態の神殿に行く必要性を見出だせませんので」

「酷いなぁ。ねぇゼクト」

「そこのバカ置いてさっさと行くぞ」

「もぉ、二人して冷たい! そう思わないユラエス!!」

「こういうときだけ俺に振らないでくれ」


仲はいい……のか? 神殿とハゼルトの仲が悪いみたいなことリリアナが言ってたけど。


「ナイジェルはハゼルト侯爵がゼクトと一緒に拾ったんだ。だから今回も来てるんだよ」

「もぉ! リリアナちゃんがほしいって言うから毎回神殿の情報あげてるの僕だよ!?」

「別にナイジェル様がやらなくともあの子たちにやらせれば解決なので。あと、朝からうるさいです」


リリアナ、親しい相手だと遠慮なく言うよね。親しくなくても遠慮しないときあるけど。


「にしても、どうやって公爵領まで?」

「転移魔法です」


リリアナが指を鳴らすと景色が一変し、色とりどりの花が咲いていて、少し奥には一つの屋敷と人の影。……あの、事前告知がないのですがそれについては。


「相変わらずの魔法やなぁ。主はん」


橙色の髪にシトシンのような綺麗な目。主って、リリアナのことだよね。そしてなんだその関西弁のようで違いそうなやつは。私も関西弁よく分からないけどさ。


「ゼータ。みなさんの案内お願いします」

「承知。主はんはいつものとこかいな」

「えぇ。様子見てきます」


そう言ってリリアナだけどっかに行ってしまう。どこ行ったんだあの子は。自由すぎだろ。


「わざわざ遠いところからご苦労さん。うちはゼータ。ここの管理任されとる者や」

「主ってのはリリアナ嬢のことか?」

「せやせや。うちは魔塔にちょいと頼まれていろいろやってる身やから、ここではあん子が絶対なんよ」


魔塔が好き勝手できるワケではないもんな。次期皇后のリリアナに管轄を任せて、しっかりとできるかも見ているのだろう。






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